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目の前にあいつが居る。そう考えただけで頭がくらくらする。混乱する。
何を話せば良い? 拒絶されたらどうすれば良い?
「ギンさん」
不意に、あいつの声が聞こえた。
あいつの方を見ると、真っ直ぐに俺の方を見ていた。
やめろ。そんな目で俺を見るな。何かを決心したような、そんな目で。
「……そんな、不安そうな目、しないで」
ぐ、と石を踏みつける力が強くなる。体が動かない。
不安そうな目、をしている? 俺が?
もしそうだとして、あいつはそんな事気にしてどうするのだろう?
どうせ、離れて行くんだろ。……あいつらみたいに。
そんな事を考えていると、は、と自嘲した声が出た。
「どうしたの?」
そうする俺を見て、こいつは少し驚いたようだった。
「……何でもない」
一瞬思っていた事を全部言ってしまおうか、と思ったが、それによって別れが早くなってしまうのではないか、と思いとどまった。
「……そう」
こいつはそう言うと、少し悲しげに笑った。そしてまたすぐ、あの決心したような目をした。
そして口を開く。
「あ、あの! ギンさんは、嫌かもしれないけど、私、ずっとギンさんのそばに居るからね! 毎日勝手にここに来ちゃうから」
その言葉達は俺の目の前でキラキラ舞った。魔法のようだった。
俺は今まで何を心配して居たのだろう。
こいつはいつも俺の近くに居てくれた。それに気付かなかった俺はただの莫迦だ。
「……ありがとう」
そう呟くと、胸にオレンジ色が広がった。
真夜中にワルツを
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