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「#幼馴染」のBL小説を読む
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- ナノ -
短編
昨日よりももっと好きになる
「ナマエ」

 昨日、うろつきと僕が話していたときに偶然現れたナマエは、普段なら一目もはばからず僕の名前を呼んで抱き付いてくるのに、その時の彼女はただ複雑な顔をして師匠のところへ走って行ってしまった。一日経って機嫌も良くなっただろうなんて思っていたのに態度は変わらない、無視されてばっかりだ。さすがの僕もここまで来ると少しだけ苛立ってくる。

「ねえナマエ、どうしたの」
「……」
「ナマエ、……!」

 体育座りのままじっと動かず、黙秘を決め込むナマエのセーラーの襟首を掴んで引き寄せるとガラス玉みたいな瞳からは大粒の涙が零れ出ていた。ぎょっとして言葉を詰まらせれば、ナマエは表情を歪めて乱暴に涙を拭っている。

「な、なんで泣いてるの!? どこか痛いの?」
「違う……」
「恐いの? 昨日から様子がおかしいよ、どうしたの?」
「……っ」

 ごしごし涙を拭うナマエの色白の腕を制して、顔を覗き込めば気まずそうな顔しながらもナマエはぽつぽつと言葉を洩らす。

「学ラン君、昨日うろつきに学ランあげてた」
「うん」
「……私、もらったことないのに……」
「う、ん?」
「ずるいって、思って……そしたらなんだかうろつきに嫉妬しちゃって……むしゃくしゃして師匠を殺しに行ってた」
「……」
「そしたら、やっぱり背後を取られて何か察したのか「彼ではなくて私にしませんか?」とも聞かれた」
「……」
「やけくそでうん、と言おうとしたけどやっぱり学ラン君こと大好きだし、裏切れなくて……逃げてずっとここに閉じこもってた」
「ナマエ」
「エフェクトだって分かってるけど、むしゃくしゃした」
 
 徐々に顔に熱が上り詰めていくのが嫌でも分かった。なんだこの子、可愛すぎるだろ。赤い顔を悟られないように顔を逸らして彼女の頭を撫でれば止まっていた涙がまた溢れ出て彼女は俯いてしまった。
エフェクト如きで、嫉妬しちゃうなんて、それって僕凄く愛されてるってことだよね。幸せすぎて死にたい。師匠はとりあえず後で物申すけど。

「ばかだなぁ」
「っ、だって……」
「君だってセーラー服をあげるじゃないか」
「……異性と同性じゃ、違うもん」

 真っ白な白セーラーと、僕の真っ黒な学ラン。この二つはエフェクトだからうろつきにあげれば彼女も同じものを着ることが出来る。この前ナマエとうろつきは同じ服を着て和気藹々していたのに……女って不安定な生き物だ。ナマエもやはり女の子なんだ、愛おしい。
彼女の可愛さで眩暈がして抱き締めたいけど、我ながらキャラじゃないから羽織っていた外套を外し彼女にかけて触れるだけのキスをする。

「学ラン君、」
「ほんとに馬鹿。言ったら幾らでも僕ので良ければあげるのに」
「呆れ、ないの?」
「だって嫉妬ってことは、愛されてるってことでしょ。僕もナマエが好きだから全然嫌な気分にならないし呆れたりもしないよ」
「うううう……」
「ああもう、泣いたら不細工になるよ」

 笑いながら彼女の目から零れ出る涙を掬い取れば外套を大切に抱くナマエは、そのまま目の前に座っていた僕に寄り掛かる。どうしてこうも、愛おしいのか。べた惚れすぎて大概だなぁ、青汁とかにからかわれるのが分かった気がする。

「学ラン君大好きぃ……外套有難う、でも良いや」
「え? 欲しいんじゃないの? 替えはあるから構わないよ」
「ううん、違うの。……付けてあげる」

 泣き笑いで外套を脱いだ彼女は、少しだけ背伸びをして僕に外套を付けさせる。近付いた彼女の顔や身体からは仄かにいい香りがして、無意識に両腕が彼女の背中に行くが自我を保ってそのまま何気なく自分の背中へと動かしていく。
外套を着け終えた彼女は、満足そうに笑ってそのまま僕が羽織っている外套の中へと潜り込んできた。

「ナマエ……?」
「学ラン君のを身に付けるのも良いけど、こうしている方がなんか、学ラン君に全身包まれてる感じがして好き」
「……幾らでも抱き締めてあげるのに」
「言ったら素直に抱き締めてくれる学ラン君なんて、学ラン君じゃないよ」
「……」
「偏屈で憎たらしくて、けど優しくて私のことを第一に考えてくれる学ラン君だからこそ好きなんだよ」

 どうしてここまで素直に言葉を吐けるのか、治まっていた熱が再び放出されて思わず帽子を目深に被る。外套の中で不思議そうに見上げるナマエに顔を見られないように、彼女の首もとに腕を回して抱き締める。やわらかいし、良い匂い、僕が好きな感触。

「学ラン君今日はなんか素直だね」
「誰のせいだと思ってんの」
「誰でしょうねぇ?」

 どこか憎たらしい、けどそれ以上に愛おしくて好き、という感情が溢れ出て来る。多分、昨日よりももっと僕は彼女に恋をしているだろう。

「ナマエ、好きだよ」
「私も学ラン君大好き」
「けど、師匠に靡きそうになったのは許せないかな」
「え、いやそれは」
「嫉妬した可愛いナマエ見たら興奮してきちゃった、行こうか」
「嫌な予感しかしない! ここは逃げるが、」
「逃がすわけ無いだろう? 僕から逃げ切れると思ってるの?」

 さあっと血の気が引いていく彼女の身体を担いで、僕は鼻歌を歌いながら踵を返した。

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学ラン君! 拙宅では偏屈で毒舌でちょっと小生意気な少年です。
夢主は、白セーラーを着ているのでデフォ名はセラ子かなぁ、師匠を常日頃狙っている。セラ子と学ラン君はラブラブカップル設定、無駄にイチャイチャしてそう。

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