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 平腹先輩は隙あれば私に噛み付いてくる。いきなり抱き付いてきたと思ったら首筋に噛み付いてきたり手を取ったかと思えば手首に噛み付いてきたり……甘噛み程度だから別に構わないけど、ギザッ歯の彼の噛みはなんか、こう、びりっとする。痛みが殆ど機能してないからこれが痛い。という感覚なのかは分からないけれど。彼の部屋で任務の打ち合わせをしている時も、やはり彼はいつもの癖が出た。

「名前〜」
「っ」

 ビリッと少しだけ皮膚を裂かれたような感覚。後ろに彼が圧し掛かってきたてまた首筋に噛み付かれる。跡になる。そんな事はお構いなしに、彼はザラついた舌で軽く首筋に触れながら歯を立てる。

「平腹先輩……痛いんですけど」
「お前痛覚ねーじゃん。…なんか、名前見ると噛みたくなるんだよな」
「まあ、無いですけど……」
「なんでだろうな?」
「いや知らないですし」

 噛み癖あるなら他の人にも噛み付いているのか、だったら私よりもそっちの人をたくさん噛み噛みしていれば良いじゃないですか。
 未だに首筋をがじがじしてくる平腹先輩の頭を叩いた。

「いてっ」
「噛み過ぎです。自分の手とか噛んでて下さい」
「名前を噛む」
「噛み合ってないです」
「んぉ?」
「会話が、です」

 会話が噛み合ってない。思うがままに行動している人はこういうとき厄介だ。今度は手首に噛み付いてきた猛犬平腹からどう逃げようか考えている時に、ふと任務が無い先輩達のことを思い出した。

「平腹先輩、今日斬島先輩達休みですよ」
「おう、知ってるぞ」
「そっちに行って存分噛んで来たらどうですか」

 なんか斬島先輩を生贄に差し出すようで悪いけど、私の身体結構噛み跡が残ってるからそろそろ皮膚裂かれるかも知れない。女子寮の子達にも本気で心配されたし。
そんな事を言ったら、平腹先輩はきょとんとした顔で言葉を放つ。

「オレ別に誰でも噛み付きたいわけじゃねーんだけど」
「え」
「名前にしか噛みつかねーよ」
「ええ?!」

 衝撃発言に驚愕すると、平腹先輩が私の足の間に割り込んできて覆い被さってきた。
言葉が出る前に鎖骨を甘噛みされる。

「名前ってさ、甘い良い匂いがするから噛みつきたくなんだよ」
「え、あの」
「実際噛んだら甘い感じするし」
「ちょ、平腹先輩?」
「どうせなら、こっちも噛みたい」
「ひゃっ!?」

 言葉の意味が理解出来ないのにたくさん投げ掛けれて、必死に頭で理解しようとしている時に、平腹先輩は私の足元に顔を近づけて太ももに噛み付いてきた。首筋とか手首よりも更に弱い甘噛みで情けない声が零れ出た。

「……やっぱり甘いな!」
「ちょ、先輩っ……!」
「柔らかいし」
「んっ……、」

 太もも、太ももの付け根をやわやわと噛まれて変な熱が身体の中心に溜まる。なぜだか呼吸が乱れて先輩の頭を必死に押しのければ、諦めたのか顔を近付けてジッと見つめられる。

「……?」
「オレ、名前好きだから噛んでるのかもな〜」
「は?」
「だって他の女見てもこんな風になんねぇし」

 驚いた。平腹先輩にも好きとかそういう感情があるのか。未だにじっと見つめられて、それが耐え切れなくなって視線を逸らせば耳たぶに噛み付かれる。

「うっ」
「なー、名前はオレのこと好き?」
「……っ、えっと」

 耳元で熱っぽい声で囁かれておかしくなりそう。好きか嫌いかと聞かれたら、好き、それが恋愛感情か仲間意識かで言われたら分からない。
けど、いきなり噛み付かれたときもそうだったけど悪い気はしなかった、さらに私にしかこんな事をしないと言われた時は正直嬉しかった。

「どうなの?」
「……す、好き、です?」

 疑問系になってしまったけど、平腹先輩とキスしろと言われたら嫌じゃないから多分これは好きなんだと思う。というかそれ以外にも心当たりがあるから絶対に平腹先輩に恋愛感情抱いている。
どこかで平腹先輩はそういった縁がなさそうだから諦めていたのかもしれない。
 そう言ったあとに、平腹先輩は二パッと笑った。

「そっか! じゃあ、こっちも良いよな」
「え、なにがっ」

 カプリと唇に噛み付かれる、突然の出来事で肩を震わせるとぺろんと唇を舐められてそれでスイッチが入ったのかちゅっちゅっと啄ばむように先輩は唇をくっ付けてきた。

「んっ、せんぱっ……!」
「んー? 想像した通り甘いなー」
「っ、っ!?」

 噛み付いてきたと思ったら、キスされて、少し開いた口から舌を甘噛みされる。とんでもない行動に呆然としていれば、彼は唇を離して今度は首筋を這うように舐めたかと思うと、深く歯を立てる。……なんだこれ。

「ちょっ、先輩!」
「ふぉ!?」

 痛さとくすぐったさが我慢の限界に来て、平腹先輩の身体を押し返せばポカンとした表情を見せる。どちらとも分からない口元の唾液を拭って先輩から距離を置く。

「なんだよ〜」
「て、展開が早すぎです……!」
「いーじゃん、オレのこと好きだろ?」
「そうですけど」

 言葉を濁せば、チャンスとばかりにまた覆い被さってきて、唇に噛みつかれた。
これは不味いと思い上手く唇を交わして言葉を出す。

「や、ほんとダメですって……!」
「オレもう我慢できねー」
「わっ、」

 強めの力で押されて押し倒される。顔を見れば、ギラついた目にこれはもう手に負えない、と思って私は全てを諦めた。

「……手荒なことしないでくださいね」
「うーん、頑張る!」

 心配だ。平腹先輩が私の服に手を掛けた。


そのあとはまあ、噛まれたり色々されて、平腹先輩のせいで付いた噛み跡を見た女子寮の子達の怒りを止めるのが大変だった。

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アンケート意見、噛み癖のある平腹! 犬ですね、なんかもう犬にしか見えなくなって来た。猫に肘噛まれた経験あります。
太ももとかやわやわ噛む平腹犬。