学校についてからというもの、康博と話す機会を見出せずにいた。

「山の田どうしよう……私、避けられてる?」
「明らかに」

 すっぱりと言い切った山の田に、もう少し言い方を考えてくれても良いじゃん、と思った。でも、確かに避けられていることには違いない。
 1時間目が終わった後に話しかけようと思って近づいたら席を立ってどこかへ行ってしまった。2時間目が終わってまた話しかけようと近づいたら教室から出て行ってしまった。3時間目……4時間目……そして現在、昼休みに至る。
 ここまでされたら流石の私でも分かってしまう。分からない方がおかしいか。

「何でかな?」
「さあ?」

 山の田は笑っていた。しかし、意地悪く。

「うーん……。とりあえず、トイレ行って来る」
「行ってらっしゃーい」

 山の田は何か知ってるのかな?

 * * *

 トイレに行こうと思って階段の横を通り過ぎようとしたら、康博の笑い声が聞こえてきた。
 私がこんなに悩んでるのに何で笑ってんだといささか理不尽なことを思いながら階段の下を見ると、康博は女の子と楽しそうに話していた。……あの子は、1年?
 そういえば好きな子がいるって言ってたっけ。なあんだ、好い感じじゃんか。だから、急いで教室から出てたのか。……あの子と話すために。
 なんだか悲しいような嬉しいような複雑な気持ちになって、トイレに行かずに教室に戻った。

 * * *

 教室に戻ると、山の田がおかえりと言ってきた。

「ねえ山の田、私、ヤスが急いで教室から出てった理由、分かったよ」
「何だったの?」
「ヤスって好きな人いんじゃん。その人とめっちゃ楽しそうに喋ってた」
「へーそうなんだ。……ん?」

 山の田は首を傾げた。

「どうしたの?」
「ちょっとトイレに行きたくなっちゃったから行って来る」
「あ、いってらっしゃい」

 山の田は足早に教室から出て行った。
 その次に授業は、康博も山の田も戻ってこなかった。
 康博は多分あの子といるんだろう。山の田は……トイレ? 体調悪かったのかなあ。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -