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「ばかっ、さいてい、さいあく」
『雀ちゃん、ごめん』

 涙がぼろぼろ零れ出て止まらない。こんなところめだかや鴎に見つかったら大騒ぎだろうなぁ。
なんでわたしが泣いているのかと言うと、禊くんが依真ちゃんと抱き締めているところを見てしまったわけだ、まあ依真ちゃんが転んでしまったところを助けようとしたのは分かっているけど、まんざらでもなさそうな禊くんの顔にムカついた。心底ムカついて殺意が湧いた。

「禊くんの彼女は、わたしなのにっ」
『うん。僕が好きなのは雀ちゃんだけだから』
「うるさい、さわるな」

 分かっているのに、禊くんが悪い要素なんて一つも無いのにイライラが止まらない。わたしって思っていた以上に重くて独占欲が強い女だ。だってこの泣いている間に様々なことが出てくる、両手両足切って監禁とか、目玉くり貫いちゃうとか。もうヤンデレも清々しいってほど重くて狂気に満ちている。

「禊くんが惚れっぽいの分かってるのに、なんなのほんと」
『雀ちゃん、嫉妬?』
「ちがう、嫉妬なんかじゃない。禊くんのばか」
『ほんとに嫉妬じゃないって思ってる?』
「……」

 顔を覗きこまれて、優しく問い掛けられる。ずるいずるいずるい、心が弱っているところでそんな表情は反則だ。
禊くんが大好きだからこそ、あの光景を見て嫌いになりそうだった、だった、というだけで実際に嫌いになんてなれない。

「雀ちゃん。ほんとうにごめんね、泣かないで」
「んむ、」

 なんでかっこつけてないの、ずるい。優しく囁かれて唇を押し当てられる。その瞬間に、溢れ出ていた涙がぴたりと止まる。

『泣き止んだ』
「……禊くん、ずるい」

 ポツリと呟けば、にへっと笑う禊くん。ああもう禊くんに首ったけだよ。

「ごめん。嫉妬した」
『素直で宜しい』
「うん。スカート捲るな」

 良い雰囲気だったのに、今でも普通に私のスカートを捲くろうとする悪い手を抓る。なにやってんだこの人。

『でも雀ちゃんも嫉妬するんだねぇ』
「これで分かりました」
『ん?』
「わたし、結構嫉妬深くて独占欲強いみたいです」
『ヤンデレな雀ちゃんも大好き』
「おい触るな」

 こんな甘い言葉を吐かれて砂をはきそうだけど悪い気はしない。太ももを撫で回す手を抓って彼の手を拘束しようとしたら、彼は両腕をバッと広げて笑顔を見せる。

『雀ちゃん、まだ泣きそうなら、遠慮せずに飛び込んでくれて構わないよ!』
「全力で遠慮させてもらいます」
『つつしみ深いところも素敵』

 お互い、ベタ惚れだよきっと。今だに両腕を広げてわたしを待っている禊くん、わたしと同じくらい華奢だけど力強くて暖かい。マイナスのくせに。

「どーん」
『!』

 押し倒さんばかりの勢いで禊くんに抱きつけば、しっかりと彼はわたしを受け止めてくれてそれ以上の力で抱き締めてくる。

『ごめんね、ほんと』
「もういいですよ。女の子大好きな禊くんも好きですから」
『皮肉みたいだね』
「皮肉です。浮気したら切ります」
『雀ちゃん、怖い』

 敢えてなにを、とは言わずに言えば禊くんの身体が恐怖で震えているのが分かる。まあこんな独占欲が強い彼女様が居るわけだから多分浮気はしないだろう。
したらしたで、私の味方達が黙っちゃいないと思う。

『雀ちゃんほんと大好き』
「わたしもです」

 今までは変態具合に頭を悩まされていたのに、それすらも受け入れてる。これはわたしも相当イカれてるかもしれない。

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