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続はなりの続きみたいな

「名前、平腹からこんなのを貰った」
「本? 珍しいね、平腹先輩が本渡すなんて」

 短い距離なら屋敷を歩けるきりしまくんは、今日は男性獄卒がいる屋敷の散歩へ行っていたらしい。その間私は鉈を磨いていたり部屋の掃除をしていたのだけど、予定の時間よりも早く帰ってきたきりしまくんは、平腹先輩から貰った本に興味津々みたいだ。言葉を覚えるという名目できりしまくんの読書愛は変わっていない、最近は雑誌にも手を出しているくらいだし。

「雑誌みたいだから名前と読もうと思ってな。読まずに持ってきた」
「うんうん。良いよー」

 ベッドに座ったきりしまくんの隣に並ぶ。なに貰ってきたんだろう、ワクワクしながら彼が本を開く、しかし、ページを見た瞬間に私は噴き出した。

「っ!?」
「女性が喜ぶテクニック? なんだこれは」
「うああああああああ! きりしまくんこんなの読んじゃダメ!」

 最悪だ、あの馬鹿後で殺す。勢いで取り上げた雑誌の表紙を見れば、そりゃもう……いかにもアダルティな本だった。テクニックとか、なにやってんのほんとあの馬鹿、ああもう馬鹿だ馬鹿。一回じゃない、二回殺す。黄色い馬鹿殺す。
よく分かっていないきりしまくんは顔を真っ赤にしている私を呆然と見ている、これは丸めてゴミ箱にポイだ。

「きりしまくん、これは見たらいけない本だから、読むのやめよう」
「読んだらいけない本なんてあるのか?」
「いや、まあ……見るなら私がいない時にしてというか……」
「……?」

 きりしまくんも怪異とて男の子だから、多分そういったことに興味があるのかな。分からないけど。額を押さえてため息を零せば、きりしまくんはなにを思いついたのか悪戯っ子特有の笑顔を浮かべてゴミ箱からさっきの本を取り出す。

「名前。名前も女だろ?」
「……う、うん」
「じゃあ、この本の通りにやったら名前も気持ちよくなれるのか?」
「は!?」

 嬉々とした笑顔のきりしまくん。さっきの本には、まあアレやソレが事細かく書かれていたから多分きりしまくんはそれをやれば純粋に私が喜ぶと思っているのだろう。喜ぶかは分からないけど、とにかく健全なことではないことは言える。私もそういった経験はないから、よく分からないけど。
言葉が出なくて首をぶんぶん横に振れば、きりしまくんは小首を傾げて私の頬を両手で触れると自分の目線を合わせる。

「名前、ものは試しだ。やってみよう」
「え? っていやいやいや! ないないない! 大丈夫!」
「……まあ気になって仕方が無いからやるけどな」
「おい!」

 身体を持ち上げられてベッドへ寝かされたかと思えばきりしまくんは素早く私の上着のボタンを外して脱がせる。しかもすぐにズボンも脱がされた、声を出す暇も無い。どういうこと。

「き、きりしまくん!」
「……こうして改めてみると、女の身体って不思議だな」

 真面目に見つめられて顔に熱が溜まる。どうしよう、こうなったら止められないのは分かっているけど、もう諦めるしかないのか。



「名前、気持ち良いか?」
「んっ、……う」

 ベッドのシーツをきつく握り締める。後ろから圧し掛かるきりしまくんは、体温の無い指先で私の太ももをなぞるように滑らす。
身体は熱いのに、素肌に這う冷たい指先に意識が集中して喋れない。出てくるのは荒い息だけで呼吸と共に変な声が出る。自分が自分じゃないみたいだ。

「……どうだ?」
「あっ、う……」

 熱いし、頭の中がぐちゃぐちゃで何も考えられない。きりしまくんの顔が耳元まで近付いて、舐るような声色で囁かれる。やばい、耳元はダメだ、ぞくぞくと背中から電流が流れる。声が、抑えられない。

