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色々捏造あり

 廃校で探索をしていたら、通りがかった斬島先輩を模倣して現れた鏡の怪異、名はきりしま?(適当に佐疫先輩が名付けてた)。喋らないし、元は鏡の中の怪異だから多分妖気が無いところだと鏡が傍にないと歩けないと思うけど、妙に惹かれてしまって肋角さんに頼み込んで鏡と一緒に持ち帰らせてもらった。周りからは「大丈夫?」なんて心配されたけど多分大丈夫です、と答えた。ついでに名前も元の斬島先輩を呼び捨てにしているみたいなので、自分で考えて鏡の怪異はきりしまくんと呼ぶ事にした。

「はい着いた。ここが、きりしまくんの部屋だよ」

 鏡を置いて、後ろを向けばきょろきょろと部屋中を見渡すきりしまくん。身体に触れたら体温は無いけど人肌の感触っぽいのはある。割れた鏡を一からつなぎ合わせたから少し亀裂が顔にも入ってるけど壊れることはないだろう。

「部屋からは出ないでね。他の人たち吃驚しちゃうと思うし、ここ女子寮だから」

 こくり。理解したのかきりしまくんは頷いた。コミュニケーションが取れたことが嬉しくて笑みを浮かべれば、きりしまくんは不思議そうな顔をして首を傾げる。元の本人よりも表情は結構豊かっぽい。

「うん。可能ならば先輩達とか連れて来るからね」

 また頷いた。うーん、喋れないのは少しキツいなぁ。まあ良いか。その時はまた考えれば良い事だし。
根気良く話しかけていればいつか喋ってくれそうだし、頑張ろう。

「自分も今日はここでご飯食べるから一緒に居ようか」

 事情を聞いた先輩の一人からおにぎりを持ってきてもらっていたので、それをテーブルに置く。ミニテーブルの近くに座れば、ご飯に興味があるのかきりしまくんも私の隣に並んで座る。あれ、きりしまくんってご飯食べるのかな。でも確か斬島先輩がりんごを与えたのも怪異だったよね、……うーん。おにぎりを一つ取って、きりしまくんに「食べてみる?」とだけ聞けば私とおにぎりを交互に見つめた後におにぎりを私の手からパクリと一口食べる。

「!」
「……美味しい?」

 吃驚してる、美味しいか聞いてみればきりしまくんは大きくこっくり頷いた。あれ、可愛いかもなんか。食べて良いよ、と言っておにぎりを差し出せば、ゆるゆると首を横に振ってやんわりと断る。

「良いの?」

 こくり。また頷いた。もしかして遠慮してるのかな? 

「自分なら大丈夫だよ、ご飯食べなくても平気だし」

 今度は結構早い勢いで首を横に振った。まあ、無理強いするのも良くないし仕方ないかと思って私は手に持っているおにぎりに齧りついて早めに咀嚼して食べ終える。次はお風呂だ、急いで立ち上がってお風呂の準備をする。その様子を見ていたきりしまくんを見て、私は言葉を放つ。

「きりしまくん、私お風呂に入ってくるから待っててね」

 着替えを持って言えば、またこくりを頷かれる。急いで入らなきゃと思って私は簡易浴室に駆け込んで手早く身体や頭を洗って身体を洗い流す。寝るときはどうするんだろう、というかきりしまくんって眠るって言う概念あるのかな。身体を拭いて寝巻きに着替えて部屋に行けばきちんと正座をして壁を見つめるきりしまくん。うん、可愛い、間違いない。

「きりしまくん、暇だったらそこにある本とか読んでて良いんだよ」

 隣に座って本棚を指差せば、きりしまくんは数秒見つめた後にまたこっくりと頷いた。ほんとに分かっているのか不安だが大丈夫だろう。時計を見ればそろそろ良い時間帯だった、あー寝なきゃ、そうだ彼はどうするのだろう。

「そろそろ寝ようと思うけど……えっと、きりしまくんって寝るの?」

 そう聞くときりしまくんは暫く考えた後にふるふると首を横に振った。あ、やっぱり眠るという概念は無いのか。どうしよう、私だけ寝るっていうのはなんだか気が引けるけどさすがに寝ないわけにはいかないしなぁ。悶々と考えているととんとんと肩を叩かれて顔を上げればきりしまくんは鏡の中に入り込んだ。

「……あ、……鏡の世界で時間潰し出来る、とか?」

 廃校のときそうだったけど、場所を移動しても出来るのかな。聞いてみれば鏡の中のきりしまくんはこっくりと頷いて笑った。あ、笑顔カッコイイ。けれど時間潰しが出来るなら大丈夫だ、安心して寝れる。

「うんそっか。じゃあ……おやすみ」

 そう言えば鏡の向こうからニュッと手を出して頭を撫でられた。元々人懐っこい感じというか、悪戯好きっぽいからスキンシップとか気軽なのかな。鏡の奥に消えたきりしまくんを見届けて私もベッドに入り込んで眠りに付く。

 ゆさゆさと身体を揺すられて、思わずんん、なんて情けない声が洩れた。目覚ましはまだ鳴ってないし、起きる時間帯ではないような気がするけど。

「んー……わっ!?」

 相も変わらず身体をゆさゆさと揺すられるので痺れを切らして目をうっすら開ければ、顔面にヒビが入った斬島先輩が居て変な声が出た、と思ったけどその姿はきりしまくんであって、ホッとする。あれ、鏡の世界に行ったんじゃなかったっけ? どうしたんだろうと思って身体を起こせば外は明るかった。

「あれ、朝?」

 こくり。頷かれた、時計を見ればもう起きる時間帯だった、目覚まし壊れちゃったのかな、ん? という事は目覚ましが壊れていたのに気付いたきりしまくんがわざわざ鏡の世界から出てきて私を起こしに来てくれたってこと? 

「起こしてくれたの?」

 こくり。ニッときりしまくんは笑って頷く。え、なにこの子優しすぎる。本当に怪異なのかな。

「えっと、ありがとう」

 ポツリと言葉を吐いてお礼を言えば、更に嬉しそうに口角を上げて私の頭を撫でる。頭撫でるの好きなのかな、きりしまくん。
私も笑い返すとさらにグシャグシャと髪の毛を乱すように頭を撫でられる、ちょ、寝起きでぐしゃぐしゃだけど止めてくれ。

「き、きりしまくんストップ! 髪の毛ぐしゃぐしゃ!」
「……ふっ」
「!?」

 いきなり低い声が響いて、私は思わず彼を見れば、当の本人はきょとんとした顔で私を見る。え、今喋った? というか声を発したよね……? けど本人は違和感なく立ち上がってミニテーブルの傍に正座して座る。私の、気のせいだったのかな? 悶々ときりしまくんを見ていても答えは返ってこなかった。


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きりしま? 夢。話しかけ続ければしゃべるかも、という本家様のブログを見て思い浮かんだネタ。続きます。