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 ちょっと思う、佐疫先輩の髪って凄くサラサラだよね。女子の先輩たちの髪の毛は触ってみたけどがあるけど、佐疫先輩とかの髪は触ったことがない。うーん、ちょっと触ってみたいかも。

「佐疫先輩、髪の毛触らせてください」

 思い立ったら行動してみよう。唐突に言葉を放てば、脱帽している佐疫先輩はきょとんとしつつもすぐに笑顔を見せて「良いよ」と言ってくれた。
やった、内心でガッツポーズをしておそるおそる彼の茶色の髪に触れてみる、想像以上にサラサラしていて思わず「おぉ」なんて声が出た。凄い、さらっさらだ、引っ掛かることなく指が通っていく。

「佐疫先輩髪の毛サラサラですね!」
「そうかなぁ? 名前の髪もさらさらだと思うけど」
「自分の髪の毛触っててもつまらないじゃないですか、一回佐疫先輩の髪触ってみたかったんですよ!」
「んお? お前ら何してんの」

 ご機嫌気味に髪の毛を堪能していると、佐疫先輩も私の髪の毛を手にとって指を通していく。お互いの髪の毛を触りっこしている時に、平腹先輩がやって来て目を丸くする。そういえば平腹先輩の髪の毛はふわふわっぽいなー、ちょっと触りたいかも。

「平腹先輩、髪の毛触っても良いですか?」
「おう良いぜ!」

 にぱっと笑顔で答えられたので、私は先ほど同じように平腹先輩の髪の毛に指を通してみる。

「わ、ふわふわ!」

 短く切り上げられている平腹先輩の髪は、思っていた以上にふわふわで佐疫先輩のとはまた違う触り心地だ。
これはいわゆる猫っ毛だ、頬埋めたいくらいふわふわしている。触り心地がよくてずっと平腹先輩の髪の毛を撫でていると平腹先輩が軽く笑った。

「おい名前、くすぐってぇよ」
「ああすみません、けど平腹先輩髪の毛ふわふわですね。佐疫先輩はさらさらですけど」
「髪質って色んなものがあるよね」
「オレは名前の髪が好きだな! すっげー良い匂いするし!」
「ふふ、確かに」
「あ、ありがとうございます」

 褒められて思わず照れてしまう。自分も一応女だから髪の毛とかには結構気を使っているからそう言われると素直に嬉しい。この前先輩にお勧めされたシャンプーとか使ってるから良い匂いなのは間違いないだろう。

「けど、」
「ん?」
「ふぉ?」

 さらさらもふわふわも触り心地は良いけれど、何となく物足りない。よく分からないけれどどっかで何かが引っ掛かる。私がぽつりと呟いたことに疑問を抱いた二人は不思議そうな顔をして私を見つめて首を傾げる。

「なにか、物足りないんですよね」
「なにか? 髪の毛で物足りないってどういうこと?」
「いやよく分からないんですけど……うーん」
「どうしたんだよ」

 なんだろう、もやもやもやもや。必死に頭を探って考え込む。
と同時に、扉が開く音がして一斉に振り向けば不機嫌そうな表情をしている私の好きな人が顔を見せた。本人は私を見た瞬間に、見つけた、とでも言いたそうな顔をして唇を開く。

「……ここにいたのか、名前」
「谷裂」
「よ!」

 こんなところまで来てどうしたんだろう。佐疫先輩や平腹先輩が挨拶をしているのを見ていると、佐疫先輩がこちらを見てにっこり笑顔を見せた。

「じゃあ俺ら、行くね」
「え、行っちゃうんですか?」
「お二人でごゆっくり。行こう平腹」
「えー、けどよぉ」
「良いから」

 恋人の谷裂、よくよく見れば彼も休日だからか私服姿で帽子を被っていない。谷裂の元に駆け寄ろうとした時に佐疫先輩が気を使ってくれたのか平腹先輩を引きずって部屋を後にしてしまった。
その二人を見た谷裂は呆れたように息を吐いて呟く。

