×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
「雀、最近球磨川先輩に好かれてるよなー」
「私もそう思うわー。ちょっと最近あの人雀にベタベタくっ付きすぎだよねー。私大人だからあまり気にしないけどさーまあ気にするけど? 雀は直接ではないけど微量ながら血の繋がったイトコだから心配なんだよねー。別に雀を束縛するつもりはないけどさーお気に入りのオモチャを取られたような感覚っていうの? 高校で出会ったくせにでしゃばんなクズって感じなんだよねー。まあ私は大人だからそんなの全然気にしないけどねーうん、ぜんぜーん気にしなーい。寧ろ切り刻んでこの世から破滅させたいなんて思わないよ」
「鴎、五月蝿い。……人事だと思って二人共……」

 ジュー。とイトコである鴎に買って来て貰ったパックのジュースをストローで啜りながらため息混じりに言葉を漏らす。
善吉は苦笑しつつも目を転がしながら。

「でも球磨川先輩って惚れっぽいよなぁ」
「過負荷だからじゃないの? ああいうタイプって意外と押しに弱いと思うしねー。結構惚れてる人過去形で多かったみたいだし。なんなんだろうねほんと、くたばれば良いのに」
「…………へぇ…………そういえば、依真ちゃんだっけ、あの子とも結構良い感じって聞いたな」

 なんだろう、このモヤモヤ。結局わたしともあっと言う間に終わっちゃう遊び感覚の恋だったんじゃん。
あーぁ。真面目に相手して疲れたかも。依真ちゃんって確か本の貸し借りとかしてたって言ってたしなぁ……もがなもそうだし、太刀洗先輩も、……よくよく考えればめだかだって、瞳先生だって…………安心院さんもそうじゃん。
多分それ以上にもっといると思う……なんだろう、本当にイライラして来た。

「なあんだ……真面目に相手して損した」
「雀?」
「ど、どうしたの、いきなり目付き変わっちゃって……あれ、心なしか影も……え、ちょ雀ちゃん、見た目私みたいな感じになってるよ!?」
「べっつにぃ? じゃあ禊先輩のあのウザったいアタックも一時的なものなんだね。せーせーしたよ」
「え、え? す、雀ちゃん?」
「なに善吉? 分かんないよ、まだ禊先輩めだかのこと狙うかも知れないよ」
「いやいや、それは絶対ないよ。な? バーミー」
「うん。ヒートの言う通りだよ。いやそれはないと思うけど……だって球磨川先輩今までにないくらい雀にゾッコンだしさ」
「鴎から見たらそうかも知れないけど、今までの過程の話を聞いたら違うよ。絶対。どうせすぐ寄って来なくなるんだから無視でもしようかな」
「(バ、バーミー……雀の奴一体どうしたんだ?)」
「(分からない……こんな雀見たことないよ……自暴自棄? 反抗期?)」
「やあ貴様達。どうしたんだ? しんみりして」
「あ、めだか! 気をつけなよ。めだかを狙う野獣共は星の数ほどいるからね」
「……? ふむ、何か唐突過ぎてよく分からないのだが」
「あは。ごめんねいきなり、こっちの都合で話しただけだから気にしないでね?」
「善吉、弟くん、……雀は一体どうしたんだ?」
「……まあ、色々あって」
「めだ姉、あまり触れちゃダメ」
「?」
やっほぉ!』『俺参上☆』
「どっから湧いたんですか!?」
『雀ちゃんいる所に僕ありだよ』
「いや知りませんからそんなの」
「……」
『? 雀ちゃ〜ん?』『愛しの禊君だよ〜?』
「……ちょっと雀ちゃん、昔じゃないんだから」

 コソッと禊先輩から避けるように鴎の後ろに隠れて腕を掴んだままそっぽを向く。
…………あ、禊先輩あたふたしてる。

『え? ええ!? 僕何かしちゃった?』『あ、もしかしてこっそり着替え盗撮したり怪談から見えたパンツ覗いたりスカートの中何とか見ようと白眼の練習してたの、バレた……?』
「おい、誰かこの変態黙らせろ」
「しかも白眼ってなんですか、もろジャンプの忍者漫画のかぶりじゃないですか」
『細かいことは気にしない☆』『ね、雀ちゃん、デートしよう!』
「……」
『え、雀ちゃん、』『クールだなぁ……!』

 冷たい眼で彼を見ていると、頭を撫でながら抱き締めてくる禊先輩。
わたしはそのまま冷徹な表情を崩さないで言葉を言い放った。

「くっつかないでください移ります変態が」
『…………え゛?』
「……それじゃ」

 そう呟いて、彼の手を振りほどいてわたしは自分の席に戻った。
わたしは一方的に、自分勝手な気持ちで彼と距離を置くことを決めた。
別に構わないじゃん、だってわたし元々あの人の事うっとおしいと思っていたのだから。
あの日以来、禊先輩はわたしの気持ちが本気だと悟ったのか、わたしに話しかけることはなくなったのだ。
これでいい、だって元々そう望んでいたんだから、だけど、だけどさ……。

「この悲しさはなんなのさぁ……!」

 部屋の隅で、わたしは枕をギュッと抱き締めて静かに泣いた。
らしくない、こんなのわたしらしくないのに、どうしちゃったんだろう本当に。


NEXT→→食べちゃうぞが冗談に聞こえません




目次