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「#エロ」のBL小説を読む
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ヒロイン視点

『腰のラインが少しだけ細くなったな……それに胸も一センチだけど成長してる。太ももは逆に細くなって腕の肉も落ちてる。うん、やはりエロい』
「ねえ球磨川先輩、うちの雀をじっと見てるけどなにしてるの」
『いや、ここ最近の雀ちゃんの成長期を』
「馬鹿なんですか? 成長期というよりは完全に身体の肉付きについての記録じゃないですか。私大人ですから別に引いたりはしませんけどさすがにこれは有り得ないと思うんですけどというか一回死んだほうが良いと思います」
『うわあ雀ちゃんと同じくらい辛辣』
「そりゃあイトコですから」
『イトコとしても似すぎでしょ』『生き別れの兄妹とかなんじゃない?』
「同じ屋根の下でずっと過ごしていれば似たくなくても似ますって」
『え!? 同じ家にずっと!?』『良いなー! ずっと雀ちゃんのあんなところやこんなところを拝むことが出来るじゃ』
「シザー・ザ・リッパー」
『あ』
「雀、追いついたんだ」
「忘れ物に気付いたのが結構早くて助かったよ。で、これはなに? なんか大声でとんでもない事言い張ってたけど」
「いやなんかゆっくり歩いていたら鉢合わせて、小走りで家に戻る雀の身体見てぶつぶつ呟いてたよ」

 ほんと困ったねー、なんて視線を言いながらちらちら他所を向く鴎を一瞥したあとに、大声でかなり危ないことを言い放っていた球磨川先輩を反射的に刺してしまったけど大丈夫かな。ちょっと覗いてみれば鋏が数十本刺さっていた、やばい、出し過ぎたかも。まあでもこんなことで死ぬような人ではないし大丈夫か。

「じゃあ学校行こうか」
「そうだね、めだ姉達待ってるし」
『待って待って僕を無視!?』『ちょっと雀ちゃああああああん!』
「うわなにか来た!」
「というか雀に抱きつかないで下さい!」

 無視して学校へ行こうとしたら、さっきまで死んでいたと思われる球磨川先輩が光の速さで飛び起きてわたしの腰元に抱き付いてきた。この人の原動力はなんだ、ここまで来ると本当に人間なのか疑ってしまうのだけれども。
 腰に絡みついた腕をばしばし叩いて、鴎も同様に球磨川先輩の身体を引き剥がそうともがく、ああめだかがいたら一発なのに。

「球磨川先輩! 離せ!」
『やっぱり腰のラインが細くなったね! お尻も小さくなったのはちょっと残念だけれども胸が大きくなったから良いか!』
「ぎゃあああああああなんだこの人!? 気持ち悪い!」
「雀の身体の肉付きメモってたよ」
『人類の造形美に思いをはせていたところなんだよ!』
「もはや変態の域ですから! 離れろど変態!」
『はあはあ腰のライン……凄く僕好みだよ』
「シザー・ザ・リッパーバージョン2!」
「なんか必殺技みたいになってるよ!?」

 今まで使うのには縁がなかった、特大鋏を取り出してスキルを繰り出せば球磨川先輩は死んだ。なんか通り掛かる人たちに凄い目で見られているけど気にしていられない、これで大丈夫か、なんて額の汗を拭えば鴎は少しドン引きしながらもわたしの手を取る。

「じゃ、じゃあ……行こうか」
「うん。え、なんでこっち見ないの鴎、今きょどっているような場面じゃないよね?」
「……」
「無視?」

 引かれてるよ。十数年一緒にいるのに今更ですか、まあ確かにコイツが上履きに目覚めた時はわたしも少なからず引いたけどここまで酷くは無かったよ。
というかなんだこの人本当に、ある意味尊敬しそうなくらいの変態っぷり。わたし本当に箱庭に転校してきた良かったのかな、うん、まあ知り合いいっぱいいるから良いとしよう。

