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 昨夜は任務が夜遅くに終わりクタクタの状態で報告に行ったなら肋角さんに明日で構わないから早く寝ろ。と言われ、自室に戻る気力が無かったから任務が一緒だった恋人の田噛の部屋に泊まった。
 朝になり目を開けて自分の隣を見れば彼がいなくて、反対側に身体を移動すればギターの手入れをしている田噛と目が合う。

「……はよ」
「おはよーたがみ」
「なんか、お前声が掠れてねぇか?」

 気だるい身体を起こして目を擦れば、田噛が訝しげに私を見た。
確かに喉に違和感、さらにじっとしていると頭がボーっとして暖かいはずなのに寒気がする。なんだろう、視界がくらくら回る感覚がして、それでもベッドから出ようと手に体重を掛ければ上手く体重を維持出来なくて前に倒れそうになる。

「と、」
「……」

 疑問に思った田噛が近付いて、私の身体を支えてくれる。ぼんやりとしながらも彼の顔を見れば額に手を当てられた。

「……熱あんじゃねぇか」
「あら……でも報告行かなくちゃ」
「いや良い。だりぃけど俺が行ってくるから寝てろ」
「でも」

 言葉を出せば、田噛に強い力で肩を押されて強制的にベッドに横にされた。対抗する力も無くてうつろな目で田噛を見れば既に部屋を出る準備をしている。だるいって言ってるのに任せちゃって良いのかな。
というか今日は女子寮に帰るつもりだったんだけどなー……。

「大人しく寝てろよ。ついでに食えそうなものとか買ってくる」
「やだ……いかないで」
「……」

 田噛の部屋に一人でいるのって凄く寂しい。熱もあるせいか本音が口から零れ出て近くにいる田噛の服を掴めば、上からため息が聞こえた。

「すぐ戻るから待ってろ」
「ん、」
「分かったか」
「……はい」

 頭を撫でられて口元にキスをされた。普段の田噛がしない行動に驚きつつも嬉しかったから素直に頷く。
 早く帰ってきてね、と目線で訴えかければ無言でまたキスをされる。

「あーだりぃ」
「いってらっしゃい」

 力を振り絞って手を振ると、扉が閉まった。一気に静かになって寂しさがこみ上げる。けれど今は凄く眠くて、瞼を支える気力ことすら危うかったので素直に眠りに落ちた。



 うっすら目を開けると、電気がついていなくて薄暗い。なぜだか額が少しひんやりしている、けれど頭がぼーっとするのは変わらない。ぐるぐる回る視界に耐えつつ身体を横にズラすと、ベッドの近くにランプを付けて本を読んでいる田噛。

「……たがみ」

 搾り出すように彼の名前を呼んで髪に触れれば、田噛はこちらを振り向き顔を覗きこまれて首筋に手を当てられる。

「起きたか。……熱は相変わらず下がってねぇな」
「うん」
「水出してやる」
「のどかわいてないよ」
「脱水症状になるだろ。良いから飲め」

 コップに入ったぬるめの水を渡されて、私は一口だけ飲む。意識してなかったけど口の中が乾いていたらしい、水を入れた瞬間に喉の掠れ具合が少しだけ良くなった気がする。

「名前、腹は?」
「すいてない」
「言うと思った。けど一口だけでも良いから何か腹に入れとけ」

 小さな冷蔵庫から切ってあるリンゴの皿を取り出して、爪楊枝で突き刺す。取ろうとしたけど身体に上手く力が入らなくてその場で見ていると、田噛がひょいと持って私の口元に持ってきた。

「ん」
「……あー」

 しゃり、と一口噛めばひんやりとしたリンゴが口の中に入る。けれど熱の影響で味覚もやれているのか殆ど味がしない。もう一口くらいいけるかもと差し出されたリンゴを再び口に入れて咀嚼する。

「もういいや……」
「分かった。次は薬な。と、その前にそれ取り替えんぞ」

 額に貼ってある熱さまシートを剥がされて新しいのが貼られる。なんだか凄く手際が良い。
シートをゴミ箱に捨てて田噛は薬を取り出して錠剤を手渡される。

「救護係の奴から貰ったやつだ、ちゃんと飲めよ」
「……」

 だりぃだりぃ常日頃言っている彼からは考えられない行動に目を見張る。これは本当に田噛なのだろうか、別人じゃないのか。鏡のきりしま? ならぬたがみ? みたいな。
熱のせいで自分の思考回路がおかしい。とりあえず薬と水の入ったコップを受け取る。

「……」
「……薬くらい飲めるんだろ」
「なんか、飲むのすらだるい」
「ったく……。身体支えてやるから飲め」

 薬を飲む動作ですら億劫だった。なんだか私が田噛みたいになっている気がする。私の言葉にため息を零しつつも田噛がベッドのところに腰掛けて私の身体を支えた、お言葉に甘えてその身体に寄り掛かり水を飲み薬を流し込む。

「飲んだか」
「うん……」
「結構汗かいてんな。着替えるか?」
「……着替えたい」
「服貸してやるからそれ着ろ。身体拭くから脱がすぞ」
「あり、がと、……おかあさん」
「おい」

 冗談なのに。けど本当にお母さんみたいだから安心する。もうなにも考える力が無いので大人しくしていると田噛がてきぱきと服を脱がして蒸しタオルで私の身体を拭いてくれる、チラッと田噛を見ると顔を真っ赤にしながらも私の身体を拭いてくれている。なんだか少し申し訳ない気がする、けど、自分で拭く気力すらなくて心の中でごめん、と呟いて身を委ねる。

「……」
「これ着ろ」

 掛け布団で前を隠して渡されたシャツに着替える。ついでに下も脱いでズボンを穿きかえるとそのまま倒れこむようにベッドに横になった。田噛の服なのか、サイズに余裕がありゆったりしていて楽だ。
襲ってきた眠気で瞼を開けたり閉じたりすると、田噛が優しく私の頭を撫でる。

「晩飯まで、ちゃんと寝ろよ」
「となり」
「は?」
「となり、きて……ください」

 一人は寂しい、と言う意味合いで少しだけスペースの空いた隣を叩けば、なんとも言えない表情をしている田噛。さすがにわがまま過ぎたかな、田噛だって用事とかあるしここまでしてもらったから困らせちゃダメか。

「ごめん、わがままいいすぎた」
「ちっ……普段はそうやって甘えねぇくせに」
「ん?」

 舌打ちをしてボソッと呟いた田噛の言葉を聞き返そうと声を出せば、田噛は何も言わずに布団に入ってくる。予想外の行動に声を出さず見つめれば隣で横になった彼に抱き締められた。あ、身体が暖かい。不思議とダルさが軽減されたような感覚に陥る。

「寝るまでこうしててやるからさっさと寝ろ」
「ありがと。なんか、ごめん」
「お前以外にこんな面倒なことしねぇよ」

 優しく背中を叩かれて、しかも田噛らしからぬ言葉を囁かれたので身体が更に熱くなる。けれどそれよりも急激に眠気が襲ってきたので、私は田噛にしがみ付くように身体を密着させて目を閉じた。

「名前、早く良くなれよ」
「……」

 遠くの方で聞こえてきた田噛の声を最後に、私は完全に意識を飛ばした。

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名前変換!!!最初は一つも登場しなくて焦って付け足した。
オカンな田噛、世話焼きな田噛とか最高です、ギャップ萌え。看病され隊し隊。