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「#エロ」のBL小説を読む
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 バッシャン。一瞬何が起こったのか分からなかった。うん、善吉クンがバケツ持って転んだ瞬間なんてわたしは見てないよー、彼、なにかに躓いていたけど気のせいだよねー、すっごい頭からまさに足の爪の先までびっしょびしょなんて幻だよねー。

「……あの、雀サン?」
「……善吉、てめぇ表出ろ」

 そう低く呟いて、私はギラリとどこからか鋏を二つ取り出して構える、そして振り回した。

「っ!? は、鋏振り回すな!」
「最近さ、人の精神を操るスキルを安心院さんに教わってるんだ」

 『心の大傷(ハートブレイク)』なんてカッコよくない? なんて言いながら善吉を追い掛け回す。ついでに鋏をもう一個取り出しながら。あ、廊下が水滴で濡れていく……針金ちゃんに後で怒られるかも。

「鋏増えた!? てかさらっと怖いスキル教わるな!」
「どうせ大人になったら失うかもしんないじゃん?」
「うああああああああああ!」
「やめなさい雀」
「うぎゅっ」
「善吉、貴様雀になにをした」
「め、めだかちゃん……」

 聞きなれたイトコの声とともに、後ろから思い切り抱き締められる。それと同時に善吉の目の前に見目麗しいめだかちゃんが参上。おー、今回はチアガールのコスプレですか、てことは応援部の執行?

「なにすんのさ鴎ー」
「そんな格好で走り回るんじゃないよ」
「あー、マジで悪かった雀」

 めだかに睨まれた善吉は申し訳なさそうにわたしに頭を下げる。なんだちょっと萎えちゃったじゃないか。

「許したいところだけど、さすがにこの状況は許せないなー。悪意はなかったとしてもわたし凄いびしょびしょだしこのままだと風邪引きそうなんだよねー。ああ別に怒ってるわけじゃないからね? ……ちなみに今日授業に体育はないから体操着もないんだよね、ジャージも全部持って帰えちゃったからさー」
「なら私の服を貸そうではないか」
「めだ姉のは私が着させない!」

 善吉が持っていたタオルでわたしの体をポンポンと水分を吸い取るように軽く叩いていく。
鴎が言う通り、めだかのあの胸がバーンと開いちゃってる奴は着たくないぞ。あ、でも今は違うんだよね、だけどさすがに校内を制服以外でウロつくのはイヤだな。

「じゃあ私のジャージを貸すよ。さすがにその格好のままだと色々ヤバイでしょ」
「ヤバイって?」
「なにが困ることでもあるのか? 弟くん」

 わたしと善吉、めだかがそう聞き返すと、鴎は思い切り眉を潜めて誰にも聞こえないようになぜか小声で話した。

「……球磨川先輩」
「……なるほd」
『呼んだ?』
「うわやっぱり来ちゃったか」

 鴎の言葉に納得しようとした瞬間に出てきたよこの変態さんは。鴎が警戒心むき出して私に覆い被さるように抱き締めると、善吉もわたしが常日頃日常茶飯事受けているセクハラを知っているからなぜかファイティングポーズを取る。めだかちゃんに至っては某月に代わってお仕置きよ漫画の主人公のポーズしてるし。

『なんでみんな僕から雀ちゃんを遠ざけるの!?』『ひどいよ!』
「お前自分の胸に手を当てて考えてみろ」
「球磨川先輩には雀は触らせません」
『えー、せっかくまともな着替え持ってきてあげたのにー』
「え、本当ですか?」

 先輩の言葉にわたしは思わず食い付いた。あの先輩からまともって言葉を聞くとちょっと違和感を覚えるけど背に腹は変えられない。ちょっと禊先輩のこと気になってるのもあるけど。

『うんうん!』『着替える?』

 にっこり、物凄い可愛い笑顔を向けてわたしに抱きつく禊先輩(とりあえず殴っておいた)。
はい、と言い頷こうとした瞬間に怪訝そうな顔をした善吉が声を発した。

「その笑顔、怪しすぎです」
「ヒートの言うことに同意」
「なにを考えているんだ球磨川先輩」

 じとぉ……と効果音がつきそうなほど三人に睨まれる禊先輩。……できれば早く着替えたいんだけどなわたしは。
まあ、個人的にセーラー服は妥協してやろう、いかにもスカートが短いのとかはイヤだぞ。あとは……メイド服とかだったら切り刻む。悶々と何を言い出すのか考えていたら、禊先輩は得意気に答えた。

『メガネ+体操服ブルマ+ニーソ!』
「黒神ファントムちゃんとした版攻撃モード」
「殴る」
「独楽図解(スピニングアングラー)」
「……雀スタイル」

 禊先輩の断末魔が、マンモス高校箱庭学園に響き渡った。


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