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02

 霧谷にご飯に誘われて私は急いで制服から私服に着替えると一階へ降りる。一階にはお母さんがいたはずだ。

「お母さん、霧谷の家で夕ご飯食べてくね!」
「行ってらっしゃい! あ、頼まれたクッキー焼いておいたから持って行ったら?」
「っとそうだった、じゃあ行ってくる!」
「はいはい気をつけてね」

 まあ気をつける程の距離もないけれど。家を出て数歩歩けばすぐ霧谷の家だし。昨日の夜に仕込んでおいた生地を昼間、お母さんに焼いてもらっていたら見事に美味しそうなクッキーがタッパーに入っていた。
 お菓子作りは好きだからよくこういったものを作って霧谷に渡したりしている。学校に持って行ったら先生とかうるさいし。いや、持っていったことないから分からないけれど。

「(まだ早いけど良いかな)」

 まあ良いやと思い、急いで靴を履いて私は家を後にした。



「こんばんは!」
「薺、いらっしゃい」

 インターフォンを鳴らして、霧谷が出てきたらまずは挨拶をする。その後家へあがるよう促されて上がるとリビングには霧谷のお母さんがいた。

「あらあらこんばんはー、ゆっくりしてってね」
「あ、おばさんこんばんは! これクッキー焼いてきたんですが」
「まあ有難う! 食後に頂きましょうね」
「飯までまだだから二階行こうぜ」
「うん」

 クッキーをおばさんに渡して私は霧谷の部屋へとお邪魔する。もう何年もの間遊びに来たりしているからこの家の間取りも手に取るように分かる。それは幼馴染の彼も同じだけど。

「何する? ゲーム?」
「やるやるー、戦闘系」
「はいはい」

 部屋に通されたら私は霧谷のベッドの近くに腰掛ける、ここ丁度良い高さだから寄りかかるのにはぴったりなのだ。
 一方の霧谷はテレビの隣にあるゲームボックスから据え置き機を取り出してゲームをセットする。
 コントローラーを渡されてゲームをログインしている間に私が口を開いた。

「で、デートの相手ってどんな子?」
「……今それ聞くか?」
「気になるんだもん」

 オープニングムービーを飛ばして、キャラクター選択。私はいつも通り比較的小柄なキャラクターを選択する。力は劣るけれどもスピード重視な私にとっては使いやすいキャラだ。霧谷は大柄で力が強くスピードが劣るキャラ、霧谷の場合は上手い具合に避けたりするからスピードとかはあまり必要ない、って言っていたのを思い出した。

「相変わらずスピード重視のキャラか」
「話そらすなー。あ、武器何にする?」
「俺剣で行くわ、薺は?」
「鉈」
「……マイナーだな」
「使いやすいよ、叩いたり斬ったりできる」

 このゲームは、霧谷に進められてやり始めたものだ。その時の私はこういうった戦闘系のゲームとかはやった事がなくて一から全て霧谷が教えてくれたなー、私が鉈に執着する理由も、霧谷が武器とか全然分からない私に勧めてくれた武器だから。それ以来何故だか鉈に愛着を持ってずっと戦闘系では鉈とか、それに類似するモノを選んでる。って、違う、話がズレた。

「で、どうなの?」
「うーん、どっちかっつーと大人しい系?」
「へえ」
「雰囲気は薺に似てるかもな」
「そうなの?」

 私と雰囲気が似てるのか、ますます気になる。コントローラーを操作して画面の中で動くポリゴンをぼんやり見つめながら返事をする。あ、宝箱発見。

「大人しいっつーのは、中身の方な。見た目は結構明るい系を彷彿とさせる」
「髪がショートみたいな?」
「いや、茶髪」
「茶髪!?」
「そう、ってこら叩くな」
 
 あれ、霧谷の学校って進学校だよね? そういう毛染めとかってありだったっけ? 霧谷が扱うキャラが主要キャラと話しているのを待っている間私は持っている鉈で霧谷の選んだポリゴンを叩いたりする。これが微妙に楽しい。
 私の反応に疑問を思ったのか、霧谷は不思議そうな顔をして、すぐに何かを察したのか慌てて言葉を放った。

「あ、違う違う。地毛なんだよ、ドイツとかそこらへんのクォーター」
「おぉ……凄い人好きになったね」
「だろ」

 物語が進んで戦闘画面に入ったので、私はボタンを操り敵を倒していく。やっぱり鉈は使いやすい。
 クォーター、……外国の血が四分の一入ってる。見てみたいなー。

「デート行った時写真撮ってきてね」
「……あー、頑張るよ」
「どうやって誘ったの?」
「いや、学校行事の買い出しを一緒に行くことになって……そのついでに映画とかどう? って感じ」
「うわ普通」

 もっと、あれだな……こう、……うーん、言葉に出来ないけど少女マンガみたいな展開とかかと思ったら普通だった。あ、敵倒した。

「お前なぁ、普通だからこそ良いんだろ」
「まあそーだね、お土産宜しく!」
「アホか」

 ちぇっ。なんか霧谷がムカついたので彼が倒そうとしている敵を真っ先に斬りつけて倒す。デートか、霧谷カッコイイのに恋愛関係とか聞いたこと無いからなんだか新鮮かも。
 あ、でも前に彼女が居たことは聞いたな。結局すぐ別れたらしい、さすがに深くは追求しないし向こうも話さなかったけど。

「二人共ー、ご飯よ!」
「お、ちょうど良いな」
「わーいご飯ご飯」

 セーブは霧谷に任せて、私はすぐに立ち上がり彼の部屋を出る。後ろで「置いてくな!」とか聞こえるけど気にしない。
 早く霧谷の彼女みたいなー、とうきうきしながら私は一階へと降りていく。



≪ ≫

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