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俺とあの女が出会って4ヶ月が経った。
相変わらずあいつは2日ごとに河原に来る。雨が降った日も来たからびっくりした。
俺の隣でいつもニコニコしている。
そんなこの女に、俺は"例えば"の話をしてみる事にする。
「なあ、もし俺が人間じゃなかったらどうする?」
俺がそう言うと、彼女はキョトンとした顔をした。
「え、ギンさん人間じゃないの?」
「……じゃないかもねえ」
「でも、ギンさんは人間の形をしてるじゃない」
「見えてるものが全て、ってわけじゃない」
「……」
なんで俺はこんな事を言っているのだろう。"例えば"の話をするつもりじゃなかったのか?
何故俺は本当の事を話そうとしている?
──知ってもらいたい、と思っている。
信じてもらえないかもしれない。幼い頃みたいに、避けられるようになるかもしれない。
それでも、自分の事を知ってもらいたいと思っている。知ってもらったうえで、受け入れてもらう事を望んでいる。
「……ギンさん」
「なんだ」
「私は、ギンさんのこと好き、だよ」
「──!?」
そう言われた事に驚いて女の方を見ると、照れるわけでもなく、ただ少しだけ頬を赤らめて俺の方を見ていただけだった。
その目は、不思議なほどに真っ直ぐで、眩しくて、逆に俺が照れてしまった。
足の下で、河原の石がジャリッとなる。
「どんなギンさんでも受け止めるつもり、だよ?」
そう言って彼女はふわりと笑った。
* * *
俺の口は、動き続けた。止まらなかった。
自分が普通の人間でない事、幼い時の事、全て吐き出した。
女は、俺が喋り終わるまで静かに聞いていた。
人では、無い
怖くて、彼女の顔が見れない。
△ ▽
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