涙まみれ


あんまり人が通らない家への近道を彼女と2人で歩く。

ヤバい、心臓バクバク言ってんよ!

あー手ェ繋ぎてぇ
あー手ェ繋ぎてぇ
あー手ェ繋ぎてぇ

心臓バクバクのあまりに3回言っちゃいました!

「ねえ」

彼女が俺に話しかけてくる。

「は、はい!?」

もしかして手ェ繋がしてってお願いかもしれねぇ!

「やっぱり。なんでそんなにキョドってんの」

「……は?」

なんだよ、手ェ繋ぎたいとかじゃねぇの?

期待して損したーってヤツだよバッキャロー。

「なんでそんなソワソワしてんのさ」

あ……、バレちゃった? そんなソワソワしてたかな、俺。

そんな事を思いながら角を右に曲がる。

「トイレ行きたいなら急いで帰ろっか、まだ結構家まで距離あるでしょ」

……。違うんだよ! 正直家には帰りたくねーんだよ! ただ手ェ繋ぎたいだけなんだよ! どーして伝わんないかな、コレ!

「どーしたの? 返事出来ないくらいトイレ、ヤバそう?」

そう俺を覗き込むようにして見てくるそいつは、上目遣いで、いつもの数倍可愛く見える。

いや、普段からめちゃ可愛いんだよ!? ただ、ちょっとSっ気あるだけで。あ、俺がMってワケじゃあねえからな! 思いっきし俺Sだし!

「ちょっとー何か返事してよー」

「あ、ごめん。自分の世界入ってた」

「へえー良い度胸ね? 私が居るのに私そっちのけで自分の世界? 放置プレーなんかするたァ私にケンカ売ってんの」

……きっと、これはあれだ、"私寂しかったんだからね!"アピールだ。だから、黒い笑みの裏にはきっと、泣いてる心があるんだ、そう思え俺!

「……いや、全然ケンカ売ってねえから。ねっ。いやごめんまじその拳やめて下さい」

彼女は俺を一瞥すると、フッと笑った。

「簡単に許すワケないでしょう?」

悪魔に見えた。悪魔は悪魔でも可愛い悪魔。小悪魔っての?

学校での態度と俺と2人きりの時の態度全っ然違うんですけどー。あ、あれか、惚れた人にしか素は見せないわ的なやつか!

「い、いやいや、俺はただ手ェ繋ぎたかっただけで」

「あ、そーなの。嫌に決まってんでしょう」

「えっ何故!?」

「だってまだ許してないもん。じゃ、私ン家ついたから。送ってくれてありがと」

じゃあねーと彼女は手をふり家の中に入っていった。

家とか気づかなかった。

俺は繋ぐ事の出来なかった左手を見ながら、家への帰路を辿った。

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