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「じゃ、平腹エプロンこれね」
「おう! じゃあ作ってくるな!」

 エプロンを付けて、平腹先輩は食堂の奥へと消えていく。その間私達は暫し雑談をすることに。

「平腹先輩大丈夫でしょうか……」
「食えるものは出てくるだろ」
「田噛の言う通りだよ、うん」

 食堂の奥からガシャンとか「ヤベ」とか聞こえてきて不安が募る。気がつけばみんな無言になっていた。



「できたぞー!」

 お皿を持って出てきた平腹先輩、空気がピンと張り詰める。しかしそれに気付かない平腹先輩は自作の玉子料理をテーブルの上に置いた。それと同時に固まる私達。

「……なんだこれは」

 珍しく斬島先輩が戸惑ってる。そりゃなるわ、他のみんなも目を見張っている。そしてどんどん血の気が引いていくのが手に取るように分かる。

「目玉焼きに決まってるんだろ〜」
「目玉焼きというのは黒かったか……?」
「こういう姿の亡者いたよね……」
 
 佐疫先輩がポツリと発する。食べる前からぼろくろに言われてるけどヤバイ、なにがヤバイって変に大きくて液体状、しかも湯気なのか分からないけどブスブスを音を立てて出ている紫色の煙。これは果たして目玉焼きなのか、掠りもしてない気がするけれど。作った、というよりも何かを練成したんじゃないかな、先輩。

「どうやって作ったの、平腹」
「……ま、頑張れよ」

 佐疫先輩が平腹先輩に聞いている、気になる。どうしたらこんなものが仕上がるのか凄い気になる。一方でダルそうに目玉焼き(?)の皿を自分から遠ざける田噛先輩、食う気ないだろ絶対。

「えー、普通に焼いただけだぜ? 簡単に作れるもんなんだな〜」
「作ったというか、練成に近いですよね」

 私達の中には、本当にこれを食べなければいけないのか、という恐怖しかなかった。ていうかもう目玉焼き以前にこれ本当に卵から作ったの? やっぱり練成したんじゃないの。
だが必ず一口は食べなきゃいけないルールだし……でも怖い、死ぬのは別に良いがこれは食べたくない。

「名前、ほら食ってみろよ!」
「え」

 箸を使い暗黒物質を掴むと私の口元に運ぶ平腹先輩。キラキラした目で見てる、チラリと他の先輩達を見て助けを求めるが、視線を逸らされる。殺意が沸いた。

「(頑張れ名前)」

 あ、みんなの心の声が聞こえた。こりゃダメだな。そう思って私はなるべく意識を別の場所に飛ばそうと試みる。

「ほい、あーん!」
「んぐっ、ん……!」

 口に入れた瞬間、なんとも言えない臭い、おそるおそる噛んでみるとにちょ、がり、ぬちょ、と妙な感触が舌っつーか口内を侵して来る。
みんなが見守る中、絶対出すものかと頑張って咀嚼を何度かするが、飲み込もうとした瞬間とてつもない嘔吐感に見舞われて思わず立ち上がる。

「っ、うっ……!」
「名前!?」

 止まない嘔吐感に我慢できなくなり私はダッシュで洗い場へ走るとそのまま謎の暗黒物質を吐き出した。無理、飲み込もうとしたけど体が拒否った。
何度かそれを体内から出すべく吐き続けると心配した谷裂先輩がやって来て私の背中を擦ってくれる。

「おい大丈夫か」
「は、い」

 一通り吐き終えると差し出されたコップに口をつけて全て飲み干す。背中を擦ってくれた谷裂先輩に感謝して、さっきの場所に戻ると殆どの先輩達が真っ白な顔をして机に突っ伏していた。
皿を一瞥すると、少しだけ少なくなっている。ああやっぱり言い付け守ってみんな食べたんだ。そして遅れて谷裂先輩も震えながらそれを食すると、一気に顔を変色させて洗い場へと消えて行った。
 恐るべし平腹錬金術。

結果:判定外。