「名前? 痛いか?」
「ち、がう」
「じゃあ気持ち良いんだな」

 後ろから嬉しそうなきりしまくんの声、どうしてそうなるんだ。左手は太ももをなぞられてそれだけで私の感覚はおかしくなってきているのに。声を抑えるため唇を噛み締めている間にもきりしまくんは枕元に開いてあるページを捲って「次はコレか」と呟いて右手を私のシャツの中に忍ばせた。

「ん!?」
「ここも触れられると、良いって書いてある」
「きりしまく、んっ」
「……思っていた以上にやわらかいんだな」

 下着の上からきりしまくんの大きな手が形を変える。揉まれること事態はあまりくすぐったくないから仕方ないと思うけど、太ももをなぞられる手は止まらないので身体が震える。どうしよう、そう思っていた矢先、きりしまくんの手が下着の中に入ってきた。

「ぅあっ」
「え、い、痛かった?」

 違う、新たな刺激で上ずった声が出た。焦ったような声を出したきりしまくんを安心させるため首を横に振ればフッと息を吐く音が聞こえた。安心したのかな。
違う、今はそうじゃなくて、直に胸を撫でるように触れるから息が出来ない。

「うっ……!」
「ここが良いんだ。……じゃあもっとしないとな」
「や、やだ」

 多分きりしまくんに悪意は無い、純粋に私が喜ぶことをしてくれているのだろうけど私にとっては質問やら厚意やらも悪意にしか見えない。力が抜けて身体全体をベッドに沈めればきりしまくんの手も止んだ。

「名前?」
「も、無理です……!」
「嫌、だったか?」

 そんな悲しそうな声色しないでほしい。乱れる息を整えている間にきりしまくんは困ったように眉を下げて私の頭を撫でる。

「……そうじゃなくて」
「じゃあ、どうした?」
「……」

 恥ずかしさで顔に熱が溜まる。どうしよう、さっきも思ったけどきりしまくんは純粋に私が喜んでくれると思って行っていた行為なのだが、こちらとしては毎回こんな事をされては困る。けどそんなことを言ったら多分きりしまくん悲しそうな顔すると思うし、かと言って素直に感想言ったら行き成りさっきみたいに襲われそうだし。

「……、えっと」
「よく分からないが、名前が嫌だと思ったならもう止める。本も、必ずしも真実が書いてあるとは限らないしな」

 優しすぎるぞきりしまくん。申し訳が立たなくて身体を起こして彼を見れば優しそうに笑ってるだけだし。言おうと思っている言葉を頭で考えていると徐々に身体が再び熱くなって、ギュッとシーツを握り締める。

「あ、あのね……えっと」
「……?」
「す、凄く良かった、けど、…………恥ずかしい、です」

 そう言えばきりしまくんの目が見開かれた。ああ言わなければよかった、かも。恥ずかしくて爆発しそうだ。というかそろそろズボン吐きたい、寒い。

「じゃあ、また今度やろうな」
「……ん」

 嬉しそうに笑ったきりしまくんに頷くことしか出来ない。無垢は怖い、ほんとに怖い。

「平腹に行って他のも貰ってくるか」
「や、それは良い!」
「良いのか? 俺名前が喜んでくれるならなんでもやるぞ」
「大丈夫。大丈夫だから安心して」

 それだけは全力で阻止したい。あの人調子乗って変な本寄越しそうだし。私の必死の説得が通じたのか不服ながらもきりしまくんが「分かった」と頷く。良かった、とりあえずは安心できる。

「(あ、でもとりあえず平腹先輩は二回殺す)」

 明日任務あるからその時で良いか。

「名前、寝る前にもう一度やろうか?」
「全力で遠慮します」

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純粋すぎて本の情報を鵜呑みにしちゃうきりしまくん。きりしま?には性欲とかあるのでしょうか、拙宅ではあるという方向で行こうと思います。異論は認める。
きりしま?は純粋な言葉攻めですね、たまらない。

題名→魔女のおはなし様