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「雀、昼飯食おう」

 ひょこっと私の机の前に現れたのは、同居人でありイトコでもある鶴喰鴎。
私と同じデザインのお弁当箱を持っている。そりゃそうだな、だって作っているのはわたしと鴎だし必然的にお弁当箱も同じデザインになるよね。

「うん食べよう!」
「そうだね、まあ私は一人で食べても別にいいんだけど雀一人だと可哀想だし。ほら私大人だから一人で食べる女の子を放っておくわけにはいかないでしょ? ネットとか私やらないから知らないけどそういうのボッチ飯っていうらしいねー。」
「はいはい有難う御座います鴎サン」
「……適当だなぁ」
「ふふ。ごめんごめん」
「食べる前に飲み物買いに購買行こう。私なんか飲みたいわー」
「そうだね、行こっか」

 私と鴎はお弁当を机の上に置いたまま教室を出て廊下へと出る。その瞬間、私の中でイヤな感じが駆け巡った。

「ひっ……」
「どうした?」
「誰か、来る」
「え?」

 ぞわぞわと背中を指で伝うような感覚に襲われる、絶対これはあの人だ、あの人以外いないし……。

『あ、雀ちゃ〜ん!』
「み、禊先輩……!」
「球磨川先輩……」

 球磨川禊先輩だった。相変わらずきらきらの笑顔を向けてなんか廊下をスキップしてるし。

「にこやかにステップしないで下さい! そしてわたしの名前を大きな声で呼ばないで下さい!」
『またまたあ』『照れちゃってえ!』
「ちょ、先輩!」

 禊先輩は勢い良く私に抱き付いてくる、わああああああああ! スカートに手をかけてきた!

「く、球磨川先輩何してるんですか!」
『愛を育んでいるんだよ』
「死んでください」
「死ね」
『もう二人共仲が良いなあ』
「……で、どうしたんですか? 禊先輩」
『廊下を歩いていたら偶然マイハニーを見つめてきてね!』

 語尾に星マークをつけてそうな勢いでパッチリウインクを決める禊先輩。
無駄に可愛いのに腹立つけど発言で可愛さの欠片もなくなった。

「まさかとは思いますけど、マイハニーって雀のことですか?」
「断じて認めません」

 半ば呆れ気味で鴎が禊先輩に言葉を投げかける、それに重ねるようにわたしも呆れて言葉を放つが一定の時だけスペシャルウルトラポジティブ思考な禊先輩はそんな事を全然機にしてないようです。

『雀ちゃん忘れちゃったの?』『あの時僕に抱きついてくれたじゃ』
「あああああああああああ! ストップ! ストップですそれ以上言わないで下さいあれはマジで不可抗力っつーか仕方ないんですだって禊先輩わたしの方見ないですぐに背中向けて行こうとしちゃったじゃないですか、だってあのまま腕だけ掴んだら最悪振り払われちゃうかも知れないじゃないですか? だから抱きついて先輩の動きを止める、そう動きを封じる! ああするしかなかったんですよそうです不可抗力なんですあれしか方法なかったんです! あれは偶然かつわたしの戦略ですよ、さすがわたし大人な女性!」
『イヤだなぁ、照れなくてもいいんだよ!』『にしても、ほんとに鴎くんと雀ちゃんって似てるね」
「え?」

 私は色々否定したかったけど、特に禊先輩の言っていた後者が気になる。どういう事?

「色々ツッコミたいけど、どういう事ですか? 球磨川先輩」
『だってマシンガントークの時に目を合わせないところが全く同じだもん』『二人共見た目も結構似てるけど中身も同じなんだね! 実はキョウダイなんじゃない?』

 禊先輩の言葉にわたしと鴎は多分同じ顔でキョトンとしているだろう。
だって今まで全然そんな事意識していなかったら、意外なことを言われて吃驚している。

「私達ってそう見えてるのかな?」
「どうだろう……? 全然意識したことないから分からないや」
『二人共気付いてないだけだよ』『ほんとにソックリだよ?』
「そう見えてるんですねぇ……身内が同じ学校にいるとそうなるんですね」
『うん!』『て事で雀ちゃん、制服デートしよう!』

 さり気なくセクハラをして来た禊先輩を、わたしと鴎は全く同じタイミングで殴ったらしい(見ていた同級生に言われた)。



「善吉〜! いつめだかと結婚すんの?」
「ぶっ!?」

 放課後、帰りの仕度をしている時にふいに私は疑問に思ったことを善吉に投げかけた。

「いいいいいいいいきなり何言い出すんだよ! 雀!」
「ふと疑問に思ったことを君に投げかけただけだよ」
「行き成りすぎるだろ!」
「わたし的には数年後大人になった善吉が黒神グループの関係者になって、動物に好かれためだかに行き成り戦いを望み、お決まりの「俺が勝ったら結婚してくれ!」と言うと思うの!」
「なにそれ妙に詳しすぎて怖い」
「でも宇宙船とかの時に一回プロポーズしたんだよね、マジで死亡フラグだったよアレ、てか死亡フラグでしょ」
「うるせーな! なんだって良いだろ!」
「やだ顔赤い善吉ちゃん」

 ニコニコ笑いながら耳まで真っ赤にしている善吉の頬を突く。
軽く悪態をつきながらじゃれ合っていると、善吉が話を逸らすように声を発した。

「カッ! お前だって球磨川先輩といつ結婚すんだよ」
「付き合ってないし」
「付き合ってるようなもんだろ、あんなにイチャついていれば」
「一方的なセクハラですよあれ」

 そもそも告白もしてないし、向こうが一方的に絡んでくるだけだしね。
うん、あれ、でもわたし最近はそこまでイヤじゃなくなって来てるんだよね……。なんやかんや言いながら酷いセクハラ以外は受け入れてるし。

「(あれ……?)」

 なんだろう、この気持ち。

「雀? どうした?」
「……やばい。惚れてるかも」
「はあ!?」
「どうしよう善吉、わたし、禊先輩に惚れたかも知れない」

 徐々に顔が熱くなってきている、でも今までの行動を振り返ればそうだよな、禊先輩に避けられたときも凄い辛かったし思わず泣いちゃったし……うああああ……わたしってマセてるなあ。
熱くなった両頬に手を当てる。

「ま、マジかよ」
「ひゃー……恥ずかしい。どうしようどうしよう善吉!」
「いや俺に言われても……。いっその事告白しちゃえば?」
「いや、それはない」
「え!?」
「まだ完全に恋と決まったわけでもないしね! もうちょっと待ってみる」
「お、おお……?」
「えへ、なんかこういう展開好きかも」

 わたしはニッコリ笑いながら、呆然としている善吉を差し置いて独り言を呟くわたし。
うん、これが本当に恋なのか、違うのか……ちょっと楽しみになって来たかも。


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