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「佐疫! 怪我したって聞いたけど大丈夫!?」
「名前?」

 佐疫さんが大怪我をした、女子寮から人伝に聞いた話で私は血の気が失われていくのを感じた。気がつけば男性獄卒の館まで全力疾走して、いるのも確認せずに佐疫の部屋を開ければそこには包帯だらけの佐疫がベッドに腰掛けていた。
 案の定彼はかなり吃驚している、私は寝たきりを想像していたので安堵のため息を零した。一方の佐疫は安心させるためか、私の手を握った。

「ちょっと今回は回復には時間掛かるって。と言っても数時間くらいだけど」
「痛そう……ほんとうに、大丈夫?」
「大丈夫だって、それよりそんなに息切らして来るほど心配だった?」
「……っ」

 意地悪く笑う佐疫に、さっきまで我を失って起こした行動が蘇り急激に恥ずかしくなった。
恥ずかしすぎる、ちゃんと確認もせずに突っ走って来てしまった、通り過ぎる人たち驚いてたし。女子寮の先輩達に話したら絶対笑われるかからかわれそう、部屋に泊まった日なんて根掘り葉掘り聞かれるだけに。
 色んなモノが溢れ出てきて思わず座り込んで顔を隠す。

「うー……」
「ふふ、どうしたの?」
「なんでもない。ちょっとさっきの行動振り返ってて恥ずかしさに苛まれてる」
「俺は嬉しかったよ」

 控えめに頭を触れられて、顔を上げればにっこり笑顔の佐疫。いつでも笑顔な彼にはどれほど救われたか。けれど今はその笑顔さえ見てて恥ずかしくなってくる。

「名前が俺のこと凄い好きなんだなーって改めて実感した」
「……私、そんなに分かり難い?」
「そういう意味じゃないけどね」

 違う感じ方もあるんだよ、と言われて良く分からんと眉を潜めれば優しい声色で「おいで」とだけ囁かれ腕を引っ張られれば、彼の足の間に座らされる。怪我をしているのは上半身だけど、寄りかかっても平気なのだろうか、いや止めておこう。

「あの、痛くない?」
「大丈夫だって、心配性だなぁ」
「だって……心配した」
「……うん。ごめんね」

 獄卒は再生したり、短時間で怪我が治るけどやはり大切な人が大怪我をしたなんて聞けば心配になってしまう。
痛々しい姿なんて見たくないし見ているこっちも辛くなってくる。彼はどんな敵にどんな風に痛めつけられてしまったのか、どれほど痛かったのか、考えるだけで悲しくなってきて鼻の奥がツンとする。

「名前、泣かないでよ」
「泣いて、ない」
「素直じゃないんだから」

 呆れ気味に言われてムッとしたけど顔を上げた瞬間に額と、頬と、唇の順番にキスをされて何も言えなくなった。
佐疫は私を上手く丸め込む方法を知っているからずるい、抱き締められたりキスをされればすぐに絆されてしまうから言いたい事も言えないことがある。

「佐疫、キスすれば私が大人しくなると思ってるでしょ」
「ん?」
「……」

 おどけたように顔を覗く彼に軽く小突けば、「痛いなー」なんて笑う。ああもうずるい、佐疫は本当に危険だ。いつだって私は上手く丸め込まれて押し流されてしまう。たまには形勢逆転したい。

「いつだって受けて立つよ」
「余裕ですね。先輩」
「だって出来ないこと知ってるし」

 喉を震わせて笑う佐疫に、言葉が詰まる。確かに何度かそういったことを試みたけど見事に交わされて気がつけば佐疫が上に立っている。多分私に覚悟や勇気が足りないのかも知れない。もっと勉強しなきゃなー。

「俺は、逆転されて顔を真っ赤にしながら睨む名前も凄く好きだよ」
「っ、佐疫の馬鹿!」
「うん。名前馬鹿かも」

 その言葉に身体が熱くなった。ダメだ、また上手い具合に交わされてる。勝てない、彼の方が一枚上手だ。どうすることも出来なくて私はもう良いやと思ってなるべく傷を刺激しないように彼の身体に腕を回して抱きつく。

「名前?」
「私も佐疫馬鹿ですー。大好きだよ」
「……」

 あれ、反応無し? ひょいと顔を上げれば珍しく顔が赤い佐疫と目が合う。あれ、佐疫が照れてる、珍しい。上手く言葉が見つからなかったけど、とりあえずしてやったり、と言う意味を込めて舌を出せば彼に肩を押されて、目の前が陰った。

「わっ!?」
「……名前、たまに照れ臭い事普通に言うよね」

 ギシリ。ベッドの軋む音がして僅かに身体が揺れる。目の前が陰ったのは佐疫が倒れ込んだ私の前に覆い被さってきたからだ。なんとなく嫌な予感がする。
チラッと包帯が巻かれた彼の身体を見れば、傷が殆ど無くなっていた。昂ぶっているからこそ、治りが余計早いのかも知れない。

「え、えっと……佐疫?」
「シよっか」
「直球!?」
「名前が悪いんだからね」

 有無を言わさず口付けられ、軍服のボタンに手を掛けられた。

「(ダメだ、やっぱり)」

 私は彼に、今日も絆される。

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なにも考えずに書いたら意味が分からなくなった。
佐疫は何をやっても夢主より一枚上手だけど不意打ちに吃驚しそう。誘い文句直球だったら良いね! ちゅっちゅっして雰囲気作りとかもおいしいけど。