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- ナノ -
短編
過保護な彼
「っ、ナマエ!」
「……あ。眞白」

 小さい頃から幼馴染であり、彼女のナマエが運悪く嵯峨野と出会ってそのまま戦ったら大怪我をして帰ってきた。
その頃俺は架月と一緒に掃除をしていたから連絡が入ってきたときは本当に心臓が止まるかと思った、多分実際少しは止まったんじゃないかな。
 死に物狂いで神社に帰れば包帯だらけで布団に寝かせられたナマエがいた、痛々しさに顔を歪む。

「なに暢気に俺っちの名前呼んでるんだよ! こんなに大怪我してっ……!」
「落ち着け眞白、ナマエの傷に響く」
「……ごめん」
「ちょっと攻撃してすぐに退散しようと思ったんだけど思った以上に激戦になっちゃって……まさか最後にあんな攻撃してくるなんて思わなかったよ」

 苦笑するナマエ、だけど傷に響いたのか再び顔が歪んだ。嵐昼は小さな傷の上に絆創膏を貼ると立ち上がった。

「とりあえず出来る限りの手当てはして置いたから暫く安静にするようにな」
「わざわざ有難う嵐昼」
「今度は無理はするなよ?」
「はーい」
「それじゃあ、後は頼んだぞ」
「うん……」

 嵐昼がぽんと俺の肩を叩いて部屋を後にした。残された俺は横になっているナマエの傍にドカッと座り込んで苦笑を零す。

「……酷い有様だねぇ」
「ごもっともですよ、あはは」

 布団を巻くって見ればナマエの体は、本当にあちこち包帯に巻かれている、というか包帯が服みたいだよどんだけ戦ったんだよこの子は。
 頭にも丁寧に包帯が巻かれていて、じんわりと血が滲んでいる、なんかもう泣きそうなんだけど俺。

「骨折とかはしてない? 刺されちゃったりしてない?」

 見た限り重傷なのは分かるが、骨折とかしてないか本当に不安だ。
俺は軽くナマエの頬を撫でながら言葉を投げかけると、彼女は少し顔をこちらに動かして言葉を紡ぐ。

「骨折はしてないよ。……あとは殆ど擦り傷とか切り傷だもん。ただ頭中心にやられちゃってちょっと危なかったかも」
「……痛いでしょ」
「うん、痛い。ちょっと泣いちゃった」
「よくここまで戻って来れたね」

 傷に触れないように、彼女の髪の毛に触れればナマエは目を細める、それが可愛くて笑うと口元を緩めた、ああもうゆるゆる頬が緩んでニヤけそう。
言葉を待っているとナマエは困ったような顔をしてさきほどの事を思い出すかのように黙り込んだとかと思えばすぐに口を開いた。

「……ううん、実際は頭を強打して気絶した。皮肉にも嵯峨野に神社付近まで運ばれて、そこで嵯塔さんに見つかって今に至る」
「……はぁ」

 重たいため息を零す。
俺っちとかげっちゃん二人でも苦戦する相手なのに、ナマエ一人で向かうなんて何て無謀なんだ。確かに、ナマエはあやかしの中でも結構戦闘力などが高い部類に入るけど男二人でも叶わなかった相手に歯向かうなんて、ほんとにもう。

「頼むからあまり危険な行動はしないでよ」
「だけど倒さなきゃいけない相手でしょ? 尻尾巻いて逃げるなんて出来ないよ」
「それはそうだけどさ……ナマエが大怪我したらおちおち掃除出来ないよ」
「うん、ごめん」

 力なく笑うナマエ、本当は痛みで辛いはずなのにどうしてそんなに笑顔になれるんだよ、不甲斐なさでギュッと唇を噛み締める。

「ナマエ、何かあったらすぐに俺っち達に言ってくれ。お前の辛そうな顔見たくないし、こんな大怪我されて来たら俺っち……辛いよ」
「……」

 小さなかすり傷ですら不安になるのにこんな大怪我されたら神社から出るなって言いたくなるよ。俺もたいがいナマエにほれ込んでるなあ。

「人間だったら死んでたかも知れないんだよ?」
「あー……それは思った、私頭強く強打した時の痛み半端なかったもん、多分人間だったら頭蓋骨陥没だね」
「えぇ!? 大丈夫なの!?」
「あやかしの中でも私達の血筋は結構回復量早いからさー」
「それは知ってるけどさぁ。あ、そうだなにか食べたいものとかある?」

