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 晩飯を食べるために食堂へ行くと、名前が料理を作っていた。ああそうか、任務が連日続きだから平腹の部屋に泊まっていると言っていたな。だからこっちの館にいるのか。

「やっほー斬島」
「……木舌か」
「もうすぐ佐疫も来るよー」

 声のした方を向けば、木舌が酒瓶を抱えて呑んでいた。見慣れた光景だから敢えて何も言わずに木舌の前に座れば木舌はぼんやりとした目で料理を作っている名前を見た。

「暇だからおれ達の料理作ってくれてるんだって」
「……そうなのか」
「良い子だよねー! あれで彼氏持ちじゃなかったらなー」
「なにを言っている」

 酔っているのか、と聞けばただ木舌はふにゃりと笑うだけだった。なにを言っても無駄だと思って言葉を掛けるのを諦めると調理場から名前がこちらを見た。

「あ、斬島先輩」
「悪いな、わざわざ俺たちの分まで」
「気にしないで下さい、作るのは好きですから」

 笑った名前は再び調理場へと戻っていく。否定的な言葉を一切言わない名前にはたまに尊敬する。
何が出来るのだろうか、と調理場に目を凝らせば食堂に佐疫と平腹が入ってきた。任務終わりなのか平腹はシャベルを持っていた。

「お腹すいたなー」
「腹減ったー! あ、名前!」
「やっほー二人共!」
「斬島も戻ってたんだ」
「ああ」

 佐疫が隣に座ったのを見た後に、平腹はシャベルを持ったまま調理場にいる名前のところに駆け寄り名前の背中に抱きつく。「平腹邪魔しちゃダメだよ」と言う佐疫の声は届いていないらしい。
 木舌、俺、佐疫で調理場を一斉に目を向ける。

「なーなー名前、オレ腹減ったー!」
「もうすぐですから、手とか洗ってきて」
「えーオレここにいたい!」
「危ないからダメ」

 ずっと見ていると、なぜだかやり取りが親子に見えてくる。駄々っ子のように名前の腰に手を回し調理姿を眺める平腹は子どもにしか見えない。
それは二人も同じだったらしく、微笑ましい保護者のような顔をしている。

「なんか、親子みたいだね」
「うん、食べ盛りの子どもを持つお母さんだね〜」
「……」

 一理ある。頷いて再び調理場に目を向ければ名前が包丁を置いて平腹の方を振り向く。

「平腹、手洗って武器置いてきたら大盛りにしてあげますよ」
「マジで!? じゃあ行ってくる!」
「はいはい転ばないでくださいね」

 目を一気に輝かせた平腹はつい先ほど任務があったにも関わらず、元気に走り出して自室へと戻っていく。現金な奴だな、と呟けば佐疫と木舌は苦笑する。

「平腹よっぽどお腹すいてたのかな〜?」
「というか名前の料理が好きなんじゃないかな、美味しいし」
「どちらもだろう」

 実際に名前が作る料理は美味いし、平腹自身も任務で暴れただろうから腹が減っているはずだ。
そんな空腹時に名前の手料理となれば馬鹿騒ぎするのも理解できる。

「ふぅ……。もうすぐで出来ますから待っててくださいね」
「ゆっくりで良いよ〜、おれらが平腹捕まえておくから」
「じゃあ俺は谷裂達呼んでくるね」
「ああ」

 佐疫が席を立って食堂から消えていく。調理場からは既に良い匂いが立ち込めていて、俺も静かに腹が鳴った。

「……腹減ったな」
「ね! しかも良い匂いしてきたし、酒が進むよ」
「あまり呑みすぎるなよ」
「そうですよ、ご飯入らなくなりますよ」

 全ての調理が終わったのか、エプロン姿の名前が調理場から出てきた。名前自身からも仄かに料理の良い匂いがする。

「あれ、もう終わったの?」
「後は煮込むだけです、もうちょっとですよ」
「佐疫達が谷裂を呼びに行った」
「じゃあそろそろ夕食の準備しましょうか」
「そだね〜」

 皿を出すべく立ち上がる。それと同時に平腹が戻って来た。

「あれ、もう終わったのか?」
「あともう少し。準備だけしようと思って」
「そっか! オレ名前の料理好きだから楽しみだな」
「ん、ありがとう」

 ニッと笑みを浮かべる名前は心成しか嬉しそうだった。それに気付いたのか平腹は笑いながら名前の頭を撫でる。なんだかんだで、こういったときだけは恋人らしいと思う。

「やっぱり、二人は親子みたいだけど、恋人なんだね」
「……そうだな」

 見ていて飽きない。俺は木舌の言葉にポツリと答えを返した。

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ご飯まだー? もうちょっとですよー、を入れたかっただけです。
何気に平腹先輩は難しい。中身が無ければオチもない。もしかしたら内容を変えるかも知れないです。