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「あんたなんて友達じゃない! 裏切り者!」

「―――っ」

 お腹に走る激痛。
彼女の言葉の節々に、悲しみと怒りが入り混じったものが見えた。なんで、こんなことするんだろう、私の中にはその疑問しかなかった。あんなに、仲が良かったのに。
                              ねえ、なんで?



「名前、起きろ」
「……」

 さっきの声とは打って変わり優しげな声が私の耳に響いた。軽く揺すられて私の意識は徐々に覚め始めて改めて彼の姿を目に入れる。

「斬島?」
「うなされていたぞ、どうしたんだ」

 うなされていた? ……そういえばうっすらと私の首元には汗を滲んでいるし、心なしか心臓があり得ないほど鳴り響いていた。心臓を落ち着かせるために深呼吸を数回繰り返して心配そうに覗く彼に笑いかける。

「大丈夫だよ、ちょっと夢見てた」
「夢?」
「生前の、私が生きてた頃の」

 彼の表情が心なしか歪んだ。あれ、知ってたっけ。

「知ってるぞ。なんとなくだが、覚えてる……」
「あぁ……そっか、私の死因調べるとき一緒にいたもんね。昔は鮮明だったのに今はうろ覚えってことは、それだけ長い時間経ったんだね」

 肋角さんに拾われて、その後自ら頼み込んで自分を死因を調べた。と言ってもどういう風に殺されたのか、ということしか分からなかったけれど。
その時閻魔庁に行かなくてはならなったので、その時一緒にいたのが斬島だったっけ。

「……」
「まさか友達に恋愛関係で殺されるとはねー、我ながら何やってんだか」
「名前」

 苦笑気味に笑うと、斬島が不安気に私の身体に腕を回してきた。いきなりの事に戸惑いつつも私は思っていた言葉を口にする。

「結局幸せになれたのかな」
「……気になるのか?」
「ちょっとだけ。あの後一回も会いに行ってないし」

 一度だけ、会いに行った。それからどれだけ経ってるんだろう、現世へ行ったら、あの人たちはまだ生きているのかな。
斬島に身体を預けて考えていると、彼の身体が離れて私の頬に手を添える。

「ん?」
「名前、今幸せか?」
「え」

 表情一つ変えてないが、何となく青色の瞳に不安が入り混じっている。私、無理して笑ってるように見えちゃったかな? そんなことないんだけど。頬に触れる彼の手に自身の手を重ね合わせて弧を描くように口唇を上げる。

「私、生前で恋愛なんてしたことなかったし、たくさんの友達に囲まれたこともなかったんだ。でも獄卒になってから斬島の事を好きになって両想いになって、たくさんの仲間に囲まれて私凄い幸せだよ」

 なんだかむず痒くなってふは、と破顔一笑すると斬島は静かに目を細めて私の唇に軽く触れるだけのキスをする。

「斬島の事、どんどん好きになってくよ」
「それは、俺も同じだ」
「ふふ、だからね、あの頃よりも全然幸せ」

 また、触れるだけのキスを数回繰り返して私は彼に抱きつく。暖かい熱を帯びた身体が心地良く、凄く安心する。

「……ならよかった」
「斬島も幸せ?」
「当たり前だろう」

 声だけしか聞こえないが彼が微笑んでいるのが分かる。それが更に嬉しくて、さっきよりも強い力で彼に抱きつく。今が幸せなら、それで良い。