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「木舌先輩、また飲んでるんですか?」
「あ〜、名前だ〜」

 部屋に戻る前に食堂へ来てみたら、たくさんの酒瓶に囲まれた木舌先輩がいた。うわ、結構木舌先輩と距離離れてるのに酒の臭いが凄い。
 なんだかこの臭いだけで酔ってしまいそう。

「先輩、明日も任務あるんでしょう? そろそろお酒止めた方が良いですよ」
「ん〜? そうしようかな〜」
「全く……。片付けますよ」

 この調子だと食堂で寝てしまいそうだ。少しだけ木舌先輩に近付くと彼はパッと顔を明るくさせて私の服の袖を引っ張る。

「名前〜」
「はいはいなんですか」
「んー、なんでもないよ〜」

 結構酔ってるなぁ、先輩。酒瓶だけでも片付けておこう。そう思って私は先輩の周りに落ちている酒瓶を拾い始めようと木舌先輩の方に身を乗り出す、その瞬間襟首を掴まれて私の身体は宙を浮いた。

「え」
「えへへ〜、名前確保〜」
「ちょ、せんぱっ!」

 反射的に閉じた目を開ければ間近に木舌先輩の顔、そして何故か足が浮いている。状況を理解するのに時間が掛からなかった。これ、木舌先輩の膝の上に乗ってる? 

「(これは本格的にヤバイ)」
「あ、逃げちゃダメだよ」

 脳内で警報が鳴り響く、急いで降りようと手に力を込めた瞬間に背中側に手を回されてどこから出してきたのか紐で縛り上げられ、顔が青ざめていくのが分かる。

「先輩、降ろしてっ!」
「ダメだよ、そしたら逃げるでしょ〜?」
「当たり前でっ、むぐっ!?」

 足をバタつかせようとしたとき、先輩の左腕が背中に回され、バランスが上手く保てずその左腕に寄りかかる体制になる。混乱中の中、先輩の右手が目の前で伸びたかと思ったら今度は口の中に何かを突っ込まれた。瞬間に顔を顰めるほど味の濃い酒が体内に入り込む。

「んぐっ、んんんん!」
「ほーら美味しいよ〜」
「せんぱっ、んんっ!」

 瓶を突っ込まれてるから、中身の酒が口の中に溢れ出て来る。吐き出すわけにはいかないので必死に飲み込んでいると身体が熱くなり頭がボーっとしてきた。
 これ、結構度数強くないか、くらくら揺れる意識の中で木舌先輩はとても穏やかな笑顔を浮かべて驚きの言葉を放った。

「名前〜、これ四十度だよ」
「んぁっ、っく……! んぐっー!」

 四十度!? 待って待って待って! 生理的に零れた涙で視界が滲んで、あまりの身体の熱さに私は意識を失いそうになる。

「んっ、く」

 もうだめだ、どうにでもなれと思い私は目を瞑った。

(木舌視点)

「うええええええ! せんぱいのばかあああああああ」
「あー、うん、ごめん、ほんとにごめんね」

 酒の勢いに任せて後輩の名前に度数の強いお酒を一気飲みさせてしまった。時間が経っておれ自身の酔いが醒め始めた頃には顔を真っ赤にして涙をぼろぼろ流しおれに寄りかかる後輩が。もう完全に出来上がっていて手の施しようがない。

「て、ほどいて〜! なんなんですか、ほんと!」
「あぁ、うんうん。……ごめん」

 俺の膝の上に座って未だに泣き止まない名前、ていうかおれなんで名前の手縛ってるの、これ絶対他の人に見つかったらおれ殺されてたよ。降りる気のない後輩の手の紐を解くとそのままおれの服にしがみ付いて泣き続ける。忘れてた、この子凄い泣き上戸だった。

「ひっく……! いきなりのますなんてひどい、うああああああ」
「ああもう泣き止んで、大丈夫だよ〜!」
「ん……さえき」
「(あれ、勘違いしてる?)」

 困ったなぁ、しがみ付いていたはずの名前は、酔いのせいでおれを恋人と摩り替えているためなのか解かれた手を背中に回し抱き付いてきた。女の子特有の良い匂いが香って変に熱が溜まりそうなのを堪える、ていうか堪えろ。堪えなきゃこの子の彼氏である佐疫に殺される。

「さえき、……ねむい」

 ふっと名前が泣き止んだ、全体重をおれに預けて寝たいのか瞼を開けたり閉じたりしている。チャンス、と思いおれは彼女の背中に手を添え、膝の下に手を通す。

「はいはい名前ちゃん、帰ろうか〜」
「……ん」

 声は届いているみたいだがかなりうとうとしている。届ける前に寝なければ良いけれど。火傷しそうなくらい熱い名前の身体を支えて食堂を後にする。

「はい付いた」

 目的地へ付き、部屋の扉をノックして立っていれば、部屋を開けない相手を確認しに来たのか部屋の主が出てきた。
 おれと、おれの腕に抱かれている名前に目を向けて少しだけ不機嫌そうに顔を顰める。

「木舌、もしかしなくても飲ませた?」
「やっほー。佐疫のお姫様届けに来ました〜」
 
 ふざけ気味に言うと更に顔を顰められる。中々に怖い表情だ。何もしてないよね? といったような目線を投げ掛けられたのでおれは笑顔で答える。

「大丈夫大丈夫〜、酔ってる間も佐疫の名前言ってたし」

 そう言ったらなんとも言えない表情をされる。とりあえず夢と現の中で揺れ動いている名前を渡すと佐疫は壊れ物を扱うように名前を手に抱いた。

「良かったね名前、大好きな王子様だよ〜」
「名前大丈夫? すぐベッドで横になろうね」
「んー……さえきもいっしょにねよう」
「……う、うん。分かったよ」

 あ、理性と戦ってる。まあだろうね、名前今涙目で頬上気してほんのり赤いし。稀に見ない色っぽさあるもんね。

「ま、後はごゆっくり。おれは行くね」
「木舌も飲み過ぎないようにね」

 佐疫の言葉を軽く受け流して扉を閉める。はてさてどうなることやら。

「(うーん……ちょっと色々危なかったなぁ)」

 佐疫が羨ましい。余計なことは考えずにもう一度晩酌しようと食堂へと戻った。