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- ナノ -

08

「メリクリ。薺」
「……うん」

 模擬試験前日、お昼を食べ終えた時に、幼馴染の霧谷が家にやって来た。なんだか妙に距離感を作ってしまう、多分霧谷は昨日瀬尾さんの家に泊まった。確信は無いけれども。

「どうしたんだよ、寒いから早く入れてくれよ」
「普段ならずかずか入ってくるくせに」
「まぁ、一応な」
 
 意味が分からない。なんだか余所余所しい霧谷に疑問を抱きつつも部屋の中に入れる。お父さんもお母さんも今日はデートらしい、全くおあついことだ。
部屋に入って階段を上がるときに、ふと霧谷が声を発する。

「模擬、どうだ?」
「多分、大丈夫」

 前日という日は思っていた以上に緊張するものだ。けどちゃんと勉強もしたし、今日も彼に勉強を教えて貰うから分からない所はちゃんと聞こう。勉強机に座って、引き出しに入っている彼へのクリスマスプレゼントを出せば霧谷も鞄から何か丁寧にラッピングされた小包をこちらに差し出してきた。

「ほい、クリスマスプレゼント」
「え、私に?」
「当たり前だろ」

 霧谷は高校生になってアルバイトをするようになってから私にクリスマスプレゼントとやら誕生日プレゼントをくれる。中学生だった時はお互いの家に呼んだり呼ばれたりして馬鹿騒ぎするくらいだったけど。去年は何くれたんだっけ、ああキーホルダーとお菓子か。

「ありがと! 私もあるよ」

 両親から貰ったお小遣いを溜めて買ったのは、霧谷が前にふと欲しいとぼやいていたペンケース。学生のお小遣い事情ではこれくらいしか買えないんだよ。去年はあげられなかったから今年初めてだ。案の定霧谷は吃驚したが、すぐに表情を誇らばせて私に抱き付いた。

「さんきゅー! すっげー嬉しい!」
「うぐっ! く、苦しい!」

 思い切り抱き締められて死にそう。けど凄く喜んでくれてるから良しとしよう。思えばこういったプレゼントって始めて渡すかも知れない、バレンタインは基本手作りで渡してるし。
抱き締められたまま頭をぽんぽんと撫でてにこやかな笑顔を向ける。

「薺、模擬が終わって結果出たら出掛けようぜ。生き抜きも必要だろう」
「うん! 行く」

 ずっと勉強続きだったから嬉しい。と言ってもこの前瀬尾さんと出掛けたばっかりだけれども。笑顔で言えば彼も嬉しそうに頷く。
息抜きはここまで、これから勉強だ。霧谷も家庭教師用のノートと筆箱を取り出す、私も急いで教科書とノートを出し机の上に広げた。

「よし、じゃあ明日に備えて勉強すんぞ」
「はい先生!」

 今日の家庭教師霧谷先生はかなりスパルタだった。勉強が終わる頃には私の精神はかなり削がれていました。



 霧谷くんが帰ったあとに、アタシは脱ぎ捨ててあったパジャマを拾って丁寧に畳む。もう少し事後の余韻に浸っていたかったけどどうやら彼は幼馴染の薺ちゃんの家に家庭教師しに行く約束があると行って足早に帰ってしまった。

「(幼馴染、か)」

 ずっと恋心を抱いていて、想い人の幼馴染にも相談していた。そしたら報告メールが来る前に彼から告白されて無事に付き合うことになった。
そしてついに一線を越えたことが出来た、けど……やはりデートの時に楽しそうにあの子に電話する彼にモヤッとした。

「幼馴染なのに、なんでかな」

 話しを追及していけばどうやら二人の間には十五年もの縁があるらしい。そりゃ確かに一ヶ月も経っていない恋人よりも家族同様に過ごしていた幼馴染だから嬉しそうになるのも分かるけど、けど、やっぱり、悔しい。
 正直薺ちゃん自身は悪い子じゃないけど、二人の仲は少しだけ異常すぎると思う。

「(やだなぁ)」

 いっそ既成事実でも作ってしまえば良かったかも。今だ少しだけ痛む下半身をベッドに沈めて彼から貰ったクリスマスプレゼントに手を伸ばす。
プチネックレス、女の子ばかりの雑貨屋で顔を真っ赤にして買ったんだろうなぁと思わず苦笑してしまう。

「(今度またデートしよう)」

 その時にこれを付けていけば彼も喜んでくれるだろう。これからは、あの子以上に彼とたくさん思い出を作っていくんだ。多分あの子も、私と彼が付き合っていることを知っているからおのずと距離を置いてくれるだろう。
しばらくは家族と旅行へ行くから、次にデート出来るのは一月か、長いなぁ。



≪ ≫

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