ジリリリリ、と目覚ましが鳴る。もうすでに起きていた私はそれを止めた。
私が目覚ましより先に起きるなんて珍しいな、なんて思いながらリビングへ行く。今日は目覚めがすごく良い。いつもみたいに壁にぶつかりながら歩くこともないし、二度寝することもない。母さんも不思議に思ったのか、今日は機嫌がいいわね、なんて言って来た。
やっぱり、貴瀬くんが原因かな。自然と笑みが零れて、顔が引き締まらない。
「何かあったの?」
母さんはニヤニヤしていた。
「なんにもないよ!」
「じゃあなんでそんなに嬉しそうなの?」
「今日は目覚めが良かったからさ!」
「へーえ?」
母さんは面白そうに笑う。
「あ、もうこんな時間! 支度しなくちゃ!」
自分でもびっくりするくらいの棒読みだった。しかし、時間がぎりぎりなのは本当だ。
部屋に戻る途中で、母さんが舌打ちするのが聞こえた……ような。
△ ▽