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 禊先輩が大人しくなり、わたしに絡まなくなってはや二週間。
何かぽっかり穴が開いたような感じがする。消失感みたいな。いや別にいいんだよ、これが望んでいたことなんだからさ。

「やあ雀。こんにちは」
「あ。こんにちは反転院さん」

 鴎が日直で早く学校に行ってしまったので、一人で登校していると、妙ににこやかな反転院さんに声をかけられた。
うん、やっぱりカッコイイな反転院さん。

「なんだあまり元気がないな? うざったい奴がいなくて元気溌剌(はつらつ)じゃないのか?」
「え、何で知ってるんですか?」
「俺はいつもお前を見ているからな、三百六十五日年中無休でな!」

 カッコイイ顔で言われても、内容が………………残念なイケメンとはまさにこの事だ。

「アー…………ハイ」
「おいなんだその微妙な反応。せめて突っ込んでくれ、ああ突っ込むのは俺の方k」
「死ね腐れ反転院ていうか散れ砕けろ」
「相変わらず手厳しいが可愛いな、食べちゃうぞ」
「貴方の場合食べちゃうが冗談に聞こえません」
「はっはっは」
「いやそこ笑う所じゃないですから」
「さっそく俺の部屋に行こうか? いや学校の保健室でもいいぞ」
「ほんとにどストレートですね!? 腰に手を回すなああああああ!」
「なに? ここがいいのか? しょうがないなあ、お前は公開プレイが好みなのか?」
「いやあああああああああ! 喰われるううううううううう!」
「ちょっ、大声出すなバカ!」

 妙にあたふたする反転院さん。
これが、禊先輩だったら、更にエスカレートしてスカートとか捲るのになぁ……あれ、鼻の奥がツンとしてきた。

「っ……!」
「雀……?」
「うぅ〜……!」

 急に視界が揺らいで、涙がぼろぼろ溢れ出てきた。
情けない声をあげて手の甲で眼を覆って俯く。

「煤I? お、おいそんなにイヤだったか!?」

 更にあたふたする反転院さん。そりゃそうだよな、いきなり女の子が泣き出すんだもん。
だけど反転院さんは悪くないよって言うつもりで首を横にふる。

「ちがうんです、……うぅ〜…………くっ、……ふえぇ〜……!」
「……雀、やっぱりお前…………球磨川のこと……」
「じぶんから、っく……つきはなしたくせに、……さびしいってかんじ、るんです……う、うぅ〜! きてくれないと、さみしいんです……!」
「……それは俺に言うべきことじゃないだろ?」

 ぎゅ、と壊れ物を扱うみたいに優しく抱き締めてくれた反転院さん。
あ……頭撫でてくれてる……優しいなぁ。

「うぅ〜……」
「よしよし」

 恐るおそる反転院さんの背中に腕を回して、胸板に額をくっ付ける。
その間も反転院さんはわたしの背中を頭に手を添えて、頭を撫でてくれる。
……反転院さんには悪いけど、泣き止むまで、気持ちが落ち着くまでもう少しこのままでいさせてください……。



「有難う御座いました反転院さん」
「いや気にするな。寧ろお前って胸おおk」
「死んでください、ていうかもう死ね散れ」
「はっはっは……うぐっ」
「お前何僕の雀ちゃんにセクハラしてんだ反転院」
「あ。安心院さん!」

 さらりと変態発言をした反転院さんをそろそろ斬ろうかなぁと思っていた矢先、反転院さんの首根っこをがしっとつかんだのは安心院さん。
うはー相変わらず美人だなぁ。

「やあやあ雀ちゃん。今日も可愛いね、惚れちゃいそうだぜ」
「安心院さんに言われてもな〜、安心院さんの方が可愛いもん」
「謙遜するなよ。全く。……それより、球磨川君と何かあったのかい?」
「へ?」
「いやいや、まあまあ……ずぅっと元気がないんだ。負け犬人生? ていうか人生全て終わったみたいな死人みたいな雰囲気だぜ?」
「さらっと凄いこと言いますね。えっと、たぶんいや絶対わたしの責任だと」
「やっぱりな。そろそろ君も素直になりなよ?」
「……」
「大丈夫だ。空きに俺がいr」
「ちょっと黙ってろお前」

 光の速さで現れた反手院さんに容赦なく安心院さんは蹴りを入れて黙らせた。

「有難う御座います。だけど……いまさら謝ったって……」
「相手はあの球磨川君だぜ? 大丈夫だよ雀ちゃん」
「……ごめんなさい、やっぱりダメです。そろそろマジで遅刻しそうなのでもう行きますね?」
「雀ちゃん……」
「雀……お前、」
「さようなら!」

 何かを言いたげな二人を残して、わたしは逃げるようにその場を去っていった。

「(知らなかった、知らなかった……わたし、バカだ。…………こんなに禊先輩のことが……)」

 もう遅いよ。遠くで誰かがそう言っている気がした、否、自分の心の中の声のような気がしてならない。


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