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コレの続き。

「報告も終わったし、この後どうする?」
「訓練だ。日頃から怠けていたら身体がすぐに鈍る」
「……一人で?」
「……貴様を一人にさせておくと不安だ。傍にいろ」
「はい!」

 肋角さんに任務報告も終わり、谷裂の目的地にさり気なく付いてっても良い? と言う意味合いで言葉を投げ掛ければ案の定了承を貰った。報告前に離されてしまった右手で軽く谷裂の左手に触れると再び手を掴まれた。

「あ」
「迷子になっては堪らん。俺が繋ぎたいわけではないから勘違いはするな」
「……」
「ニヤけるな阿呆が」

 さっきの出来事で一気に距離が縮まった。相変わらず顔を見せてはくれないけどほんのり朱色を孕んだ耳を見て私は嬉しくなる。谷裂はツンデレなのかもしれない。
 繋がれた手に力を込めて訓練場へ向かう途中、酒瓶を抱えて呑みの体制に入った木舌先輩に出会った。

「お帰り二人共〜。……あれ」
「木舌か。なんだ」
「仲良く手なんか繋いじゃって〜、このご両に、」
「……」
「ああああああああ木舌先輩!?」

 冷やかした木舌先輩にご立腹した谷裂の金棒が振り乱された。一瞬の隙に木舌先輩は血みどろの状態に……幸いにも頭を一発だけだったが見た目が凄くグロテスク。思わず近付くのを躊躇われる。

「全く谷裂は冗談が通じないな〜、名前も大変だね」
「そんなことないですよー」
「偉い偉い」
「意味分かりませんって」
「名前」
「うん? っ!」

 にこにこ笑顔の木舌先輩に頭をわしゃわしゃ撫でられた。なんか彼には未だに子ども扱いされる、一応同僚なんだけどなぁ。悪い気はしないからそのままにしていると、急に脇腹を掴まれ、後ろを振り向いた否や怒り心頭の谷裂に俵抱きにされる。

「おっ……? え!?」
「え、谷裂どうしたの?」
「もう行くぞ」
「う、うん……良く分からないけど手荒なことしたら嫌われるからね」
「分かっている」
「た、谷裂!? ちょっ」

 背中しか見えないから彼の顔がどうなっているかは分からないけど、声色には怒気が含まれている。なにかマズイことをしてしまったのか、と思うがそれが見当たらない。ずっと谷裂と手を繋いでいたし……。ぐるぐる回る頭の中で答えを見つけている間に谷裂はどんどん足を早め訓練場へ向かう。

「あ、の。うっ!」

 再び声をかけようとした瞬間、視界がグラつき背中を床にしたたかぶつけた。あまりの痛さに声を零すと目の前にはこれでもかというほど顔を顰めた谷裂が目に入った。
 床に身体をつけているはずなのに、膝から下がブラついている。少しだけ顔を横にすると身体が床に付いていない。……更に視線をズラせば机っぽい材質。もしかして、机の上に倒された?

「どうした、の?」
「……貴様は、全然分かっていない」
「え、なにが」
「黙れ」
「むっ!?」

 見た事がない彼のオーラと表情に怯みながらも言葉を出し終える前に、紫色の瞳が細められ頬を固定され唇に喰らいつかれた。驚いて言葉を出す前に上唇を舐められて身体がビクリと跳ねる。

「んっ、……!」
「っ」

 反射的に開いてしまった唇に、素早く谷裂の舌が入り込んできた。吐息が言葉にならい声になり飲み込めない唾液が零れ出て、それでも彼の口が離れることはなく歯茎をなぞられて私の舌を絡め取ってくる。経験した事の無い深いキス、それになぜだか頭がボーっとしてきて身体の芯が熱くなり頬が上気して涙が零れ出てきた。

「あ、……ふっ」
「はっ……」

 谷裂も苦しそうにして、一瞬だけ唇を離したがまたすぐに喰らいつかれる。気がつけば頬に触れていた手は私の頭と腰に移動しており腰が浮かされる。最後に下唇の裏を舌先で弄られたら、彼の顔がゆっくり離れた。

「はぁっ、はぁっ……」
「……」

 息苦しさと謎の快感から解放されて肩から息をする。その間に谷裂も少しだけ苦しそうにしつつも私の唇から零れた唾液を指で取った。
 脱力した身体のまま谷裂に目を向ければなんとも言えない表情をしていて、頭が上手く回らないから彼がなにを考えているのか全く分からない。

「……どこか気分が悪いところはないか」
「な、ないです。……」

 未だに倒された状態なのが気になるけど、起き上がる気力がない。呼吸を少し乱しながらも声を絞り出せば谷裂が私の背中を支えて起き上がらせてきた。けど自分で力が出せないので彼の肩に寄りかかる。

「持久力も、きちんと付けておけ」
「……え」
「でないとこれ以上長く出来ん。……それ以上のことも出来ない」
「!?」

 谷裂の発言に耳を疑った。言葉を吐き出そうとしたときに、そのまま背中に腕を回されて身体を強く抱き締められる。

「貴様が木舌に触れられなければこうなる事は無かったんだ」
「……それって、」

 嫉妬、と言おうとしたところで身体が離される。ぼんやりとした視界の中で彼の顔を見れば真っ赤になっているし、凄く怖い顔をしている。これはなんと捉えれば良いんだろう。

「……熱いから頭がおかしくなっただけだ」
「そうなの?」
「黙れ。ああくそ、本当になんなんだ」

 自分で自分が分からない。と嘆く谷裂の頭を撫でれば睨まれたけどそれ以上のことはされなかったし言われなかった。悪態ばかりだけど所々に照れが入り混じっていると解釈する。
 頑固者だから認めたくないのだろう、平腹先輩のときもそうだけど絶対にこれは嫉妬だ。谷裂のことだから独占欲とか嫉妬を認められないのかな。

「なんだか、前より丸くなってる」
「なにがだ」
「こっちの話」

 微笑みかければ谷裂は顔を隠してそっぽを向く。めんどくさいけど、それが彼の良い所だしそんな彼が凄く大好きだ。

「谷裂」
「なん、」

 顔を見せずに言葉を発した谷裂の服の襟を引っ張って触れるだけのキスをする。その瞬間に谷裂の顔が真っ赤に染まった。面白い。

「あはは、顔真っ赤だよ」
「……黙れ」

 照れ隠しのつもりなのかデコピンされた。けれど彼の目は凄く優しげに細められていたから嬉しさがこみ上げた。

「次はもう少し優しくしてほしいです」
「……」

 囁くように言えば、また唇に喰らいつかれた。

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ツンデレとか難しい。けど好きな人には独占欲が滲み出る谷裂さん難しい。
ちょっと色々書くのが恥ずかしくなって来たので漏れ出す声とか省いたよ。
「谷裂に唇喰いちぎられたー」とか、血が滲み出た唇を舐められた、とか入れたかったけど入る隙がなかったのが残念。