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私があなたを初めて見たのはいつだったでしょうか。多分、中学生の頃だったと思います。

夜、コンビニに買い物に行って、その帰りにあなたを見かけたのです。

何を買いに行ったのか忘れてしまいましたが、多分お菓子だったような……。ジュースも、買ったかもしれません。

話が脱線してしまいましたが、とにかく見かけたのです。

川原に座って、おいしそうに夕飯でしょうか、食べ物を頬張っていらっしゃいました。

その姿が、月明かりに照らされて、とても幻想的で、且つ優美で、絵になっていらっしゃいました。

しばらくそこであなたを見つめていたい衝動に駆られたのですが、流石にそんな事は出来ずに、家に帰ったのですが。


 * * *


それからしばらくして、友達のアキちゃんの家に遊びに行きました。その時アキちゃんはとてもおかしな事を言ったのです。

「この近所に、犬の耳と尻尾を持った男が住んでるって噂なの」

私はそんなの所詮噂でしょ、と笑って返したのですが、アキちゃんがあまりに真剣な表情をしてこちらを真っ直ぐに見つめてきていたものですから、印象に強く残って居ります。

その日の帰りは、夜も少し遅くなってからになってしまいました。

前、彼を見かけた事も忘れて普通に通り過ぎようとしたのですが、人影が気になって向いて見ていると、そこには、前見た彼がいました。

今回は、何も食べていませんでした。

しかし、月をボウと見上げていらっしゃるのです。

その横顔は、何かに憂えてるようで、"美しい"以外の単語なんて頭の中に浮かんできませんでした。


 * * *


家に帰ってからも、学校で授業を受けているときも、彼の事が頭から離れませんでした。そして、夜コンビニに買い物に行ったり、散歩したりする事が多くなりました。

川原の横の道路を通ると、たいていいつも同じ場所に座っていらっしゃりました。

彼の周りはいつも銀色に輝いて見えました。

要するに、私は彼に恋したのです。


 * * *


そして、今日私は思い切って彼に話しかけてみました。

「お、おおお名前はなんて言うんですかっ」

恥ずかしさ故に、 いっぱい噛んでしまいました。

答えが、返ってきません。しかも今まで私に向けられていた視線も外されてしまいました。

ここまで来たのに、めげたくありません。

「お名前をお、おお教えてくだ、さい……。」

でもやっぱり悲しくなり、だんだん泣くような声になってしまいました。

すると彼は立ち上がり、でも私から目線を逸らして、

「……俺ね、名前ないの。そういう訳だから、……もう俺に関わらないでね。」

そう言うと、私に背を向けました。

名前がないと言われて少し驚きましたが、それなら私が名前を決めれば良いと思い、

「あ、あの、でしたら"ギン"と呼んでも良いですか……?」

と厚かましい事を言ってしまいました。

皆様もご存知の通り、無視されてしまいましたが。


 * * *


あれから2日が経ちました。

今、私は川原に居ます。

ギンさんが黙々と夕飯を食べていらっしゃいます。

ああ、素敵……。

腹を括って、いざ! 話しかけに行きます!

「ギンさん! 


悲しそうな瞳を、見たくないのです。



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