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「やっほー」
「わっ、……木舌さん?」
「そ〜、木舌さんだよ〜」

 報告も終わったし、女性獄卒達が住む館に帰ろうとしたら後ろから一応恋人の木舌さんに抱き付かれた。
 身長差がだいぶあるし、体重も木舌さん結構重いので潰れそうになる。身体が密着しているし顔も近い、そして最悪なことに酒臭い、顔を顰めるほど酒臭い。
 呑んでるなコイツ。

「もう女子寮帰るのー?」
「すっごく眠いんです。このまま寝たくて」
「えー、お風呂入らないの?」
「あー……そうですね、でも眠気が凄くてそのまま寝ちゃうかも知れないです」
「ダメだよ〜、女の子でしょー?」
「はいはい、入りますから離して下さい」

 今回は任務が結構ハードだったから疲れと眠気が半端ない。熱を帯びた木舌さんが密着しているからなんだか熱いし、余計眠気が襲ってくる。……ていうか本当に酒臭い、こっちまで酔いそう。

「でも、女子寮帰ってる間時間勿体無いよね〜」
「まあそうですね」

 けど上司が肋角さんだし仕方ないことだ。私もほとんど任務とかの日は男性獄卒の館うろついてるし。
 いかん、眠気で頭がボーっとしてきた、ふらつく身体を必死に支えていると耳元で木舌さんが囁く。

「んー……じゃあ、時間短縮しようか」
「は?」

 木舌さんが身体から離れたので、後ろを振り向こうとした瞬間身体が浮いた。というか背中と膝の裏を支えられて持ち上げられたという方が正しい。え、お姫様抱っこ? いきなりの展開で頭が付いていかず呆然としているとニコニコ笑顔な酔っ払い木舌さんがとんでもない事を言い出した。

「おれがお風呂に入れてあげるー、ついでにおれの部屋に泊まると良いよ〜」
「は、え!?」
「一緒にお風呂入ろうか〜」
「ちょおおおおおおお!?」
「お一人様部屋へご案内〜」

 何言ってんのこの人!? 頭ぶっ飛んだ? ていうかお酒のせいで脳内お花畑でしょ、どんだけ呑んだの! 
 抵抗の意味を込めて手足をじたばたさせるけど、背中と膝の裏をがっちり掴まれているので正直意味がない。体格差もあるし、力の差では手も足も及ばない。顔を殴ろうと思ったけど落とされたら堪ったもんじゃないので言葉で諭す。

「き、木舌さんっ、私女子寮帰りますから! 大丈夫ですから!」
「時間勿体無いでしょ〜、おれの部屋すぐ傍だからお風呂入ったらすぐ寝れるよ」
「そういうことじゃないですから!

 このままお持ち帰りルートとか想像しただけでヤバイ、けれど、よくよく考えれば成す術もない。部屋に着いたときに逃げるか。

「とーちゃーく」

 逃げる術を探している間に、部屋に着いたらしい。早い、足長いし歩幅も広いからか……。
 降ろした瞬間に逃げよう、そう思ったのに木舌さんは一向に私を降ろす気配がない。

「……あの、降ろして下さい」
「だーめ。このままだと逃げるでしょ」
「(バレてる)」

 けど逆の立場で考えれば確かに降ろした瞬間に逃げ出すかも、とは考えるか。そこまで頭悪くないよね。
 しかしこのままだと本当にお泊りコースになってしまう、風呂場に入ったらさすがに降ろしてくれるだろう。よし、その隙を見て逃げよう。
 と思ったのに、またまた木舌さんはとんでもない事を言い放つ。

「じゃ、一緒に入ろうか」
「……一緒に?」
「うん。おれもまだだったし」
「ま、待って待って待って! さすがにそれは!」

 獄卒達の部屋には、それぞれ小さな簡易風呂が付いている。狭い浴室に男女二人は色々と問題がある、しかも相手は酔っ払い。

「お風呂は無理です!」
「二人で入れば時間短縮だよ〜」
「そういう問題じゃない!」

 うだうだ言っている間に木舌さんは私を抱えたまま浴室の扉を開けて、脱衣所に座らせる。しかも床に座らせた瞬間素早く鍵を掛けた。
 これから起こることを察して顔が青ざめていく。

「さ〜、名前ちゃん脱ぎ脱ぎしましょーね」
「や、無理無理無理! 木舌さん目を覚まして!」

 楽しそうに、私の軍服のボタンをリズム良く外していく木舌さんの手を両手で制するが、「だ〜め」と間延びした声で両手をがっちり押さえつけられた。うぐああああ、自分の非力さをこれでもかというほど呪ったことがない、腕力とかの筋トレしとけば良かった!

「はい、全部ボタン取れたました」
「取れました、じゃない! ほんとダメですから! 私一人で入れますから!」
「はい脱ぎ脱ぎ〜」
「聞けよ!」

 いつの間にかワイシャツのボタンも外されて軍服の上着と共に脱がされる。やばいやばいやばい、上半身下着姿って結構ヤバイ、しかも目の前には酔って制御が利かない恋人。死亡フラグまっしぐら。
 脱がされた私を、舐めるように見る木舌さん。羞恥心で顔が熱くなる。顔を見れなくて目を逸らしていると囁くように木舌さんが呟いた。

「……名前、美味しそう」
「木舌さっ、ひっ」

 両手を押さえつけられて、そのまま木舌さんは私の鎖骨に口付けたかと思うと、徐々に唇を上に這わせて噛み付いてきた。
 チクリとした痛みに変な声をあげれば、満足そうに笑う木舌さん。ああもうダメだ。

「名前、明日任務は?」
「……午後から、です」
「そっか」

 すっと木舌さんの目が細められる。これは完全にスイッチが入っている。
木舌さんの驚きの行動の連続で眠気も吹き飛んでしまったし、逃げる気力もないから諦めよう。正直、嫌じゃないし。

「一緒に、入ろう?」

 耳元で囁かれて、私は控えめに頷いた。

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不完全燃焼。無事誕生日を迎えたらこの続きを書きたい(言うだけタダ
夢主ちゃん、一応女性獄卒専用の館に住んでいる設定ですがほぼ大半は男性獄卒の館にいます。