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- ナノ -
『じゃあ帰ろうか』
「はい」

 涙も無事引いたので禊くんから離れると禊くんはわたしの頭を撫でて立ち上がらせる。時計を見れば五時過ぎ、時間が経つのはあっと言う間だなぁ。

『ついでに放課後デートしない?』
「帰るの遅くなるから嫌です」
『その時はホテル行こう!』
「一人でどーぞ」

 相変わらず脳内お花畑だ、もう慣れてるから良いけれども。鞄を持って教室を出たら、ふとある感覚が。

「……」
『雀ちゃん?』
「禊くん、ちょっと待っててください」

 これはあれだ、トイレだ。言うのはなんだか恥ずかしいから待ってるようにだけ言えば禊くんはきょとんとした顔で私の顔を見つめる。

『どうしたの? トイレ?』

 うわド直球。けど否定するのもめんどいから黙って頷けば、あぁ、と妙に納得しような表情をされてわたしは禊くんに肩を押されて廊下を歩き出す。え、なんで禊くんも一緒なの?

「禊くん?」
『さあさあいざ女子トイレへ!』
「いやいやいや一人で行くから!」

 トイレ前で待ってもらわなくても平気ですから! と叫べば女子トイレって男子の憧れだよね、と上から声が振ってくる。え、なにコイツトイレ覗く気? いやいやさすがにそれは無いだろう。うん。けど一応言っておいた方が良いのか。

「禊くん、しないと思うけど覗いたらダメだよ」
『覗かれたいなんていけない子だね!』
「会話のキャッチボール!」

 やばい、本格的に頭イッてる。どうしたんでしょうか、わたしの知っている球磨川禊はここまで変態チックなはずではない、……いや分からない。けどまあ多分彼なりの冗談だろう。

『冗談冗談、早く帰ってきてね』
「はいはい」

 鞄を持ってもらって私は女子トイレへ入る。そういうプレイも良いね、なんて聞こえたから持っていた鋏をぶん投げて置いた。全くもう、変態具合を上手くセーブするようなスキルは無いのだろうか。
 個室に入りながらわたしはため息を零す。



『雀ちゃん』
「なんですか」

 手を繋いで帰路へ付く。まさか私が禊くんと恋人同士になるだなんて誰が想像していただろうか。チラッと隣を見ればるんるん気分の禊くん、なんだか可愛くてフッと笑みを浮かべれば禊くんはそれに気付いたのかこちらを向いた。

『どうしたの? 見惚れた』
「はいはいカッコイイデスネー」
『触って良いの!?』
「違う」

 どうしてこう言葉を摩り替えるのだろうか。ご都合主義も良い所だぜ全く。……果たしていつまでこうしていられるのだろうか、なんとなく、この先のことを考えると禊くんはふらっとどこか遠くへ行ってしまいそうな気がしてならない。わたしの思い違いだと思うけれども。

『雀ちゃん』
「……なんですか?」
『ずっとずっと一緒にいようね』
「……」

 フラグのような気がして怖い、けどその言葉が思った以上に嬉しくて黙って頷けば禊くんは砕けた笑顔を見せて握られた手に力を込めた。

「禊くん、今日泊まってく?」
『え!? 良いの!?』
「もちろん鴎もいますよ」

 そう言えばがっくりと項垂れる禊くん。分かり易すぎるだろ。けどお泊りという言葉は禊くんにとっては結構重大なことだったらしく『泊まってく!』と答えた。着替えは鴎のあるから大丈夫だろう、さっそく従兄に連絡しなきゃと思ってわたしは携帯を取り出した。

NEXT→→愛し合う二人なら当然でしょ?




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