「なんなんだあいつ等」
「ああああああああああああああ!」
「!?」

 彼の脱帽した頭を見た瞬間に、私は思わず大きな声を出してしまった。その声に驚いた谷裂はやはり唐突に叫びだした私を見た瞬間に肩を跳ねさせる。驚かせてごめん谷裂。

「い、いきなり大声を出すな!」
「ごめん! 谷裂抱っこして!」
「は?」

 谷裂の方に駆け寄って、思った言葉をまとめずに言葉を吐き出せば谷裂は心底驚いた表情で私を見下ろしてきた。さすがに私もちょっと頭おかしい発言したかもと後悔したけどまあいいかと思って彼の服の袖をつかむ。抱っこしてもらわなきゃ頭に手が届かないし。

「なにを言っているんだ」
「良いから良いから! お願いっ」

 ちょっとあざとく上目使い気味で声を甘ったるくしてみれば谷裂は複雑そうな表情をしつつも私の脇腹に手を通して持ち上げる、両脇でもよかったけどこうして貰った方が個人的にはありがたい。というか軽々と持ち上げるってのもすごいな。おっとそうじゃなかった、私はさっきのもやもやした原因を突き止めるため、谷裂の頭に触れる。野球少年のような坊主頭に触れた瞬間もやもやが晴れた。

「これだ」
「なんなんだ一体」
「やっぱ私谷裂の坊主頭すごい好き!」
「なっ」

 何気ない一言を言ったのだけれど、それはそういう言葉慣れをしていない谷裂には十分すぎるものだったらしく見る見るうちに顔を赤くして行った。一瞬だけ脇腹の手が緩められたけど、すぐにまた力が篭った。私は変わらずに谷裂の坊主頭を堪能する。じょりじょり気持ち良い、ふわふわやさらさらよりもこっちの方が何十倍も好きだ。

「ごめんね谷裂、浮気して」
「……なんだと?」

 ピシッと空気がかたまった、それと同時に脇腹の骨が砕かれんばかりに力を入れられた。あ、やばい確かに今のは誤解されるような言葉だった、慌てて手を振って早口で言葉を紡ぐ。

「いやいや、そういう浮気じゃなくて、さらさらやふわふわの髪よりも谷裂の坊主頭の方が落ち着くってことに気付いたよ」
「意味が分からん」

 誤解が解けたらしい。呆れ気味にため息を零して谷裂は言葉を吐き捨てた。多分今の彼から見たら私は結構な変人だと思う、我ながら何やってんだか。

「結局私は谷裂一筋ってことです」
「っ」
「おっと」

 頭をぽんぽんして言ってみたら、恥ずかしさがこみ上げたのか谷裂がパッと手を離して私は地面に足を付けた。顔を見上げれば耳から煙が出そうなほど真っ赤な谷裂、なんか悪い事したような気がして申し訳ないんだけど。

「な、なにを言っている!」
「え、谷裂一筋……」
「くそっ、行くぞ」

 顔をプイッと背けて谷裂は私の手を取って部屋を後にする。身長差があるから歩幅もだいぶ違うけど、長い付き合いの中で谷裂は私の歩幅に自然に合わせてくれるようになった、これはいつ見ても嬉しい。前は付いて行くのに必死で小走りでいたら「目障りだ」と言われて向こうが合わせる様になったんだっけ。

「谷裂は、優しいよね」

 後ろから言葉を投げ掛ければ強く手を握られる。耳が真っ赤だ。思わず笑みが零れた。

「勘違いするな。お前のためではない、俺がやりたいからやっているんだ」
「後で頭触らせてね」
「……」

 無言は肯定。嬉しくなって私は一人で口角を上げた。

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アンケネタで、佐疫と平腹の髪に浮気して結局谷裂の坊主頭に落ち着くというネタを見て笑ってしまいました。考えた事もないようなネタだったので楽しかったです。
坊主頭良いですよね、あのじょりじょり感好きです。