先生が教室から出て行く。ふああ、と大きなあくびをしていると、康博が近寄ってきた。
「帰ろう」
「うん。……あ。私、貴瀬くんと帰るんだった」
「マジで」
康博の周りの空気の温度がいっきに下がった。気がした。
「ご、ごめん。さっき貴瀬くんと帰る約束しちゃってて」
慌てて謝ると、康博はぷ、と噴出した。あれ、馬鹿にされた……?
「謝ることはないだろ。まあ、彼氏と頑張れよ、いろいろ」
そう言うと康博は私の頭をポン、とたたいて教室から出て行った。
それと入れ替わるように貴瀬くんが教室の中に入ってきた。
「のぞみ、帰ろう」
「あ、うん」
貴瀬くんはフワリ、という表現がぴったりな笑い方をしていた。
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