「ささ、本当に学校へ行こう」
「そうだね、球磨川先輩放っておいて良いの?」
「多分、平気じゃないかな」
『平気なわけないだろう!?』
「……わたし、手加減した覚えないんですけど」
『愛の力さ!』

 ドヤ顔で決め込む球磨川先輩をここまで殴りたいと思ったことは今まで無いだろう、本気で殺意湧いた。顔が可愛いから許すけど、いや許しちゃいけないけど、なんかドヤ顔の球磨川先輩可愛い。……あれ、可愛いと意識し始めたら色々感覚がおかしくなってきたかも。

「球磨川先輩、本当に雀にほれ込んでるんですね」
『そりゃあ運命感じたから!』
「なんか、もっと別の愛情表現が良かったです」
『え!?』『僕のことが大好きだって? 嬉しいなあ! 結婚しようか!』
「この人本当に大丈夫なのかわたし凄い不安なんですけど」
「多分、末期だろうね」

 だろうな。ついには人の肉付きの良さまで確認してくる始末だし、ああでも今までのことを振り返ると私物漁ったり人前でパンツ連呼したりしてくるからもう既に手遅れか。

『まあでも、さすがに僕も遅刻するのは嫌だから大人しく学校へ行くよ』
「初めからなんでそうできないのかな」
「球磨川先輩だからね」

 真面目な顔して、『大嘘憑き(オールフィクション)』で怪我や血のついた制服を綺麗にする球磨川先輩。この人のスキルは捕らえ方によっては使い勝手良いだろう、マイナスだけど。
 登校するため歩いているとき、ふっとある疑問が頭を過ぎったのでわたしは思わず球磨川先輩に聞いてしまった。
 
「……先輩、わたしの肉付き、減りました?」
『!』
「なに言ってるの雀!?」
「だ、だって体重とか、色々気になるじゃん」
『うーん、言ってあげたいところだけど』『それなりの対価が』
「あ、じゃあ良いです」
『雀ちゃんの鬼!』『ぶっ』

 禊ちゃん泣いちゃう! なんて顎の前で二つ拳を作って大きな眼を潤ませながらわざわざ屈んで上目遣いで見つめる球磨川先輩の顔面を叩いてため息を零す。やはりこの人一筋縄ではいかないな。

「全く……」
『うぅ、ごめんごめん』『けど、実際に肉付きが細くなったのは本当だよ。多分体重減ってるんじゃない? なぜか胸は大きくなってるけど』
「ある意味気持ち悪いですね」

 凄く真面目な表情で言葉を吐き出す球磨川先輩、顔立ちの割りに言っている発言はかなり危ない。それを聞いた鴎がさきほどのようにドン引きした表情で球磨川先輩を見つめる、多分わたしも同じような顔してると思う。けど、体重が減っている、という話を聞いて少しだけ嬉しくなった、帰ったら体重計乗ってみよう。

「まあ、発言はあれですけど体重減ってるかも、と言われたので嬉しかったので目を瞑っておきます」
「なんか、雀単純だね」
「うるさい」
『お役に立ててよかったよ! これからもずっと記録は続けるつもりだから!』
「それだけは止めろ」
「とりあえず没収しておきますね、これ」

 先ほどからずっと球磨川先輩が大事そうに握り締めている「雀ちゃん観察記録」と書かれたかなりヤバそうなものを取り上げれば球磨川先輩はかなり悲しそうに表情を崩した。うわ、可愛い。きゅんときたかも。

『ああ僕の大事な記録帳が!』
「どうするよこれ」
「……燃やす?」
『ちょっとちょっと!』『さすがの僕でもそれは』
「シザー・ザ・リッパー」
「スピニングアンバラー」

 その後、球磨川先輩が本当に泣きそうな顔してたので仕方なく返してあげた。
あの記録帳は今でも続けてるんだよ、とこの前燕と雪のノートを買いに行った時に禊が楽しそうに言ったから帰ってから速攻で燃やした。禊は膝から崩れ落ちてたけど知らない。


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