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短編
レッドブルート
※下ネタ注意

「名前ー!」
「なにおそ松……、こんな時間に……」
「遊びに来た!」
「え。お引取りください」

 仕事が終わってお風呂夕ご飯と済ませて束の間の自由時間を何に費やそうかと考えていた時に、お隣に住む松野家の長男(因みに六つ子で全員成人無職)であるおそ松が夜二十二時に我が家を訪ねてきた。しかも尋ねた理由が遊びに来たとか迷惑極まりない。

「んだよツレないな〜、最近全然二人っきりになれなかっただろ?」
「平日はそれが普通なんだけどね。私ちゃんと働いてるし無職な君とは違うんだよ」
「お、ベッドカバー変えた? 最近寒くなったもんな〜」
「寒いの苦手だから、って! 入るなコラ!」

 外から入ってくる夜の風は寒い、遠慮無しに私の部屋に入るおそ松に呆れ交じりのため息を零しつつも私は彼の後に続いて部屋の中に戻った。「下着はどこだ〜?」とか言いながら脱衣所に行こうとするおそ松の襟首を引っ掴んでホッとカーペットが敷いてある床に座らせる。「お?先にシャワー浴びる?」となんかもう頭痛くなることを抜かすのを華麗に無視し、目の前に私も座った。

「おそ松さん」
「おう。なんだ、あれか? 愛しい恋人の訪問で欲情したか!?」
「するわけないでしょ! いま夜だよ? 夜十時」
「家に居ても兄弟達うるせぇしな〜、あいつ等全然俺を敬んねぇし」
「あー……六つ子も大変だね」

 なんか前に愚痴ってたなぁ、服はいつもダース買いで大人になっても比べられる、みんな性格がバラバラだから味方というよりかは五人の敵と暮らしてるのと同じモンだ! と夜な夜な聞かされた時は流石に参った。
 でも、まあ最近会えてなかったしこうしてゆっくりと二人で過ごせなかったから突然の訪問には吃驚したけれども嬉しくないかと言われたら嬉しくない訳が無い。明日は仕事休みだし、早めに寝ようかと思ったけど彼と二人で夜更かしも悪くないかな……?

「あ〜あ。名前、一緒に暮らそうぜ〜」
「養って貰う気満々なの隠せてないからね」
「ひたすら遊んで暮らしてー!」
「このニートめ……。あ、はいパジャマ」
「弟の?」
「うん。今日夜勤で帰ってこないから」

 私には双子の弟が居る(ちゃんとした社会人)互いの仕事柄起床や消灯時間がバラバラだし、向こうは良く職場に泊まる事があるから二人で暮らしているのに一人暮らしの感覚が結構強い。だからなのか良く分からないが、タイミングを知っているのか良くおそ松は弟が居ない時にこうして突撃して来る事が多い気がする。「つかどうせ脱ぐしパジャマいらなくね!?」とか喚くおそ松に「早く着替えろ」とだけ言い身体が温まる飲み物でも用意するかとキッチンへと足を運ぶ。
 あー、どうせなら夜食でも作ろうかな。いや、お酒でも良いかな。んー……冷蔵庫や戸棚を漁りながら頭を捻らせていると後ろから身体を引っ張られ、背中に暖かいものが触れた。

「名前ー、兄ちゃん寂しくて死んじゃう」
「おそさんおそさん、夜食とお酒どっちが良い?」
「名前を食べたい」
「面倒だからお酒で良いか」
「名前ー! 構ってよー!」
「うわっ、ちょっとやめっ!」

 わぁわぁ喚きながら私の背中に頭をぐりぐり押し付ける駄々っ子おそ松。この我儘具合は、なんというか母性本能がとても擽られるのだけどよくよく考えればこいつは成人男性だ、いい年して遊んでくらしてー! とか養って! とか言っちゃうニートなのだ。いや、けどなんやかんや好きなんだよね、おそ松のこと。惚れたモンの弱みって奴かな。

「セックスしよーよ! 俺の童貞貰ってよー!」
「はっ!? なに言ってるの馬鹿!」

 付き合って結構経つけど、未だに私とおそ松にそういった関係は無い。なんというか、将来の行く末もあるけどそういう雰囲気にならないだけ。泊まる時や二人っきりの時にこういったこと言っちゃうからね、うん。
 どうするかコイツ。殴って気絶させた方が良いのか。

「先っちょ! 先っちょだけで良いから!」
「うわああもうやだ何この変態! ムード考えろよ!」
「大丈夫だ、きちんと考えてるからゴムもあるぞ!」
「そういう問題じゃなあああい!」

 血走った目で食いついてくるおそ松の顔を押しのけて私も負けじと対抗する。職業柄力はちょっとあるので常に家でだらだらごろごろしている奴には多分負けないはずだ。

「え、ちょっと痛い痛い! 爪立てないで!」
「だったら身体弄るのやめい!」

 攻防戦を繰り返しながら、妙にいやらしい手つきで腰や太ももを撫でてくるおそ松の手に爪を立ててみるが、懲りてないのか諦める気配が見られない。必死に対抗をしているのに、なぜか身体が熱くなってきて目の前が少しだけぼやける。

「あれ、名前おっぱい大きくなった?」
「ひっ!? さり気なく揉むな、ん、ぁっ……」
「あ、今の声エロい」

 パジャマの上から胸を揉まれたかと思ったら、もう片方のおそ松の指が躊躇無く私の口の中に入ってきて、舌に触れた。

「ふっ……」
「おっと」

 不意を突かれたせいで、一瞬だから身体の力が抜けてそれを狙ったおそ松が器用に私の身体を移動させ、押し倒す。キッチンの床は酷く底冷えでかたくて、氷の板の上に寝転がったような感覚がじわじわと背中を浸す。脱ぎ捨ててあったおそ松の服が頭の下に置いてあり、目の前にはそれを着ていた本人がギラついた目で私を見据える。

「名前」
「ぅ……」

 吐き出された息が妙に熱く、じわりじわりと上り詰める熱で目の前が霞み火照った手が私の頬に触れた。

「……おそま、つ」
「…………っ」

 震える唇で、名前を呼べば真っ赤になって何故か涙を滲ませるおそ松が居て五月蝿いくらいに心臓が鳴り響く。ばか、泣きたいのはこっちなのに。
羞恥と困惑、少しだけ脳内を蝕む恐怖心は、獣のように瞳をギラつかせながらも、どこか不安気に顔を歪める顔をおそ松を見たらゆっくりと消え去っていく。

「……名前、喰べて……良い?」
「……うん」
 
 今なら、この赤い獣に、喰べられても良いかもしれない。

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ギャグで終わらそうと思った、です。
おそ松兄さんは多分いざ本番となるとへたれたらなーと言う妄想でした。

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