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ちょっと異端な恋愛。

 マキさんが好きだ。獄卒の俺が亡者に恋愛感情を抱いた時点でちゃんちゃらおかしい話だけれどもバレたら面倒だからこの想いはずっと閉鎖して幽閉してきた。嘘をつくのは生前でも苦手ではなかったらしく想いを隠すのは苦ではなかった。時が流れて、マキさんは罪を償い終えたらしく転生するらしい。

「ナマエ、明日あの亡者転生するんでしょう?」
「らしいな」
「……お別れするの?」

 食堂で、明日お別れするマキさんのためになにか餞別でも上げようと思いお菓子を作っている最中に、いつの間にかやって来た佐疫が俺に向かって問い掛けた。後ろから被ってきた佐疫の声に驚きつつも手を止める間もなく俺は言葉を放つ。

「もちろん。餞別渡すつもりだし」
「もっと荒れるかと思ったけど結構冷静だね」
「俺はいつだって冷静沈着な男だよ」

 佐疫は唯一俺がマキさんに抱いている感情を知っている、彼は口が堅いから俺も信頼して話した記憶がある。その時は凄く難しい表情をして「応援は出来ないけど、頑張ってね」とだけ言われたっけ俺も自らマキさんに言うつもりはさらさらねぇしただの暇つぶし程度のつもりだった。

「けど、寂しいな」
「好きになるって面倒だね」

 クッキー生地に色々なものを入れて丁寧に混ぜていく。マキさん喜んでくれると良いなー。佐疫は俺の言葉に苦笑気味に言葉を放って「明日は呑みに行こう」とだけ言って自室へ戻っていった。多分佐疫なりに気を遣ってくれたのだろう、有り難いのか余計な気遣いなのか分からないけど嬉しくないわけではない。

「……お別れ、か」

 本当に想いも告げずにお別れをしてしまって良いのだろうか。ああ恋っつーのはとても面倒だ。明日はきちんとお別れできるかな、多分、出来ないだろう、いやするわけがない。転生する前に、転生部屋から出れば亡者は転生出来ないらしいめんどくさいシステムだなぁ。

翌日

「マキさん、はい」
「……?」
「餞別。食べてみて」

 時間を貰って、俺は転生するマキさんに会いに行く事が出来た。相変わらず可愛らしい人だ、俺を見た瞬間に酷く悲しそうな表情を見せたのには少しだけ心が痛んだけれど。袋につめたクッキーを渡せば、マキさんは不思議そうな顔をして袋を開ける。中に入ったものを見た瞬間、マキさんは顔を綻ばせて一枚拾い上げる。

「これ、ナマエくんが作ったの?」
「そーだよ。俺結構料理とか出来るんだぜ」
「……ありがとう」

 食べて、と目線で訴えかければマキさんは一口クッキーを齧る。

「……美味しい」
「だろ?」
「有難うね、ナマエくん。最後に、会えてよかった」
「……最後? これからずっと会えるじゃん」
「え?」

 悲しくなること言わないでよマキさん、お別れなんてするわけないじゃん。歪に歪んだ俺の口元と目に気付いたのかマキさんは少しだけ怯えたような表情を見せた。

「どういうこと?」
「……違うんだ」
「ナマエ、く……ん」

 違うよマキさん。そう呟けばマキさんは目を見開いて一歩後ずさる。数秒した後にマキさんは「あれ、」とだけ呟いて袋に入ったクッキーを床にバラバラと落とす、効いた。にんまりと笑ったままマキさんを見ていればマキさんは瞼を数回瞬きさせてぐらりと身体を地面へと放り投げる。

「っと、」

 身体を地面に叩きつける前に俺は彼女の身体を支えて自らの腕に抱く。初めて触れる好きな人の感触に妙な昂ぶりを覚えた。無防備な寝顔を晒してマキさんは寝息を立てる、睡眠薬ってこんなにも早く効くものなのか、いや鬼専用のものを買ったから人間には効きが早いのかも知れないな。床に落ちたクッキーを、マキさんを支えながら拾い上げて俺は彼女を抱き上げる。

「ふはっ……やった、やったぞ」

 ゆるゆると口角が釣りあがって思わず声に出た。お別れなんてするわけがない、彼女はこれからずっと俺の傍にいるんだ。そうすれば閉鎖していた恋心を彼女にさらけ出す事が出来るし大好きなマキさんともずっとずっと一緒にいられる。こんなに幸せなことがあって良いのだろうか。
幸せすぎる、腕の中で眠り続ける彼女を、自室まで運んで行く。幸いにも廊下では誰ともすれ違わなかったし見つかることもなかった。これでマキさんは転生出来なくなる、俺が予定よりも早い時間に転生したと言えば向こうも納得するだろう。

「マキさん、これからずっと一緒にいられるんだ」

 部屋へ連れて帰って、自室の空き部屋を改造して作り上げた隠し部屋のベッドにマキさんを寝かせる。空き部屋には扉を杭で打ち付けその上から壁紙を貼ったので廊下からは絶対にそこに部屋があるとは分からない。まさか一人でトレーニングするために作っておいた部屋がこんな形で役立つとは思わなかった。もらい物のベッドにマキさんを寝かせるのは少し不服だが仕方がない、この日のために用意しておいた足枷で彼女の足。嵌めてベッドの足に繋いでおく。鎖はある程度の長さはあるけど、この部屋から出ることは出来ない。

「……」

 強力な睡眠薬だから、きっとしばらくは目が覚めないだろう。眠っている想い人と、その想い人が俺の部屋に居て、足枷に繋がれている。これほど興奮するものがあるだろうか。急に気持ちが昂ぶり下腹部に熱が溜まってきた。すでに硬くなりつつあるそれ、俺はゴクリと生唾を飲んでそっと彼女の頬に触れる。

「っ、ごめん」

 健康的な肌色、彼女の首元に顔をうずめて思い切り息を吸えばむせそうなほど甘ったるい女の匂い、呼吸が荒くなって熱が溜まる、どうすることもできない、何度もごめんと聞こえるはずもない言葉を吐き続けて俺はマキさんの柔らかい唇に自分の唇を押し当てた。

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ヤンデレアラタっち。監禁。このあとたぶんすいkうわなにするやめ(
たぶん続く。