家から出ると、貴瀬くんが待っていた。朝日のせいか髪の毛がきらきらしている。羨ましい。
「おはよ」
「おはよございます!」
思わず敬語になってしまった。貴瀬訓はクスクス笑う。
「今日も朝から元気だね?」
ゆっくりと歩きながら貴瀬くんが言う。今日もにこやかだ。
「うん、今日は特にね。目覚ましが鳴る前から起きれたし」
「すごいじゃん。俺はいっつも2回目くらいで起きるよ」
「私もいつもは二度寝しちゃうんだけど。何故か昨日よく寝れたんだよね」
「俺のおかげだったりして?」
フフ、と笑いながら貴瀬くんは言う。
……貴瀬くんのおかげ、かあ。そう考えると、確かにそうな気がしてきた。昨日貴瀬くんが、嬉しいことを言ってくれたから、とか。
「確かに、そうかもね」
そう言うと、貴瀬くんの顔が赤くなった。
「……冗談って言ってくれないと俺どうしたら良いか分かんなくなるじゃん」
「貴瀬くん可愛い」
「うるせ!」
貴瀬くんといると、笑いとか笑顔が絶えない。楽しいなあ。
ポン、と肩に手が置かれた。
「うわ!?」
びっくりして振り返ると康博がいた。
「おはよー。のぞみちゃん朝からラブラブねえ」
康博からは“負”のオーラが出ていた。
「ヤス、目の下のクマすごいよ?」
「昨日考え事してたら眠れなくなっちゃってさ」
ハハ、と康博は眉を下げて笑った。
「悩み事なら聞くよ?」
「大丈夫、大したことじゃないから」
じゃあ、先行くね。そう言って康博は早々と歩き出した。
「アイツ、どうしたんだろうね?」
そう言った貴瀬くんの笑顔はなんとなく怖かった。
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