ガサガサとカバンの中を探る。
「あ、あれ?」
制服のポケットに入ってないか確認する。ない。
「どうしたの?」
「忘れ物……」
「え?」
「教室に、忘れ物しちゃった」
何で部活が終わるまで気付かなかったのだろう。部室の窓から外を見てみると、もう殆ど夕日は沈みかけていた。
「ついて行こうか?」
「大丈夫!」
私はカバンを持って、急いで部室から出た。
廊下はしんと静まり返り、誰も居ない。昼間はあんなに人が居て騒がしいのに、嘘のようだ。
(こ、怖い……)
何かが出てくるわけはないのに、緊張する。幽霊とか居るわけないって分かってるけど、もし、居たら。そんなことを考えてしまう。
教室の前につき、ドアをガラリと開ける。中はガランとしていて、夕日が微かに窓から入り込んでいた。
しかし、全く人が居ない、というわけでもなくて。日の当たる窓際の席──私の左隣の席に、ポツリとうつ伏せた人がいた。
私は自分の席まで行き、その人を見る。
この人は、確か……頭だけしか見えないから、多分、になるのだけれど、八木くんではないだろうか。
私はあまり話したことがないけど、今日あった席替えで私の隣になったハズだ。
“無愛想”という彼の噂から、私はまだ一度も彼と話したことがなかった。
(でも……)
もう、夜になる。夕日は沈んでしまっていて、もう真っ暗だった。
起こした方が良いのだろうか。
……どう、しよう。
起こした方が良いよね
まずは忘れ物から……