7


俺とあの女が出会って4ヶ月が経った。

相変わらずあいつは2日ごとに河原に来る。雨が降った日も来たからびっくりした。

俺の隣でいつもニコニコしている。

そんなこの女に、俺は"例えば"の話をしてみる事にする。

「なあ、もし俺が人間じゃなかったらどうする?」

俺がそう言うと、彼女はキョトンとした顔をした。

「え、ギンさん人間じゃないの?」

「……じゃないかもねえ」

「でも、ギンさんは人間の形をしてるじゃない」

「見えてるものが全て、ってわけじゃない」
「……」

なんで俺はこんな事を言っているのだろう。"例えば"の話をするつもりじゃなかったのか?

何故俺は本当の事を話そうとしている?

──知ってもらいたい、と思っている。

信じてもらえないかもしれない。幼い頃みたいに、避けられるようになるかもしれない。

それでも、自分の事を知ってもらいたいと思っている。知ってもらったうえで、受け入れてもらう事を望んでいる。

「……ギンさん」

「なんだ」

「私は、ギンさんのこと好き、だよ」

「──!?」

そう言われた事に驚いて女の方を見ると、照れるわけでもなく、ただ少しだけ頬を赤らめて俺の方を見ていただけだった。

その目は、不思議なほどに真っ直ぐで、眩しくて、逆に俺が照れてしまった。

足の下で、河原の石がジャリッとなる。

「どんなギンさんでも受け止めるつもり、だよ?」

そう言って彼女はふわりと笑った。


 * * *


俺の口は、動き続けた。止まらなかった。

自分が普通の人間でない事、幼い時の事、全て吐き出した。

女は、俺が喋り終わるまで静かに聞いていた。







怖くて、彼女の顔が見れない。



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