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 彼女は昼休みになると、大抵紙パックのお茶かジュースを飲んでいる。紙パックにはつまりストローが付いているわけで、雀ちゃんはストローと紙パックを分けて捨てる良い子。今までは周りの目があれだったので避けていたんだけど、今日こそは、と思い彼女の教室を見張る。

「雀〜、体育行こう」
「うん、今行くね」

 体操服に着替えた喜界島ちゃんの呼びかけに気付いた雀ちゃんは、笑いながら紙パックに入っているジュースを全て飲み干してそのままゴミ箱に捨てた。彼女自身も体操服と言うとてもエロい服を着ているのでそれを拝みつつも教室から出て行ったのを確認して僕は真っ先に彼女のクラスに入り込んでゴミ箱を漁る。

『やった、ついにゲットしたぞ!』

 なんかこれに至っては僕自身も結構危ない奴だと思う。好きな人の私物を奪うってどこのヤンデレ、今時のジャンプにもこんな奴いないだろ。まあでも、今日だけだから、と言う思いを込めて彼女が使っていた紙パックからストロー一本を取り出して厳重にビニール袋に包む。よし、家宝にしよう。

『任務完了。帰るか』
「なにしてるんですかこのど変態!」
『うわあ!?』『す、雀ちゃん!?』
「こそこそ教室から覗いているなあとは思ってましたけどまさかわたしの使ったストロー奪うがために張ってたんですか!? もう死ね通りこして爆発してください!」
『いたたたた! 髪、髪はやめてって!』

 というか体育に行ったんじゃなかったの!? なんて叫びながら聞けばどうやら代打を頼んだらしい。いや待って授業に代打とかあるの!? ぎりぎり髪の毛を引っ張る雀ちゃん、身体小さいのにどっからこんな力出てくるの! 

「ほらビニール袋に入れたもの返してください!」
『やだ! さすがに可愛い可愛いスウィートエンジェル雀の頼みでもそれだけは聞けないな!』
「もうなんか気持ち悪いですよ!? つうかそれゴミじゃないですか!」
『君が捨てた物の再利用、つまりはエコなんだ!』
「なんだコイツ!」

 ぎりぎりと腕を伸ばし、背伸びをして僕が上に上げた雀ちゃん使用済みストローを必死に奪おうとしているこのストローの持ち主。
小柄な僕でも身長は彼女よりも高い、必死な表情でぎりぎり腕を伸ばしてそれを取ろうとしている雀ちゃんをじっと見る。

「んっ、くっ……! うっ」
『……』
「っ、ううう……、も、少しっ」

 小さく喘ぎながら、顔を真っ赤にして必死に奪おうとする雀ちゃんは、なんかとても官能的だった。しかも何故だか身体が密着しているし、体育着の胸元から鎖骨とか胸の谷間とかが見えて……あ、いけない気分になって来た。

『雀ちゃん』
「え? あ、なんで投げるん……え!?」

 ストローなんかどうでも良くなった。僕は理性に任せて行動しようと思ってストローが入った袋を遠くへ投げ捨てるとそのまま密着していた彼女の腰元に腕を絡ませる。
案の定驚いた表情の雀ちゃん、体育着だからきっと武器の鋏も持ってないだろう、ゆるゆると口角が上がって笑顔が零れる。
 しかしなぜだか顔を真っ赤にするどころかさあっと血の気が引いていく雀ちゃん、嬉しくないのかな。僕は凄く嬉しいのに。

「ちょ、球磨川先輩!?」
『誘った雀ちゃんが悪いんだよ』
「誘った覚えないんですけど!?」
『無自覚なの? それはそれでちょっと困ったなぁ』
「わああああああは、離れて! そりゃ確かにわたし自身も先輩に身体くっつけ過ぎたなーとは思いましたけど断じてそういうのを狙ってやってたわけじゃないんですよ!? というか先輩都合よく物事を解釈しすぎなんです。わたしは好きな人にはもっと控えめになるんですよというかわたしが貴方みたいな変態と好きになる訳ないですからね!? もっとそういうところを自覚したほうがいいと思いますよそういう都合の良いものってやはりジャンプとかご都合主義な漫画にしかないと思うんですよ、なにが言いたいかって離れてください! お尻触るな!」
『わあ、マシンガントーク』

 大慌てしながら、視線を合わせずにわたわたする雀ちゃんを見つめる。ここらへんは鴎くんと似ているなあなんて思いながら彼女の身体を弄る、うわ柔らかい。

『よし、このまま大人の階段を上ろうか!』
「上るか! あ、安心院さああああああああああああん!」
『来るわけないよ、さあ、雀ちゃ』
「わあああああああああああ!」
「呼ばれて飛び出てジャジャジャーン、安心院さん参上!」

 あれ、なんかデジャヴを感じる。なんて思っていた矢先、真後ろから聞こえた可愛らしい声に先ほどの雀ちゃんと同じように冷や汗が流れた。
まさか、なんて思いながらゆっくり後ろを振り向けば、これでもかというほど黒いオーラを出している安心院さんが、いた。

『や、やあ』『安心院さん』
「やあ球磨川くん、詳しい話はお前が起きたあとだね」
『ま、待ってこれには!』
「安心院さんキーック」
『ア』

 キックと言っていたのに飛んできたのは拳だった。
雀曰く、ただ適当に名前を呼んでいたのに彼女はどこからでもすぐ現れるらしい、その謎は、今現在でも解けないとのこと。


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