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- ナノ -

「うっ、斬島」
「……」

 くすぐったいのかくすぐったくないのか良く分からない感覚。耳元では斬島の荒い息が聞こえてきて、足の間に座っている私の臀部には妙に硬いなにかが当たる。

「名前、直に触っても良いか?」
「え、本気?」
「……ダメか?」

 そんな切なげな声出されたら何も言えなくなる。顔を後ろに向けて斬島を見れば子犬みたいに眉を下げているし。ああくそ、可愛い、なんだこれ。黙って頷けば、斬島は無表情だけど顔をパッと明るくさせて私のワイシャツのボタンを外してその中に手を入れる。

「……やはり、名前の胸は良いな」

 真面目むっつりだと思っていた斬島、さらに奥深くへ進んでいったら胸フェチでした。いまだに理解出来ないしどういうことでしょうかね、ほんと。

*遡ること数日前

「ねむい」
「倒れないように気をつけろよ」

 朝、わざわざ迎えに来てくれた斬島に付いて行く。前日の徹夜のせいで私はかなりの寝不足、実はどうやって起きて着替えて部屋に出たのかすら微妙に覚えていない。けど仕事があるので真面目に任務はこなさないといけない、辛い。

「……きりしま、今日どこ」
「書類作成だけだ、すぐに終わるだろう」
「そ、っか」
「……名前、大丈夫か?」

 大丈夫、と言いたい所だけど正直ダメっぽい。頭が痛くてぐらぐらするし気持ち悪い、視界もぼんやりとしか映らないし、いつ倒れてもおかしくないか。徹夜は辛い、寝たい。

「あー……」
「おい、名前!」

 足を一歩前に出した瞬間、視界がグラついて私の身体から力が抜けた、間の抜けた声に驚いた斬島が振り返って私の方に手を差し出す。

「っ、……!」
「え……あれ」

 結果的に、斬島が支えてくれたのだけど、なにか違和感。ぐらぐら揺れる視界の中で違和感があるところへ辿れば、斬島の右手は私の肩に回されているけど、左手はなんと私の胸に触れていた。あー……触れてる、なんかもう眠くて思考回路がおかしくなっている。

「……」
「斬島?」
「……これ、柔らかいな」
「は?」

 真面目な声色で言い放った恋人に目を見張る、未だに手を離す気配が無いし。というか微妙に揉んでる、え。

「そ、そりゃあ……脂肪ですから」
「だがもっと柔らかいものだと思っていた」
「え、それは多分、下着付けてるから」

 先輩から貰ったサラシというものを一回付けてみたけどアレはダメだった。息苦しいし圧迫感が半端ない。だから普通のを付けているんだけど、え、なんか状況が読み込めない。斬島真剣な顔で私の胸に触れてる手見てるし。

「名前、仕事は俺一人で出来るから一旦寝てろ」
「いやさすがにそれは」

 仕事を押し付けるわけにはいかない。私も獄卒だし。公私混同とかではないと思うけど寝不足如きで甘えるわけには行かなないことくらいは私だって分かる。やんわりと断るけど、斬島はじっと私を見ているだけだ。

「良い。このままだと仕事にならんだろ」
「大丈夫、眠気覚めるもの食べるから」
「……お礼を要求したら寝てくれるか?」
「お礼?」

 なんだろう、見返りを斬島自ら要求するなんて珍しいな。ゆらゆら揺れる世界で斬島の青い瞳を見れば真剣そのもの。斬島自らの要求、料理作って欲しいとか家事をして欲しいとかかな。

「胸を触らせてくれ」
「……はい?」
「触りたいんだ」
「待って。一旦黙って」

 頭が痛い。寝不足でもあるけどこれまた別の意味で。案外斬島も寝不足なのではないだろうか。額に手を当てて暫しの沈黙。えーと、彼の要求は胸を触らせろ、まあ多分揉ませろみたいなニュアンスも含まれているだろう。なぜ? なぜ行き成りそんな事を? 前兆なんて無かった、というか今だにそういう事はしていないのに段階踏み外しすぎではないだろうか、思春期かは分からんがそういった欲求が急に出てきた? うん、ダメだ分からない、考えるのやめよう。まあ触るくらいなら大丈夫だろう、きっと母性に飢えているだけだ、私は聖母とでも思っておこう。鬼だけどな。

