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 任務が無い日、私服を着て私はとある人物を探すため館内を走り回る。

「あれ、名前どうしたの?」

 ふと目に入ったのは、同じく私服姿で片手に酒瓶を抱えている木舌先輩だった。相変わらずきっちりとした七三分けだ。っとと、そんなことをしている場合がじゃなかった。私は木舌先輩のところへ小走りで走っていく。

「木舌先輩。斬島先輩を見ませんでしたか?」
「斬島? 確かさっき娯楽室に入ったの見たよ」
「そっか、有難う御座います!」

 飄々とした笑顔で酒瓶を大事そうに抱える木舌先輩に、お酒は程ほどにして下さいね! とだけ声を掛けて急いで娯楽室へと走っていく。

「斬島せんぱ……あれ」

 誰もいない娯楽室に来てみたらソファで寝ている斬島先輩がいた。
音を立てず静かに娯楽室に入り、眠りこけている先輩に近付いて顔を覗きこむ。

「……先輩?」

 じぃっと顔を見つめて、小声で声を掛けてみるとも規則正しい寝息しか聞こえてこない。
それにしても、先輩の寝顔って初めて見るかもしれない。眠っているためか気の緩んだ顔のように見えて思わず笑みが零れる。

「(帽子……。取ってあげた方がいいかな)」

 諦めて部屋を出ようとしたが、ふと目に入った今にもずり落ちそうな先輩の制帽が気になって思わず手を伸ばす。しかしその瞬間どこからか伸びてきた手に右手を掴まれて変な声が出た。
 状況が理解出来ないまま、帽子の主である人の顔を見ると眠たげな青い瞳をぶつかった。

「……おはよう、ございます?」
「……なにをしてる」
「いや、帽子を取ろうと思いまして……」
「……」
「え、せんぱっ、!?」

 急に黙りこくった先輩に、もう一度声を掛けようとした瞬間不意に背中を持ち上げられたかと思うと一瞬宙に浮きそのまま先輩の身体に乗っかった。

「え、ちょ、斬島先輩!?」
「……眠い」
「えええええええ、せんぱーい……?」

 心臓がドキドキして爆発しそうなのに頭上からはなんとも間延びした先輩の眠たそうな声、そして数秒後に聞こえてきた寝息。逃がすものかと背中と腰に腕を巻きつかれて成す術がない。
 寝惚けてたのかな……今さら脱出しようとも思わなかったので、私は軽く先輩の腰に手を添えて胸板に額を押し付けるようにして目を瞑る。

「……」
「(まぁ、相談はまた後日で良いかな……)」

 額を押し付けたときに、背中と腕に絡まっていた手が心なしか強くなった。その暖かさで急激に眠気が襲ってきて、私はゆっくり夢の中に落ちていった。



「……ん」

 どれくらい時間が経ったのだろうか、昼寝をしたためか妙に頭はすっきりしていた。ぱちぱちと瞬きを繰り返して起き上がると、身体の上に誰かの上着が掛かっていた。

「(あれ)」
「起きたのか」
「先輩」

 娯楽室に置いてある椅子に斬島先輩が座っていた。上着は着ておらず、私は瞬間的にこれは斬島先輩のだと悟る。

「あ、上着、すみません」
「気にするな。起こすのを躊躇うくらい気持ち良さそうに寝ていたからな」
「……」

 顔が熱くなる。寝顔見られたのか恥ずかしいな。とりあえず苦笑しながらソファから立ち上がって先輩に上着を返す。
 というか私なんで寝てたんだっけ。

「名前?」
「いや、自分確か斬島先輩に相談があって来たんですけど……」
「なんだ」
「忘れちゃいました」

 ふへ、と笑うと斬島先輩はポカンとした後に少しだけ笑って「そうか」と私の頭を撫でる。忘れたということはそれほど重要なことではないと思うからまあ良いか。

「そういえば寝惚けて何かを言っていたぞ」
「え!? ち、因みになんて……?」
「……さぁな」
「えええええええええ!?」

 立ち上がって娯楽室を後にしようとする先輩を慌てて追いかける。なになに私凄い恥ずかしい事言っちゃったのかな? ふと一瞬だけこちらを見た先輩の顔、というか耳が赤いのに目が行って私もなぜか顔が赤くなった。


「……せんぱい」
「起きたのか」
「あ、じぶん、きりしませんぱいがすきです」
「……は?」
「……すー……」
「……」