 会話しているうちに、うっすら彼女の傷口が塞がれていくのが分かる。後はたくさん寝て、美味しいもの食べて貰わないとな。

「んー………………どら焼き、食べたいかも……」
「どら焼き?」
「うん、噛み応えがあまりないもの」
「俺っちが口移しで食べさせてあげるのに」

 ふざけたえような顔で言えば、ナマエは眉を潜めている。あれ、俺なにか悪い事言ったかな。

「相手の虫歯菌がうつって他人の唾液で味が消えかかっているグチャグチャになった食べ物なんて死んでも食べたくない」
「……冗談なのに……ナマエちゃん超現実的……」
「いや、そういう展開は漫画とか小説だけだから」
「ちぇっ。どら焼き、嵐昼から貰ってくるね」
「ありがとー」

 うーん、可愛いけど妙に現実的なところは頂けないな。



「ほい、どーぞ」
「ぁー……ん…………うま……」

 嵐昼から貰ったどら焼きを食べさせてあげようと差し出すとナマエは大人しく口をあけてどら焼きを一口齧る。
もそもそ食ってる姿小動物みたいですっげー可愛いー。

「飲み込むたびに体がなんか痛い」
「んー。でもなんか小さい切り傷とか回復してない?」

 さっきまであったと思われる頬の切り傷がいつの間にか薄くなってる、というかなくなってる……?
すっげー回復力、俺もこういう血筋に生まれたかったな。

「小さな切り傷とかは大体数十分で直るよ、だけど全部回復するには一週間くらいかかるかな? そこまで深い傷はないから」
「早いなー。羨ましい」
「ふふ」
「食べたらすぐ寝てね? ほら口開けて」
「ぁー……」
「(……可愛い)」

 ゆっくりどら焼きを食い終わったナマエを俺は寝かせる。

「早くよくなってね。よくなったらどっか遊びに行こうよ」

 ぽんぽんと優しく布団の上から軽く叩くと、ナマエは痛みがやわらいだのか少しだけ笑顔を見せた。

「ん。そだね」
「へへ、かげっちゃんには内緒でデートしようよ」
「なに言ってるのさ、いつも三人一緒だったじゃん」
「ぶー」

 俺はナマエと二人っきりが良いのになー……。小さい頃からずっとナマエが好きなでやっと付き合えたのに……。ナマエは人当たりもいいし強いしカッコイイし可愛いからあやかしの中でも結構人気高いし、てか彼女の血を引くモノ達はみんな人当たりが良いからなー。
チラッとナマエを見れば、眠たそうなのかうとうとしている。

「このまま寝ちゃいな」
「えっと、眞白はいつまでここにいるのかな?」
「ナマエが寝るまで」
「私は大丈夫だよ?」
「だーめ。こんなに怪我してるのに一人にできないよ」

 寝顔を見られるのが嫌なのか、やや頬を赤らめてナマエは口元まで布団を持ってくる。あーもう可愛いなあ……。

「……眞白の過保護」
「うん、ナマエ限定でね」
「ばーか」
「ばかで結構。おやすみ」

 電気を消して、ナマエの目に額を静かに乗せる。
数分後には小さな呼吸音だけが聞こえてきた。

「……頼むから、あまり無理しないでくれよ」

 傷だらけの彼女の頬にそっと指先を這わせて小さく言葉を漏らした。
さて、俺もこのまま寝ちゃおうかな。深い眠りについている彼女の隣に雑に寝転んでそのまま目を瞑った。


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人間のデフォルト名:日暮 栄真(ひぐらし えま)
あやかし時だと片仮名でエマかなーって思ってます。
人間用とあやかし用の二人います。ほぼ容姿同じですけど。
あかあか好き増えて下さい(土下座
眞白は彼女に凄く甘そうです、デレデレ。で、架月にドン引かれる。

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