×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

「なあ、誰が一番料理上手いんだ?」

 娯楽室に全員が集まり各々好きな事をやっていたときに、ふと平腹先輩が声を洩らした。

「……いきなりなんだ」
「だって気になんねぇ!? なあ名前!」
「え」
「普段飯作ってるところ見たことないもんなぁ!」
「うーん……」

 いきなり話を振られて驚きつつも、少し考える。確かに気にならないことはないな。みんなが料理するイメージあんまりないし。
ていうかヘタしたらみんなが作った料理食べたことがないよな。

「確かに、皆さんの料理食べた事無いから気にならないことはないです」
「だろだろ! なー今日全員任務ないし食べ比べしてみようぜ!」
「だりぃ」
「面白そうだね、どうせなら料理対決しようよ」
「本気で言っているのか? 佐疫」

 谷裂先輩が呆れたように声を出す。料理対決、面白そうかも。すると一気に他のゲームに夢中だった人たちも顔を上げてきた。

「いいね! おれ賛成!」
「オレもー! なー田噛もやろうぜ!」
「めんどくせぇ。俺はパス」
「そんな事言わないでよ田噛ー。……斬島はどうする?」
「別に構わないが」
「決まりだね。名前も参加するでしょ?」
「はい」

 特に予定もないし、こうしてみんなとわいわいするのも面白そう。ほぼ全員参加が決まったが、残りの二人はどうしようか。と考えていると平腹先輩が二人の元に駆け寄る。

「ほらほら、残りは田噛と谷裂だけだぞ!」
「パス」
「くだらない、俺もパスだ」
「えー、せっかくだからやりましょうよ。誰かが欠けると楽しくないですよ?」
「……」
「……」

 私がそう言うと、二人は一瞬だけ戸惑いの表情を見せた。あれ、これはもしかしてあと一歩かな? そう思い次の言葉を出そうとした瞬間、それは佐疫先輩によって遮られた。

「あ、じゃあ優勝者には名前一日プレゼントってのは?」
「はい?」
「男よりも、女の子の方がモチベーション上がるしね」
「は、え?」

 あれ、佐疫ってば何言ってるの? 呆然としつつ、急いで「何言って」と言おうとしたけど止めた。なんていうんだろうか、口元は笑ってるけど目が笑ってない。しかもなぜかとてつもなく黒いオーラを感じる。
それが危険だと察した私は静かに視線を逸らす。怖い。

「ごほーびある方がやる気出るもんな! それで行こうぜ!」

 いやいや! 待て待て、やはりおかしい! 私は椅子から跳ね上がるように立ち上がって声を荒げる。

「待ってそれおかし、むぐっ!?」
「ほら、田噛も谷裂もやるでしょ?」

 それと同時に、佐疫先輩がとてつもない速さで私の口元を塞いで声を被せてくる。剥がそうとしても剥がせない、とてつもなく力入ってる。
普段温厚な先輩からは考えられない行動に戸惑う、言葉を投げ掛けられた田噛先輩と谷裂先輩は呆れつつも声を発する。

「……ちっ。仕方ねぇな」
「どうせ言っても引かないのだろう、貴様達は」
「(おいマジかよ)」

 二人がそう言った瞬間に、口を開放された。ていうかもう呆れて声も出ないんだけど。

「……頑張るしかないな」
「おれも久々に頑張ろー!」

 え、なんでみんなやる気出してるの? 商品私でっせ? まさかストレス解消と称してサンドバックにされるの? あああああああああそれだけは嫌だ! ていうか本人の了承無しに勝手に話が進むっておかしいでしょ!?

「あの、やっぱり何か変じゃ、」
「名前、後輩だろ。ちったぁ先輩の言うこと聞けよ」

 田噛先輩が心底めんどくさそうに言ってきた。

「ほぼ同僚状態なのにこんな時だけ先輩の権力使うとか!」

 優勝商品にされ挙句逃げる道は優勝しかないとか。軽く詰んだ。



 商品についてはもうめんどくさくなったから諦めた。そして全員参加が決まった後はなにを作るかの会議中です。

「全員参加になったし何作るか!」
「簡単に作れるものが良いよね」
「……」
「名前、目が死んでるぞ」
「察してください斬島先輩」

 平腹先輩と佐疫先輩が嬉々として話し合っている間死んだ目をしているらしい私。そりゃなるわ、有無を言わさず優勝商品にされたし。
 なんやかんや田噛先輩も谷裂先輩もなぜかやる気はあるっぽいし。はああ……今さら逃げられないしなぁ。

「今さらうだうだ言ったって仕方ないだろ、諦めろ」
「ソーデスネ。谷裂先輩の鬼」
「殴るぞ」
「ほ、ほら名前が優勝すれば良いんだからね! 頑張ろ!」

 谷裂先輩の無慈悲な言葉の後に天使のような木舌先輩の有り難い言葉を頂いて心が少し晴れた。本当の天使は木舌先輩なんじゃないかな。
そうだ、私が優勝しちゃえば問題ないのか。

「玉子料理とかどうだ?」
「そうだね、じゃあ玉子料理を使って対決しようか」
「決まったか?」
「おう! 玉子使った料理な!」
「材料とかあんのかよ」
「大丈夫だよ、余ってるみたいだから処分予定のもの貰って来るよ」

 玉子料理に決まったらしい。玉子を使った料理なら何でもオッケーということで私は何を作ろうかなーと考える。
すると奥から木舌先輩が出てきた、使い捨て割り箸を握り締めている。

「じゃあ次は順番決めよー、はいこれ引いてってね」
「楽しみだなー! 何作ろうかなー!」
「料理対決なて始めてだからわくわくするね」
「何でやるって言っちまったんだろ……ダリィ」
「ったく……」
「玉子料理か……」
「よっと」

 各々文句を言いつつもクジを引いてい自分の番を確認した結果。一番目は平腹先輩、二番目は斬島先輩、三番目は佐疫先輩、四番目は田噛先輩、五番目は木舌先輩、六番目は谷裂先輩、最後は私となった。

「初っ端から平腹先輩とか嫌な予感しないんですけど」
「それを思ってるのは名前だけじゃないよ、安心して」

 佐疫先輩ほんと良い笑顔で毒吐くな。しかし私の言葉はどうやら他のみんなも思ってたらしく表情が一気に暗くなる。
一方の平腹先輩はあっけらかんとした表情で笑顔を見せた。

「えーそうかー? オレ初めて包丁握るけど大丈夫だろ!」
「おいテメェ今なんつった」

 その言葉に更に空気が重くなる。田噛先輩が睨んでも平腹先輩は全然応えてない。不安、本当にその言葉しか出てこない。

「今さらながら不安になってきたな……」

 斬島先輩がポツリと言葉を洩らした。なんか想像通りの結果になりそうで凄く怖い。