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「じゃあ行ってくるね〜」

 お次は木舌先輩です。なんだろう、食堂へ消えるときに酒瓶が見えたのは気のせいだろう。

「木舌って料理とかすんの?」
「大抵酒飲んでいるイメージしかないな」
「やっぱり思ってることは同じなんですね」
「ていうかすげー酒の匂いがするけど大丈夫か?」

 平腹先輩の声に全員が嗅覚を研ぎ澄ませると、確かに咽そうなほど酒の臭いが充満している。え、これ大丈夫なのかな。

*(斬島視点)

「出来たー!」

 なぜだか酒臭い木舌が置いたのは玉子スープ。見た目は美味そうだが、明らかに何かが変だった。

「木舌、一応聞くが何を入れた?」

 谷裂が震えながら聞く、一方の木舌は飄々とした笑顔を浮かべて「食べてみて」としか言わない。名前の方をちらりと見ると訝しげな顔をしている。他のみんなも食べるためにスープを掬い口に含む。

「ぶっ!?」

 口に含んだ瞬間、俺含め他のみんなも噴き出した。食べた瞬間に広がったのはアルコール、つまりは酒の味。
玉子スープの割りには酒を呑んだ感覚に陥る、これ、本当にスープなのか。

「げほっげほっ! 貴様、これスープじゃなくて酒だろ!?」
「うん、お酒で作った!」
「てめっ……! ばかだろ」
「田噛、落ち着け」

 不味い。その一言だった。田噛が血管を浮かべツルハシを木舌に向かって投げようとしているのを止める。
一口呑んだくらいだから酔うことはないが、若干顔が赤い奴が何人かいる。呆然としていると佐疫がもう一口スープを呑んで言葉を発した。

「これ、結構度数高いね」
「作るならやっぱり高い方が美味しいかなって思って」
「これ食えねーよ〜」
「ぐすっ……うああぁ」

 各々文句が飛び交う中、それを制するように情けない声が響き渡り辺りが静まり返った。嫌な予感がして声がする方を見ると、空っぽの皿を持ちぼろぼろ涙を流す名前がいた。やけに静かだと思ったが……。

「ああ! 名前全部飲んでる!」
「マジかよ、なんでこんな不味いもん飲んでんだよ」
「酔った勢いで飲んだのかもな」
「うぇええええ!」

 酒のスープを飲み干してしまった名前に多少の賞賛を覚えつつ、どうするか考える。名前はあり得ないほど下戸だ、コップ一杯呑んだだけですぐに顔が赤くなり泣き出すという泣き上戸。近くの奴に絡みだしたりするので多少厄介だが放っておけばすぐに寝付く。
ひっきりなしに涙を流す名前を一瞥して呟いた。
 
「完全に酔ってるな……」
「木舌ぁぁああああ!」
「ちょ、谷裂まっ」

 木舌の処理は谷裂に任せよう。金棒を振り回す勢いの谷裂を無視して名前の肩に触れると、弾かれたように名前は俺の方に振り向いて飛びついた。

「うえええええ! きりしまぁ〜!」
「っ」

 普段とは比べ物にならない力で抱き付いてくる。相変わらず泣き止む気配はない。あまり刺激させないため背中を叩くが一向に泣き止む気配がない。

「うっうっ、たのしいねぇえええっ……! たのしいっ……ううううう」
「だったら何で泣くんだ」
「わかりませんんん」

 キリが無いな。どうしたものか。

「……どうすんだよ。こうなったら治んねーだろ」
「ほんとお酒弱いもんね名前は」
「木舌、責任取れ」
「え〜……じゃあ一回殺る?」
「不本意だがそれしかないだろう」

 治るには一日寝かすしか方法がないからな、だったら一回殺して再生した状態の方が早いか。

「食堂汚さないようにね」
「わかったよ……じゃあ骨折るから」
「きのしたせんぱいぃ?」
「ごめんね名前、再生するまで待ってるから」
「え、っ!」

 申し訳なさそうな顔をして、木舌はぼろぼろ涙を流す名前の首に腕を回すとそのまま力を込めて首の骨を折った。ゴキンと鈍い音が響き名前の身体は一瞬跳ねたがすぐに動かなくなった。あとは傍に寝かしておいて再生するのを待つだけだ。

「ま、とにかくコレは最下位だね」

 苦笑気味に言う佐疫に、全員が頷いた。

結果:最下位