結局その日は、2人とも授業に戻ってこなかった。2人がこんなに授業をサボることも珍しいなと思いながら、私は貴瀬くんと帰った。
家に着いて、部屋でボケっとしていると、ケータイが鳴った。貴瀬くんからだ。
『帰り、ずっと上の空だったけど、大丈夫?』
絵文字も顔文字も何もない、飾り気のないメールだったけど、貴瀬くんの優しさが感じられた。
『考え事してただけだから、大丈夫! 心配してくれてありがとう』
こう送ったら、なんだか笑えてきた。だって、考え事って山の田と康博が戻ってこなかったことなのだ。
おそらくそれぞれの理由があったのだろうし、私がいろいろ考えても仕方がない。というか、どうにもならない。
それなのに、どうしてこんなにモヤモヤしているのだろう? 私は“もしかして”の可能性を捨てきれないのかもしれない。――もしかして、2人で話していた、とか。
そう考えたら、悲しくなってきた。もし、そうなら、仲間はずれになった気がするのだ。
また、ケータイが鳴る。
『彼氏として当たり前ですから。無理すんなよ? 相談くらい、いくらでも乗るから』
貴瀬くんは、やっぱり優しいな。
――“もりかして”は、なるべく考えないようにしよう。何の根拠もないし。
『了解です。貴瀬くんも、なにかあったら遠慮なく言ってね』
送って、ケータイをパタンと閉じた。
彼氏、かあ。
△ ▽