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『ポッキーゲームしよう!』
「だが断る」

 購買で善吉達に頼まれたジュースとかを買い終わり早めに戻ろうと足を早めていたら神出鬼没な私の彼氏様球磨川禊くんが現れましたよ。

『必然的にキスが出来る素晴らしいゲームだよね!』
「いやいややりませんから」

 興奮気味に話す禊くんにドン引きしつつ、彼の興奮を抑えるべくなるべく冷静に対応すると、禊くんは『え!?』と叫んでこちらを見る。今日はリアクションが一々激しいな、どうしたんだろう。

『今日はポッキーの日だよ!』
「全然違いますよ!?」
『僕たちにとっては毎日がポッキーの日だよ!』
「死んで下さい」

 もう会話のキャッチボールが出来ていない。ジュースが冷えてしまうから無視して教室に帰ろうとしたら、禊くんに後ろから抱きつかれる。

「ちょ、禊くん」
『大丈夫、ポッキーなら用意してあるよ!』
「そういう問題じゃないんですが!」
『イチゴ味もあるよ!』
「聞けよ!」

 ダメだコイツ、早くなんとかしないと! いっそスキルでも喰らわせてやろうか……!
引っ付く禊くんを引き剥がそうと力を込めて彼の頭を押していると、どこからか聞き慣れた声が、

「雀!」
「もがな! 助かった!」
「?」

 それと同時に禊くんが剥がれた、そして幸いなことに奥からお財布を持ったもがなと出会った。
わたしは真っ先に彼女に飛びつく。

『やっほー喜界島ちゃん!』
「禊ちゃんもいたんだ、それより雀どうしたの?」
「禊くんにポッキーゲーム迫られてる」
「ぽっきーげーむ? あの両端から一緒に食べ進めてくやつのこと?」
『そうそう! もう雀ちゃん恥ずかしがってさー』
「違いますから!」

 ほんとなぜ都合の良い解釈しか出来ないのだろうか。まあそんなところも好きなんですけど。

『えー。じゃあポッキーゲームは諦めるから裸エプロンしてくれない?』
「意味分からん」
「禊ちゃんは本当に雀が好きなんだね」

 もがなはもがなでなんか凄い能天気だし。手に負えない。でもポッキーは食べたいなぁ、イチゴ味美味しいし。
というか今禊くんのブームは手ぶらジーンズではないのか、いややらないけど。

「禊くん、ポッキーゲームはしないけど一緒にポッキー食べましょう」
『!』
「私は先輩達のところに行くね!」
「泳ぎに行くの?」
「うん!」
「行ってらっしゃい!」

 うきうきとした表情で消えていったもがなに手を振って、さっきの言葉聞こえてたかな、と禊くんの方を振り向くと何故だか顔を真っ赤にしてる。
あれ、わたし何か変なこと言ったっけ?

「……禊くん?」
『て、手ぶらジーンズをしてくれるなんて……!』『雀ちゃん天使だね!』
「はああああああああ!?」

 コイツうちに耳までイカれたのか!? そんな事一言も言ってないし似たような言葉も言ってない!

「言ってないですから! 全然!」
『うぅ……嬉しいよ!』『生きてて良かった……!』
「戻ってこーい!」

 言えば言うほど、禊くんは興奮して自分の世界に入り込む。あぁ、どうしよう。痛む頭に手を添える。一方禊くんは顔を真っ赤にしてなんかきゃあきゃあ騒いでるし。

「(うーん……こうなったら、)」

 少しだけ悩んだがやるしかない。わたしは妄想ワールド全快の禊くんの手からポッキーの箱を取る。

「貰いますよ」
『どうしよう、写真何千枚撮ろうかな!』

 ヤバイ、禊くんが犯罪者になるかも知れないし気持ちが悪い。いっそ殺してしまおうか、そんな事を考えつつポッキーを開けて一本取り出すとクッキーの部分を口にパクリと含む。

「みそぎくん」
『うん? ん』

 上手い具合に禊くんの口にチョコレートの部分を食べさせてそのまま食べ進める。いきなりの行動に目を見開く禊くんと目が合う。
 あ、よく見れば禊くんの奇行にドン引きしたのか廊下に人がいない。
さくさくさく食べ進めて、そのまま禊くんの唇に自分の唇を押し当てた。

「(柔らかい……)」

 ふに、と柔らかい感触。未知の経験だ。ポッキーが無くなったのを確認して、わたしは禊くんから離れる。

「……ファーストキス、奪われた」
『……雀ちゃん……!?』

 顔を真っ赤にして、口元に手を覆う禊くん。女子かよ。まあわたしも思いのほか恥ずかしかったわけで、顔に熱が溜まるのが分かる。

「こ、これは悪魔で変態的な妄想をして止まらない禊くんを止めるために行ったわけなんですよ、だってあのままだと廊下にいる人たちはおろか教室で一部始終を見ていたかも知れない人たちが帰ってしまうかも知れませんしわたしの友人関係にもヒビが入るかもですし? もしかしたら今の禊くんの行動が誰かの噂話によって校内に広められたら彼女であるわたしが一番恥ずかしいわけですから、そうです、仕方なくやったんです。まあぶっちゃけ禊くんとキスできて嬉しい気持ちもあるんですがこれでわたしの校内でのイメージは多分壊れないですしー! やったー! ばんざーい!」
『……! 有難う、御座います!』

 つい癖でマシンガントーク全開で離してしまうと、なぜだか鼻血を出して禊くんは土下座してきた。え、なにこの人。
そんなに嬉しかったのかな、というか禊くんのファーストキスは安心院さんなんだよね、そこらへんはちょっと不満。
言ったら調子乗るから言わないけど。

『キスはクリア出来た!』『次はセッ』
「死ね」

 笑顔で飛びつこうとしながら、とんでも発言を言ってきた禊くん目掛けて自前の武器である鋏を構えて攻撃する。
禊くんの断末魔が響き渡り、一時校内は騒然としていました。


NEXT→→遠慮せずに飛び込んでくれてかまわないよ




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