夏真っ盛り、暑いです。本当に。もはやとろけるくらいです。
「う〜……暑い」
「早くプールの授業始まらないかな」
女子更衣室でお友達のもがなとのんびり会話しながら着替えているわたし達。
体操着のズボンを履いて、上を脱いで体操着を着ようとしたら……。
「…………」
「雀?」
「ああもがな、悪いけど先行っててくれないかな?」
「え? どうしたの?」
「いや、ちょっと、ね……?」
「え、雀笑顔怖いよ!?」
もがなと笑顔(建前)で別れると、わたしは体操着をちゃんと着用して女子更衣室の窓をガラリと開ける、因みに二年生の女子更衣室は二階にある。
「…………何してるんですか禊先輩?」
『ドキリ』『やあ雀ちゃん今朝ぶりだね』
「いやいやいや、何ですかそのカメラ。てかここ二階」
『この前買ったばかりだから』『どんな性能か試したくてね☆』
てへぺろ、と言わんばかりにウインクをしながら頭こっつんこする禊先輩は凄い可愛い。だけど今は無性に腹立たしい。黙って中に引きずり込む、ついでにカメラも取り上げる。
「……二重鋏(シザー・クロス)」
そうポソリと呟いて、装備していた大きな鋏をカメラに向かって落とした。
鋏は落ちていく瞬間にバラけ、いくつも小さな小型鋏に姿を変えカメラを潰して見事破壊した。
『うわあああああああああ!?』『何て惨いことを雀ちゃん!』
「禊先輩、盗撮が犯罪って知っていますか?」
そう笑顔で言いながら、鋏でカメラを破壊していく。
『そんな穢れのない笑顔で僕のカメラ』『破壊しないでええええええ!』
ばっきばっきと紙をぐしゃぐしゃにするように鋏で串刺しにされるカメラくん。
だけどこれは制裁なのだから手加減なんてするわけがない。
「あははははは! あはははははははははははは!」
笑いながら、足でカメラを踏み潰して破壊していく。
『いやあああああああああ!』『その光景どっかで見たことあるよ!?』『キャラ被ってない!?』
「はあ……飽きた」
『僕の盗撮……ゲフンゲフン風景を撮るためのカメラが……』
「明らかに盗撮用って言いましたよね」
『ぐすん……』
鼻を啜りながら、四つん這いになってしまった禊先輩。
あれ……マジ泣き?
「あの、先輩……カメラ弁償します。申し訳御座いませんでした」
ちょっと苛めすぎたかも……俯いたまま四つん這いになっている禊先輩を見下ろしたままポツリと呟く。
「あの、わたし体育があるので失礼します。お金後日渡しますから」
そう言いながら逃げるように立ち去ろうとしたら、禊先輩に腕を掴まれた。
『待って』『雀ちゃん』
「え?」
『……』
「……」
いつになく真剣な禊先輩に胸がときめいたなんて絶対に言わない。言ったら調子乗るし……だけど、なんつーか、上手く言えないけど……そんなふざけたことを考える素振りすら与えないようなほど真剣な双眸で見つめる禊先輩。
どっかの高二病の男の子みたいに視線をズラすと、禊先輩は口を開いた。
『お詫びに胸をもませて』
「死んでください。ていうか死ね』
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