「まあ、斬島が望むなら……分かった。私も寝たいし」
「助かる。昼過ぎになったら部屋に行く」
「うん」

 助かるとはどういう意味だろうか。なんか彼が怖くて深く追求出来ない。見たことが無いほどうきうきしている斬島が怖い。いや、うん、まあ私は考えるのを止めた。とりあえず私は寝たい、凄く睡眠を欲する。

「じゃあ、お願いします」
「ああ」

 起きたのが昼くらいで、その後すぐに斬島が来てさっきの状態に至る。

「き、りしま……」
「変わった感触だな、飽きない」
「うっ」

 寝ている間に下着は取ってしまったから、直に触れられるとさすがにぞくぞくする。ワイシャツの中で斬島の手の形が変わるたび息が乱れる。というかいつから胸に目覚めたんだ斬島よ。

「……ここは、なんだ」
「ぁっ……っ」
「!」

 今まで胸と揉むだけだったんだけど、斬島がある疑問に気付いて指先が先端に触れた。と、同時にさっきまでとは全然違う何かがびりびりと走って声が洩れた。やばい、と思ったのも束の間、後ろを振り向けば斬島はポカンとした表情で私を見る。私もポカンとしたい。

「……えっと、」
「す、すまない。今のは」
「分かってる、分かってるから何も言わないで」

 耳から煙が出そうなくらい恥ずかしい。今だに手は私の胸に触れてるし、黙られるとこっちも困ってしまうんだけど、何か言って欲しい。
どうする事もできないし言葉も出ないからジッと身体を固めていれば、気まずそうな空気の中で斬島が言葉を発する。

「……もうやめておく」
「でも、」

 斬島が大丈夫なのだろうか、と言う意味合いでさっきから気になっていた彼の下腹部に少しだけを目をやれば、斬島は気まずそうに視線を逸らしながら「じき落ち着く」と言い放った。それでも、それでも良いと思うけど……私自身執拗に胸を攻められていたから妙に身体が熱いし、なんだか気分も悪くない、五月蝿いくらい鳴る心臓を鎮めようと深呼吸をする。

「名前?」
「あ、あの、えっと……わ、私、良いよ」
「……?」

 ダメだ理解出来てない。もっとちゃんと言わなくてはいけないのだろうか、顔に熱がたまって震える手で少しだけシャツを脱げば斬島は驚いたように目を見開く。
私が、私がちゃんと言わなくては……! 今まで恋愛に無関心だった斬島と、一線を越えるには私の勇気が必要だ。

「き、斬島と……、えっと、あの」
「……」
「う、えっとー……」
「名前」
「なに、んっ」

 恥ずかしくて中々言葉が出てこない。うっすらと涙が滲みそうになる中、名前を呼ばれたので顔を上げれば斬島が私の唇に自分の唇を押し当てた。一瞬の事で驚いて身体が固まる、と、同時に彼の顔が離れた。

「き、りしま?」
「名前を抱きたい」
「え!?」
「お前も同じ気持ちだろう?」
「……」

 臆することなく言い放ったので放心状態。私が出した勇気とは一体……。頭の中がぐちゃぐちゃで斬島を見ていると小首を傾げられる。恥ずかしげも無く言われるとなんだか毒気を抜かれてしまう、心臓が再び大きな音を立てる中、ゆっくりと頷けば斬島に抱き締められる。

「怖かったら、すぐに言え」
「う、ん」

 声は真っ直ぐなのに、シャツを脱がす手は妙に震えている、多分、斬島も緊張している。私も緊張しているけど。シャツを脱がされた時、ふっと斬島が私の胸を見つめる。

「斬島?」
「……もう少しだけ、触らせてくれ」
「え、ちょ!?」

 コイツ完全に胸フェチだ、有無を言わさずに斬島の手が私の胸に触れた。

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おっぱい星人という意見をアンケートで頂いたので、胸に執着する斬島を。
胸も良いですよね、太ももと同じくらい好きです。