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ギンさんが、人間じゃない。

この事は、私にとって凄くショックな事だった。そして信じ難い事だった。

だって、人間の形をしているじゃない。

でも、逆に妙に納得している自分がいた。人間じゃないから、こんなにも綺麗に見えるのかもしれない。輝いて見えるのかもしれない。

そう思うと、混乱していた気分がスッと落ち着いた。

「い、嫌だろ? いつも一緒に居た奴が人間じゃないとか」

ギンさんの顔は精一杯笑おうとして失敗した感じの表情だった。

「……ギンさん」

目をじっと見つめる。そらしては、ダメだ。揺らしても、ダメだ。

ギンさんもじっと見返してきた。でも、その瞳は不安なのか揺れていた。

「やっぱり、好きです」

ギンさんの頭に、手を伸ばす。帽子に、指が当たった。

「話してくれてありがとう」

サアア、と風が吹いた。ギンさんの帽子がふわっと風にさらわれる。

「──っ!!」

ポチャン、と川に帽子が落ちた。

「……ギンさん」

話しに聞いただけだった。実際見てみると、付けたものなのかな、と思ってしまうような漆黒の犬の耳。

でも、似合っていると思った。

同時に、今こういう事を考えるのは不謹慎なのかな、とも思った。

ギンさんは耳を隠そうと必死で手で覆っている。その行為がギンさんを更に愛おしく思わせた。







ギンさんには、美しい犬の耳と尻尾があって、私には、よくある人間の耳しかなかった。
たった、それだけの事でしょう?



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