×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

04

「え、結局告白しなかったの!?」
「う、うるさいな! しょうがないだろっ」

 夜に霧谷が晩御飯を食べにうちに来たので、楽しくご飯を食べ終えた後に私の部屋でくつろぎついでに今日の出来事を聞くと、ただ買い物しただけで終わったらしい。なにやってんだよほんと。

「やっぱり初日は無理かー」
「だろ? さすがに色々抵抗あんだろ」
「でも、さぁ」

 ベッドの上でごろごろ転がりながら言葉を吐くと難しそうな表情で睨む霧谷。見る限り二人は両想いだと思うんだけどなー。

「こういうのはゆっくり時間を掛けてだなぁ」
「つまり、勇気が中々出ないと?」
「うるせぇ!」
「ぐっ!?」

 思ったことを口に出せば怒った霧谷が私の上にダイブしてきた。いきなりの衝撃と重さで内臓がズン、と重くなった。
ギシッとベッドが音を立てて軋む、壊れる。

「俺だって告白してーよ! けど実際にあんな可愛い瀬尾の前でいざ告白しようものなら……!」
「わ、わかったから、……! おりろ……!」

 半端なく重い。身長が無駄にデカイ霧谷は筋肉も付いているわけだから負担がヤバイ、もう潰れそうなんだけど。
力出る限り霧谷の背中をばしばし叩くと、枕の上に放ってあった携帯が鳴った。

「霧谷、携帯とって」
「ん。って瀬尾じゃん!」
「え?」

 携帯を受け取ればメールが来ていて、差出人は霧谷の想い人瀬尾さんだった。今日連絡先を交換したばかりなのに、随分と気が早い人だな。まあでも嫌ではない、寧ろ嬉しい。

「ほんとだ、メール来てる」
「なんて?」

 メールの中身は“さっそくメールしてみました。それで、良ければ今度の土曜にでも買い物に行かない? 参考書とかも紹介したいし!”と簡素な文と可愛らしい絵文字。出会った初日に遊びに誘うとか凄いな。

「デートに誘われた」
「え!? 見せろ!」
「あ、こら!」

 起き上がった幼馴染に携帯をもぎ取られて霧谷は「ハートの絵文字……」と嘆いてぱたりと倒れた。馬鹿だ。
もう一度メールの文面に目を通す。

「参考書かー、確かに教えて貰いたいかも」
「え、俺のお下がりとかは?」
「霧谷のは分かり難い」
「……」

 彼流の手作り参考書は高校生向けだし、ちょっと勉強嫌いな私にとっては非常に分かり難い。それにどうせなら新しいのが欲しい。私は二つ返事で“行きましょう!”と短い文を打って送り返す。
暫くして返事は、日時と時間指定、場所が書かれていたので再び了承メールを送ってメールは途絶える。

「好きな人とか聞いてきてあげるよ」
「えー……」
「女同士だと恋話とかが花が咲くし!」
「そういうもん?」
「そういうもん!」

 私の極少人数の友達も、大体今の話題は卒業式に向けての告白したい相手とか、ボタン貰いたい相手とか……あとちょっと受験の事が多い。あーもう三ヶ月くらいで受験かー、嫌だなー。

「霧谷ー……私、受かるかな?」
「……んでそんなネガティブなんだよ」

 本番が徐々に近付いてくるにつれて不安になってくる。テストも成績も霧谷のお陰で徐々に上がってはいるものの、本番でそれが発揮されるかは分からないし……。
不安で押し潰れそうになって枕に顔を埋めると、霧谷が起き上がって私の背中をマッサージするように押してくる。

「え」
「勉強で疲れてんだろ? マッサージしてやる」
「……ありがと」

 脱力してると、霧谷が的確に凝っているところを突いてきて痛い。けど気持ち良い。顔を横向きにして今後のことを考えていると、ふと彼が声を洩らした。

「薺なら大丈夫だよ。もっと自分に自信持て」
「……」
「俺も大好きなお前と一緒の高校行きたいしな。今のままいつも通り、きちんと勉強を続ければきっと受かるって」
「んー……」

 大好き、と言われて少しだけ嬉しくなった。私も霧谷と同じ高校行きたいし、あの可愛い制服着たい。受験生だった霧谷の勉強方法を伝授してもらい、そのやり方がいつの間にか身についていたし……大丈夫かな。

「安心しろ! きちんと家庭教師もしてやるから」
「うん。ありがとう」
「おう!」

 マッサージを終えられて、身体を起こされればそのままギュッと抱き締められて頭を撫でられる。霧谷がよく私にしてくれる、リラックス方法。これをやられると不思議と落ち着いて何でも出来るような気がしてくる。

「よしよし、あともう少しだ。気だけは抜くなよ?」
「頑張る、テストの順位も上がったし」
「そっか、なら自信持てるな」
「ん!」

 頑張れる気がした。明日の参考書選びも、元受験生の先輩のアドバイスを参考にして頑張ろう。
とりあえず明日何着ていこうかな、あんな美人さんと買い物出来るなんて楽しみだ。



≪ ≫

back