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- ナノ -

「名前!」
「〜っ、」

 木舌先輩の声を聞いたと同時に、米神に走る鈍痛。うわんと音が全方向から鳴り響いて、気がついたら目の前は真っ暗だった。

「……う」
「あ。起きた?」

 微かに揺れる景色、目の焦点を合わせようと何度か瞬きをすると、そこには心配そうに覗き込む木舌先輩の顔があった。
頭の下に感じる違和感、もしかして膝枕されてる? ゆらゆらと微妙に揺れる視界の中で掠りだしながら言葉を吐いた。

「あれ、自分……」
「このままでいいよ。まだしんどいでしょ」
「すみま、せん」 
「名前、不意打ち突かれてやられちゃったんだよ」
「あー……そうだったんですか」

 ずきずき痛む米神に手を添えつつ、木舌先輩の言葉に苦笑する。久々にやらかしたなぁ、怪異全部倒しきったから大丈夫だと思ってたんだけど。私の気持ちを察したのか木舌先輩はにっこりと笑った。

「向こうもほぼ瀕死状態だったから首もげることはなかったよ」
「そ、それは良かったです」

 死んでも再生すれば良いだけの話だけど、再生するまで時間が掛かるから面倒なんだよね。いや、でも首がもげるのは嫌だなぁ、木舌先輩みたいに目玉とか無くなれば探せば良い話だけど首もげたら動けないし。

「名前の頭の痛み、落ち着いたら帰ろうか」
「すみません、というか床に転がしといて良かったのに」
「だってこっちの方が顔良く見えるから」

 あっけらかんとして私の額に手を置く木舌先輩。確かにこうすると顔がよく見える、が、こう長い間気絶していた間抜な顔を見られるというのはなんだかあまり宜しくない気がする。

「うぅ、なんか恥ずかしいです」
「恥ずかしがることないのに」
「ていうか、重くないですか? 先輩だって疲れてるのに……」
「おれは平気。こうして名前の顔見てるだけで疲れ吹き飛ぶし」

 恥ずかしげもなく言う先輩の顔を見れなくなって、顔を逸らす。それに気付いた先輩は「名前か〜わい」なんて言いながら頬撫でてくるし。調子が狂うなぁ。

「お酒飲みたいな〜、任務の後の一杯って格別だよね」
「先輩いつもそればっかですね」

 館に戻れば大抵酒瓶抱えてるもんね、木舌先輩。のん兵衛以上に呑むし、この前カキ氷にビールぶっかけてて佐疫先輩に止められてたし。呆れつつもいつもの調子の先輩に笑いかけると先輩は私の額を撫でながら話を続ける。

「名前も一緒に飲む?」
「飲みたいのは山々ですが、自分恐ろしいほど酒弱いので」
「知ってるよー。この前泣き出したと思ったら甘えて来て寝ちゃったし」
「……」
 
 にこりと笑う先輩から吐き出された言葉に思わず顔が赤くなる。え、全然そんな記憶無いんだけど。確か起きたら自室にいたし、元々酒が弱いのは知っていたけどそんな迷惑をかけていたのか、恥ずかしい、恥ずかしすぎる。

「名前ってば、あの時おれの腰に抱き付いてきたと思ったらそのまま膝の上で寝ちゃったんだよー。まさか酔うとあんなになるとは思わなかったよ」
「自分もです……普段酔わないようにお酒の量は気をつけていたんですが……」
「羽目外しすぎちゃったかな?」

 お酒は怖い、改めてそう思った。これ以上先輩に迷惑掛けないようにしなきゃな。

「お酒は、暫く遠慮しとこうかと……」
「気にしないで良いよ、その時はおれがまたこうして膝枕してあげるから」

 ああこれは呑み決定だな。先輩の膝の上で私は苦笑した。後から分かったのだけど、私がそういう甘えた行為をするのは木舌先輩だけらしい。さらに恥ずかしくなって私は暫くお酒を飲まなかった。結局飲まされてたけど。