『おはよう、雀ちゃん☆』
「……おはよーございます」
土曜日の昼前、わたしと鴎は部屋でゆったり過ごしていたらインターフォンが鳴り、出てみたら何故か私服姿の禊先輩がいた。
「なんでいるんですか」
『昨日お呼ばれされたのを思いだしてね☆』
「呼んだ覚えは一ミリもないんですけど」
『えー? 昨日「親がいないので、わたしの家に来ませんか……?」』『って恥じらいながら言ってくれたじゃん!』
「先輩それ絶対夢だよ。病院行け。だいたいわたし鴎と二人暮らしですし」
『冗談冗談』『二人暮らしなのは知ってるよ! お弁当は一緒に作ってるんでしょ?』
「なんで人ん家の家庭事情知ってるんですか」
『愛故だよ』
「くたばれ」
キラッと効果がつきそうな笑顔。しかも親指、人差し指、小指だけを突き立てて顔の横に持ってウインク付ける先輩は正直可愛いけどさ、色々ツッコミがありすぎて訳分からん!
「なに、雀どうしたの?」
テンションダウンした私の声を聞きつけたイトコの鴎が、居間の方から歩いてこちらへ向かってきた。
「いや、禊先輩がいて……」
「え?」
『やあ鴎くん!』
「なんでいるんですか」
『あ、雀ちゃんと全く同じツッコミ』
「まあ、とりあえず上がってください」
「上げちゃうの? 下着とか荒らされちゃうかもしれないよいや別に心配してるわけじゃないんだけど仮にも雀は女だしそこら変の女子よりは顔面偏差値やスタイルはレベル高いもん。ましてや球磨川先輩はもはやストーカーレベルに雀のことを好いているからそこらへんちょっと私心配だなー」
『随分』『失礼なことを言うね鴎くん』
「いや限りなく鴎は正当を主張してますよ禊先輩」
『え、僕ってそんなに信用ないの?』『ちょっとちょっとそんな目で見ないでよ!』
よよよとハンカチを噛み締めて泣き出す禊先輩にドン引きしつつ玄関前でのたれ死なれても困るのでとりあえず部屋へ上がるよう催促する。
「まあ、とりあえずどうぞ」
「私お茶入れてくるねー」
「変なの盛らないでね」
「いくら球磨川先輩だからってそんな事しないよ」
反転院ならやるけど。ととんでもない言葉が聞こえてきたけどわたしは敢えてスルーを決め込む。
『おじゃましまーす!』
はきはきとした笑顔で上がりこむ先輩、リビングへ通して座っててもらうとしたら、パサリと先輩のショルダーバックから何かが落ちた。
「ん? 先輩何か落ちましたよ」
しゃがみ込み拾い上げると、それはCDケースくらいの大きさのアルバムだった。
真っ黒なプラスチックで出来た革製の表紙だ、随分ぎっしりと写真が入ってるな。
『あ、待って見ちゃダメ!』
「なんだろ……。……!?」
先輩の言葉を聞き終える前に、わたしはアルバムを捲った、そして体が硬直したのを覚えてる。
一通り理性を保ってパラパラと写真を捲り、にっこり笑顔でアルバムを返しながら先輩の方を向く。
先輩に冷や汗を垂らしつつも笑顔だった。
「……何ですか、そのコレクション」
『え、えっとー……雀コレクション?』
アルバムの中身は、全部私の写真だった。
盗撮レベルとまではいかないが何かちょっと危ないものが数枚、どっから撮ったんだよソレと思うようなものがいくつかあった。
「まるっっっきり盗撮じゃないですか! なにやってるんですか!」
『痛いイタイイタイ! ごめん! ごめんね雀ちゃん!』『イタタタタタ! 禿げちゃう! 禿げちゃうから髪引っ張らないで!』
「二人共騒いでなにしてんの」
ぎりぎりと先輩の髪を引っ張りながら罵っていると騒ぎを聞きつけた鴎が顔を覗かせた。
「鴎、わたしちょっと先輩と出かけて来るね」
「え、大丈夫なの? 着いて行こうか?」
「平気平気、すぐ戻るから。……行くよ球磨川」
『ついにタメ口呼び捨て!? 怖いよ雀ちゃん!』『スキル使わないで!』
怒りで出たスキルに身を任せてわたしは先輩の襟首を掴んで家を出る。
「禊先輩、切り刻まれるのとぐちゃぐちゃにされるのどっちが良いですか?」
『そんな可愛い笑顔で惨いこと言わないで!』『待ってこれには色々わけがあるんだ!』
「訳ってなんですか! どうせくだらないことですよね?」
『夜のオカz』
「死ね」
『』
どこかから、球磨川先輩の断末魔が聞こえたけど雀なにかしたの? と鴎に聞かれるまで後数時間。
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