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 トン。扉がノックされ開けてみたら急に何物かに押されてそのまま背中と壁がぶつかった。

「……?」

 状況が飲み込めない、ましてや誰がやったのかも分からない。微妙に暖かい胸下辺りが気になったので視線を下げると、軍帽が見えた。顔を押し付けられているから、顔が見えないが恐らくこの身長から行くと部下兼恋人の名前だろう。

「どうした」
「……」

 任務を終えて報告に来たのなら、一緒に遂行した斬島も一緒のはずだ。一体どうしたんだ。
壁に追いやれて身動きが取れない。否、動けないことはないのだが、なぜだか動いてはいけない雰囲気だと察してそのままの姿勢でいる。

「名前」
「っ」
「言いたいことがあるなら言え、どうしたんだ」

 思えばこうしてお互い触れ合うのも久々だな。最近忙しく事務的にしか会話を交わしていないし、ましてや彼女に触れる機会もなかった。いきなりの展開にどうするか頭を回していたとき、真下からポツリポツリと声が聞こえた。

「現世で、流行ってる……やつです」
「……は?」
「壁ドンです」
「……」

 ちらっと顔を上げた彼女の銀の双眸とぶつかる。流行のものをわざわざやりに来たのか? それに対しては随分表情が暗く不安そうに見える。
重たいため息を零すと真下にいる名前の身体がビクリと跳ねた。

「……もう一つはなんだ」
「え」
「そんな泣きそうな顔をしているやつがそんな理由で来ないだろう? どうしたんだ」

 頭を撫でて問い掛けると、彼女の双眸が揺れて顔をくしゃりと歪める。気がつけば壁に付いていた手は俺の腰に回されており痛いほど胸下に顔を埋めてきた。

「寂しかったです、最近、ずっと一緒にいれる日なかったし……会話も少なかったし……」
「……」
「堪らなく寂しかったんです……けど無理言って肋角さん困らせたくなかったし……ほんとうは今もこうするの迷惑だよね、と思ったんですけど顔見た瞬間、私っ」

 やはりか、だから我慢出来なくなってこちらの元に来たのか。湧き上がる高揚感を必死に抑え、身を屈め彼女の額に口付ける。

「すまなかったな」
「肋角さん……?」
「それは俺も同じだ、中々二人になれる機会がなかったのは分かっていた」
「〜っ……!」
「迷惑だなんて思っても無い、寧ろ嬉しい。本当はこちらから会いに行くべきだったのに……ほんとうにすまなかった」

 優しく抱き締めれ銀色の眼から涙が零れ落ち、嗚咽交じりの声が聞こえる。ふっと息を吐いて再び額に口付けて数回背中を叩いたり頭を撫でたりする。

「うぇぇえ……肋角さん……」
「悪かった。今日は特に急ぎの仕事もないから一緒にいよう」
「はいぃ……!」

 堪らなく愛らしく可愛らしい名前。久々に触れ合ったからか、急激に愛おしさとそれに伴って理性もぐらぐらと揺れる、徐々に膨れ上がってきた高揚感に我慢出来なくなり俺は名前の脇の下に手を通すとそのまま持ち上げる。
 その瞬間涙でくしゃくしゃだった彼女の顔が真顔になった。

「へ」
「望みどおり、思う存分構ってやる」
「え、あの、自分はこうして抱きついてるだけで……」
 
 さぁっと血の気が引いていく名前を他所に、口角を上げ片手で彼女を抱える。「え」とか「ちょっと肋角さん、」とか聞こえるが敢えて無視を決め込む。

「寂しかったのは双方同じだ」
「そ、そうですけど……あの」
「御無沙汰、だっただろ?」

 彼女に囁くように言うと、真っ青だった名前の顔が見る見る赤くなり黙って俺の首に抱き付いた。
どうやら嬉しいらしい、だがそれ以上に羞恥心があるのか。

「……あ、あの優しくお願いしますっ」
「くくっ、分かってるよ」

 名前の身体が一気に熱くなる。笑いながら言うとさらに強く抱きついてきて、俺ははたして優しく出来るだろうか、と考えながら扉に手を伸ばした。