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グレエゴリーホラーショー

「ナマエ、最近審判小僧とどうなの?」
「んー、相も変わらず進展は無いかな」
「ちぇっ」
「なにそれ」

 破顔した彼女の口元に目をやった瞬間、鋭い歯がチラリと覗く。手には輸血パックが握られていて、彼女が普通の人間ではないことを物語っている。ナマエは、この学園で教師をしている吸血鬼の父親と、人間の母親の元に生まれた半吸血鬼の女の子。吸血鬼一族の特徴である赤い瞳と尖った歯、そして血を吸うために相手を誘惑できるほど、息をするのも忘れてしまうほどの美貌を持っている。一族の特徴もあると思うけど、彼女の母親も凄く美人だったのでその血もあるだろう。嫉妬を通り越してナマエはアタシの憧れの存在だ。

「ナマエは可愛いよね」
「ガールだって可愛いじゃん、もっと自覚持ちなよ」

 至極当たり前のように言葉を放つナマエ。さらりと恥ずかしい事を言ってきたので少しだけ言葉が詰まる。同性なのに惚れてしまいそうだわ。そんな子があの元不良の審判小僧と付き合うなんてほんと奇跡だよ。

「アタシはなー」
「この前告白されたのは、どうなったの?」

 残り少ない輸血パックに入った血を全てストローで啜り上げて、ぐしゃりとパックを握り潰した。彼女の口元は血がこびり付いていて、見ている側は何が美味しいのか全然分からないけどナマエはいつも美味しそうに飲んでいる。
 告白、そうだ、この前男子に呼び出されて告白されたんだよな、見た目も性格も不満は無かったけど今は異性と付き合う気なんてさらさら無かったから断った。

「断ったよ。今は付き合う気なんてないし」
「ふうん?」
「アタシはナマエと審判の話聞いてる方が楽しいよ」

 ニッと笑って言えば、ナマエはもう、なんて言いながら頬を膨らませた。ああ可愛いなぁもう、母性愛かは分からないけど妙に胸がきゅんとする。

「ガールに好きな人が出来たら、もちろん応援するからね」
「審判でも?」
「自分で言うのもアレだけど、多分審判は私にベタ惚れ」
「ふはっ! 言えてるわ! この世は女子はナマエしかいないってかんじだもんね」

 けたけた笑えば、悪戯っぽい笑顔でナマエも笑った。ナマエの彼氏の審判小僧は、出会った当初から彼女に一目惚れしてかなり必死に押しては引いてを要してお付き合いを始めたらしい、元々不良だった彼を知っていたアタシにとってはもうなんかその日々は面白かったなー。付き合った今でも審判は相変わらずナマエにべた惚れぞっこん首っ丈、彼女にちょっかいを出すものがいたなら男女問わず牽制するほどだし。

「あーぁ、イケメンな年上いないかなぁ」
「タクシーさんとか良いんじゃない?」
「いやいやいや、さすがにアタシにも好みくらいあるわ」
「ふふっ、そーだね」

 彼女が笑うたびに真っ黒な艶のある髪がさらさらと揺れる。というか本当にナマエって綺麗だよなー、尊敬する。よく分からないけれど。

「そろそろ帰ろうか。あまり遅いとグレゴリーうるさいし」
「そうだね、怒られるの嫌だし」

 学園の教室で話していたらあっと言う間に時間が経っていて、もう寮に戻らないといけない時間だった。ヘタに遅い時間に帰ると管理人のグレゴリーうっさいもんなあ。立ち上がって鞄に荷物を纏めているとばたばたと足音が聞こえて教室の扉が開いた。

「ナマエ! ガール、迎えに来たよ」
「審判」
「なにアンタ来たんだ」
「僕もいるよ」

 ブレザーの下に目が痛くなるような配色のボーダーが入ったパーカーを着ている審判小僧と真面目なのかきっちり制服を着ているボーイが迎えに来てくれたらしい。アタシとしてはナマエと二人で帰りたかったんだけどね。まあこの二人が居ると楽しいから良いけど。

「女子会楽しかったかい?」
「うん。またやるつもりだよ」
「え〜、その時は僕も一緒に連れてってよ!」
「無理だから」
「審判、あんましナマエに迷惑かけないでよね」
「ガールのいう通りだよ審判、ベタベタしないでよ羨ましい」
「アンタは妬みかい」

 呆れたようにアタシが言えば、同じく呆れ気味にナマエが笑った。

「ナマエも怒らないのが偉いよな」
「もう慣れたからねぇ」
「ほんと尊敬するわ」

 どんな事にも臨機応変に対応できるし、本当に尊敬だわ。あなたの憧れの人って誰ですか? って聞かれたら間違いなくナマエって答える。
半分放置された審判を見れば、なぜだか半泣き気味になっていてほぼ拗ね状態。めんどくさい。

「ナマエは僕とガール、どっちが大事なんだい!?」
「ガール」
「うっ」

 審判小僧がこの世の終わりとでも言いたそうな顔で呻いて嘆く。アタシは真っ先にアタシを選んでくれたナマエの思い切り抱き付いた。

「ナマエ大好き!」
「私もガール大好きだよ!」
「仲良き事は美しきことなりだね」
「うぅっ……僕死にそう」
「ナマエ」
「うん?」

 自分より数センチ低いナマエの手を取って、アタシは彼女の手の上に短くキスをする。吃驚した表情のナマエを見てしてやったりという意味を込めて笑って言う。

「尊敬! ナマエのこと敬愛してるんだよ!」

 そう言えば、ポカンとした表情をしていたナマエははにかんで、今度はアタシの手の上に自身の唇を押し当てた。いきなりの行動にドキリとする。

「私もガールのこと敬愛してるし、大好きだよ!」
「ナマエっ……!」

 友情が深まった、そうお互いに感動している間に審判小僧は「ナマエ! 僕の方が君の事好きだよ!」と今にも抱きつかんばかりの勢いをボーイに止められてる。あの馬鹿は放っておこう。

「帰ろうか!」
「うん!」

 審判小僧のケアは、きっとボーイがやってくれるだろう。アタシとナマエは仲良く二人で並んで寮へ戻るため足を出した。

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ガール友情夢でした。学パロではガールはリヴの父親リヴァルさんではなく、ゴールドに片思いしてる設定でいいかなぁって思ってます。

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