初恋って、叶わないっていうじゃないですか。だから、私の夢は初恋を叶えることなんです。
 ──なんてまあ、ちょっとカッコいいことなんでいくらでも言えるわけだ。そもそも私は、初恋を叶えるどころか、初恋がまだだったりする。周りに男がいないわけじゃない。でも、なんとなくそういう対象に見ることが出来ないのだ。でも、私ももう高校生なんだし、いい加減好きな人の1人や2人……はちょっと違うけど、出来ても良いのではないのか、とはよく思う。2年に進級して、周りには付き合い始める人がやたらと増えた。それもあってか、ちょっと焦ってる。

「──ていうわけなんですが」

 私は机をはさんだ、向かい側にいる男、康博に向かって言った。

「それ、俺以外に相談できるやついなかったわけ」

 康博は面倒くさそうに、フワフワした髪の毛をガシガシと掻き回している。

「いきなり俺ん家来るから何かあったのかと思ったのにさ」

 えへへ、と笑うと彼はジトッとした目を私に向けてきた。そして康博ははあ、と溜め息を吐く。

「お前、仲のいい女子いるだろ、ほら、山の田さんとか。俺よりそっちに相談した方が良かったと思うぞ」
「そうかなあ? 山の田はさあ、彼氏と2年付き合ってるっていうしさ、やっぱ私と違うじゃん。んで、私と同じように好きな人がいたことのなさそうなヤスに訊いてみようかなって」
「……何でいたことがなさそうな奴に訊くんよ。そんなんで分かるわけないだろ」
「あ、そっか」

 康博に言われて、自分はこんなにも焦ってたんだな、と自覚した。こんな簡単な判断も出来ないくらいに。

「ていうか、俺、好きな人いるし」
「──え」

 康博は、ほんのりと頬を赤らめていた。その変化が面白くて暫く見ていると、康博はちょっと怒ったゆうに見んなよ、と言って私の顔を手を使って背けさせた。

「ね、誰なの」

 今、私の目は今までにないほどキラキラと輝いていると思う。いや、実際誰なのかすごく気になるし!

「お、教えるわけねえだろ!」
「えー、もう中学入ってからの仲なんだから教えてくれても良いじゃん!」
「そうだけどさ」

 康博は困ったように俯いた。耳まで赤くなっている。

「つ、付き合えそうだったら言うよ」
「そっかあ、じゃあ、約束ね!」
「おう」ニカッと笑った彼の顔は、赤くなっていて、何だかちょっと可愛かった。

 * * *

 康博の家を出て、1人で家路につく。
 結局、どうしたら良いのかなんて分からなかった。でも、これで良かったのかもしれない。私はこういう風に友達と話しているのが楽しいし、例え答えが分かったとしてもそれを理解することなんて出来ないだろう。
 今の私には。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -