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「ねえ田噛、やっぱり一緒に行かない?」
「めんどくせぇ。俺は後から合流する」

 常に敬語で先輩付けの後輩だったが名前が俺の彼女になってから初任務(いつの間にか呼び捨てタメ口を使うようにもなった)。と言っても俺は後から合流予定だから全部一緒ってわけじゃねぇけど。

「うー……まあ平腹先輩いるからいいか」
「なにかあったらアイツに丸投げで良いだろ」
「それが無いように頑張ります」

 気だるそうに言うと名前は苦笑気味に笑った。まあアイツがいるから死ぬことはないだろう。俺は暢気にそう考えていた。



「っ、おい名前!」
「う……た、がみ……?」

 最悪だ、こんなことになるなんて思ってもみなかった。任務は平腹と名前の二人で滞りなく遂行されると思っていた。が、急遽入った名前の応援で予定よりも早めに来てみればそこには右腕を取られ血塗れになって座り込んでいる彼女がいた。

「応援入ったから来てみたら……、平腹はどうした!?」
「怪異に突進してったら不意打ちつかれて気絶してた。……そのあとは私一人で全部倒した」
「っ、のバカ!」

 力なく笑う名前を抱き締める。ああくそ! もっと早く付いていればこんなことにはならなかったはずだ。あたりを見回すとコイツの倍以上もある怪異が倒れている。この大きさを一人で倒したのか? だるいからギリギリまで応援に行かなかった自分にムカついて舌打ちをする。
一方の名前は俺の背中を片手でポンポンと叩くと力なく笑う。

「ねぇ……、私一人で倒したんだよ……凄いよね」
「……目真っ赤。お前怖くて泣きながら戦ってたんだろ」
「まぁ……うん」
「……良くやった」

 誰よりも臆病な彼女だ。信頼出来る相手が気絶してしまったとき、たまらなく怖かったはずだ、それでも任務を遂行しようとしていた。黙って彼女の真っ赤な目を指の腹で撫でる。

「再生するまでここで待機するか。……だが、その前にあのバカを起こす」
「あ、あのお手柔らかにね……?」
「一回殺すのもありだぞ」
「それはダメ」

 彼女を手放したくなかったから手を貸して立ち上がらせる。ぼろぼろの名前を見た瞬間急激にあの馬鹿に対する殺意が湧き床に寝転んでいる平腹に蹴りを入れる。

「うぐぉっ!?」
「おい起きやがれアホが」
「あーぁ……」

 隣で名前がため息を零すが、助ける気配ない。

「あれ。オレ、任務は?」
「てめぇが暢気に寝てる間にコイツが片付けたよ」
「マジで!? 名前すげー!」
「黙れ」
「ぶほあ!?」

 ムカつくから何発か腹に蹴りを入れる。大体お前が寝ていなければ名前がこんな大怪我をすることもなかったんだ。ああムカつく。

「えーと、田噛……そろそろ」
「ちっ。今度から一人で無茶すんな」

  困ったような顔をする名前を引き寄せ、少し乾いた唇に自分のをくっ付ければ案の定離れたあと向こうは顔を真っ赤にして俺を見つめてきた。

「……なっ、なにを」
「あー、でも、俺も悪かったよ……」
「……ふふ、ごめん。これからはもっと田噛を頼る」

 照れ臭そうに笑う名前に、愛おしさがこみ上げてきたが黙って手を握り締めその場を後にする。

「あ、待てよ田噛、名前〜!」
「お前は戻ってくんな」
「ひでえ!」
 
 隣で名前が小さく笑った。